勇気づけリーダーの学級経営〜これからを生きる資質・能力を育てる教師の役割〜
これからを生きる資質・能力を学級でつけるには?勇気づけリーダーの学級経営
勇気づけリーダーの学級経営(8)
子どもたちも必死なのです
〜これからを生きる資質・能力を育てる教師の役割〜
上越教育大学教授赤坂 真二
2018/1/20 掲載
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1 教室における子どもたちの目的

 「人間の行動には目的があり、従って子どもたちの問題行動にも目的がある」、目的論はこうした考え方に立ちます。そのように考えると、子どもたちの問題行動にも目的があるということになります。子どもたちの行動の目的を知ることによって、彼らの問題行動のメカニズムを知ることが可能になるでしょう。
 私たちにとって感情は、人生を豊かにしてくれるとても大事なものです。しかし同時に、しばしば事実の認識を妨げてしまうことがあります。子どもたちの問題行動は、私たちの感情を揺さぶります。それは、「わからない」ことに起因することが多いように思います。しかし、それがどのようなプロセスや仕組みを経て生起されているかがわかれば、理解ができます。理解は私たちを冷静にしてくれます。冷静さは、問題行動を繰り返す子どもたちに寄り添おうという、教師としての使命感や人としての愛情を喚起してくれることでしょう。寄り添うためには、理解することが出発点になるのではないでしょうか。
 では、

教室における子どもたちの目的とはなんでしょうか。

 優等生的な答えは、勉強する、友だちに会いに来るなどでしょうか。先生に会いに来ると言ってくれたら教師にとっては嬉しいですね。哲学的な表現が好きな方は、成長しに来るなんて言い方もあるでしょう。研究会に来る先生方にお尋ねすると、給食を食べに来る、友だちと遊びに来る、なんていう答えが返ってくることがあります。
 アドラー心理学的には次のように考えます。
 みなさんは、電車に乗ったときにまず何をしますか。恐らく、真っ先に座席を探すことでしょう。もし満席だったら、立つ場所を探すことでしょう。つまり身の置き所を確保しようとすることでしょう。では、座席が確保されたら次にすることはどのようなことでしょうか。例えば、結婚式の披露宴などにお呼ばれをしたときのことを思い出してください。会場に着きました。宴の会場に入ると座席表を確認して、テーブルを探しそれが見つかると、名札を見つけてその席に着くことでしょう。その次は何をするでしょうか。恐らく、周囲を見渡して知り合いを探すことでしょう。そして、同じテーブル内で知り合いを見つければおしゃべりを始めることでしょう。テーブル外で旧知の方を見つければ、席を離れてその方の側に行き、懐かしい話を始めることでしょう。

図1

2 「ジベタリアン」たちの優先事項

 私たちは何をしているかというと、自分の身の置き所、つまり居場所を真っ先に確保するように行動しているわけです。電車の例では、物理的な居場所を探しています。披露宴の例では、社会的な居場所を確保しようとしています。恐らくそれは安全の確保と直結しているからだと思われます。私たちが生物である以上は安全の確保を最優先に行動せざるを得ません。一方で集団生活をする人間にとって、居場所は物理的なものだけでなく、社会的なものも生じます。物理的な居場所が、命の危険がある場合ではない限り、その重要度が逆転することもあるようです。
 知らない町に一人で取り残されたら、私たちはとても不安になります。しかし、そこに親しい友人が現れたらどうでしょう。途端に楽しくなります。場合によっては、「ちょっと散策しようか」という冒険も始まるかもしれません。お化け屋敷にも友だちと一緒ならば入れます。お化け屋敷に入ろうとする人たちは、怖がっているようですが命まで取られることはないと確信しています。友だちという社会的居場所があるからこそ不安に耐え、それを喜びや楽しみにも転じることが可能なのです。

図1

 居場所を確保するときに、社会的文脈はとても重要です。
 電車の例に話を戻すと、満席の場合でも通路が空いていることがあります。しかし、通路に腰掛ける方はいません。相当に疲労した方だって通路には腰掛けません。先日、ローカル線の電車の通路に腰を下ろしている女子高校生を見かけましたが、グループ数人で同じような行動をとっていました。こうした若者たちを、「ジベタリアン」と呼んだことがありました。一見、マナーを守ってないように見える行動ですが、ちゃんと彼女たちも社会的文脈を尊重しています。ただ、彼女たちにとって優先すべき社会とは、自分たちのグループです。恐らく一人ではしないはずです。

3 全ては適応行動?

 こうして考えてくると子どもたちの教室における行動の目的が見えてきます。それは、

教室という社会で居場所を確保すること

です。学校においては、子どもたちには、座席という物理的居場所は確保されています。従って重要なのは、社会的居場所なのです。子どもたちは、教室で居場所を見つけるために様々な行動をします。ある子は、望ましい行動でそれをしようとします。例えば、教師の話をよく聞いたり、学習をがんばったり、何か役があると立候補したり、頼まれた仕事を引き受けたり、活動に協力をするなどのことです。また、ある子は、反対に望ましくない行動でそれをしようとします。例えば、教師の話を聞かなかったり、学習に集中しなかったり、仕事をさぼったり、ウケねらいの発言をしたり、無気力になったりすることです。
 子どもたちが、なぜ望ましい行動をし、また、その逆の行動をしたくなるのか探りたくなりますよね。しかし、そう思ったあなたはもう原因論の罠にはまろうとしています。原因探しが無駄だとは言いません。しかし、教師がそれを知っても原因を取り去ることはかなり難しいことだとこれまでに述べました。大事なことは、「なんのために」子どもたちがそうした行動をしているのかという目的です。ただ、子どもたちの生育歴や家庭環境といった気になる行動や問題行動の原因と結びつきやすい要因を知ることは、彼らの目的を知る上では重要になることはあるでしょう。
 教室を立ち歩いている子どもたちにも目的があります。すぐに私語をしてしまう子どもたちにも目的があります。また、あなたに反抗的な子どもたちにも目的があります。それらの行動は、教師にとっては困った行動かもしれません。しかし、それらは、子どもたちにとっては適応のための行動なのです。子どもたちは、教室という不安定な環境のなかで居場所を見つけるために必死なのです。

赤坂 真二あかさか しんじ

1965年新潟県生まれ。上越教育大学教職大学院教授。学校心理士。「現場の教師を勇気づけたい」と願い、研究会の助言や講演を実施して全国行脚。19年間の小学校勤務では、アドラー心理学的アプローチの学級経営に取り組み、子どものやる気と自信を高める学級づくりについて実証的な研究を進めてきた。2008年4月から、より多くの子どもたちがやる気と元気を持てるようにと、情熱と意欲あふれる教員を育てるために現職に就任する。
主な著書に、『資質・能力を育てる問題解決型学級経営』『最高の学級づくり パーフェクトガイド』『スペシャリスト直伝! 主体性とやる気を引き出す学級づくりの極意』『クラスがまとまる! 協働力を高める活動づくり』『教室がアクティブになる学級システム』『アクティブ・ラーニングで学び合う授業づくり』『スペシャリスト直伝!成功する自治的集団を育てる学級づくりの極意』『学級を最高のチームにする!365日の集団づくり』『信頼感で子どもとつながる学級づくり 協働を引き出す教師のリーダーシップ』『やる気を引き出す全員参加の授業づくり 協働を生む教師のリーダーシップ 』『集団をつくるルールと指導 失敗しない定着のための心得』『気になる子を伸ばす指導 成功する教師の考え方とワザ』『思春期の子どもとつながる学級集団づくり』『いじめに強いクラスづくり 予防と治療マニュアル』『スペシャリスト直伝!学級を最高のチームにする極意』『一人残らず笑顔にする学級開き 小学校〜中学校の完全シナリオ』『最高のチームを育てる学級目標 作成マニュアル&活用アイデア』『クラス会議入門』(以上、明治図書)などがある。

(構成:及川)

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コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • 新潟の教育者
    • 2018/1/24 11:10:41
    激しく共感いたしました。今からこの内容を実践してこようと思います。がんばります。いや、がんばるのは子どもたちか。。。
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