- まえがき
- 1 教育効果をもたらすもの
- 「つぎはぎ教育」からの脱却を
- 1 あなたの教育を受けた子どもたちはどんな人になりますか
- 2 「つぎはぎ教育」になっていませんか
- 3 それ,なんとなくやっていませんか
- 4 応用力を引き出す体系知
- アドラー心理学とは
- 1 アドラーとアドラー心理学
- 2 アドラー心理学と学校教育
- なぜ,学級経営にアドラー心理学なのか
- 1 ある「学級崩壊」の様相
- 2 アドラー心理学への注目
- アドラー心理学でクラスが変わるのは本当か
- 1 クラスを健康な状態にするマネジメント
- 2 「ご機嫌クラス」「不機嫌クラス」あなたはどちらの担任がご希望ですか
- 完全「学級崩壊マニュアル」
- 1 本当は彼女と付き合う自信がないから
- 2 学級崩壊をさせる方法
- 2 見方が変われば現実が変わる
- 原因を探ることが習慣になっていませんか
- 1 あなたの気になる子
- 2 ツヨシ君の場合
- 3 理由は原因だけではない
- 見方を変えるとやるべきことが見えてくる
- 1 ご飯を食べる理由
- 2 子どもたちはお見通し
- 3 教師のやるべきこと
- 子どもたちも必死なのです
- 1 教室における子どもたちの目的
- 2 「ジベタリアン」たちの優先事項
- 3 全ては適応行動
- 3 不適切な行動のメカニズム
- 不適切な行動の4つのパターン
- 1 感情を揺さぶることそのものがねらい
- 2 誤った目標に基づく行動
- アマチュアは不適切な行動に対して「反応」し,プロは「行動」する
- 1 子どもたちが不適切な行動に至るプロセス
- 2 子どもたちの目標を判断する指標
- 不適切な行動には相手役がいる
- 1 子どもの誤った目標を判断する第二の基準
- 2 不適切な行動をする子がわかっていることとわかっていないこと
- 本当に不適切なのは
- 1 “気になる子”とクラスの荒れ
- 2 “気になる子”はクラスの荒れの本当の理由なのか
- 気になる子の支援のシンプルな原理
- 1 不適切な行動のスパイラル
- 2 適切な行動を勇気づける
- 4 気になる子を支援する
- 適切な行動と不適切な行動の判定基準
- 1 子どもたちが不適切な行動をする5つのパターン
- 2 不適切な行動とは
- 3 指導が必要な領域と関心のない領域
- 共同体感覚
- 1 避けては通れない話題
- 2 不幸せのサイクル
- 3 幸せのサイクル
- 4 GPSとしての共同体感覚
- 「原因追求」教の信者になっていませんか
- 1 問題悪化のサイクル
- 2 問題に向き合う3つのアプローチ
- 3 「マスコミ教師」になることなかれ
- 問題ばかり見ていませんか
- 1 効果的な問題解決
- 2 気になる子はみんなパートタイマー
- 5 勇気づけ
- 不適切な行動で得ているモノ
- 1 不適切な行動で得をする
- 2 キレることによって得ていたモノ
- 不適切な行動に注目しない
- 1 うまくいっていないことをやめる
- 2 ツヨシ君にしたこと
- 3 30分の1から1分の1へ
- 適切な行動に注目する
- 1 たとえその目標が叶わずとも
- 2 うまくいっていることを探す
- 適切な行動の原動力
- 1 担任が注目したこと
- 2 尊敬が「よい行い」の原動力
- 3 「悪い子」の前に立つときに表出するモノ
- 不適切な行動には「意味」が与えられている
- 1 怒りで人は変えられない
- 2 不適切な行動を無意味化する
- プロの視点
- 1 適切な行動を探してみよう
- 2 うまくいくまで支援を続ける
- 「しかける」勇気づけ
- 1 長期的・意図的支援
- 2 関係の樹立
- 3 原則は全ての子に
- 教師と子どもの認識のズレを埋める
- 1 目標の一致
- 2 目標一致のコツ
- 今の行動に代わる,より適切な行動を探す
- 1 課題の分離
- 2 代替案の検討
- 3 「あたたかい時間」を創る
- 勇気づけのテクニック
- 1 勇気づけの実際
- 2 テクニックとしての勇気づけ
- 支援者はどこに
- 1 不適切な行動は「仕組まれている」
- 2 課題の分離を教える
- 3 カウンセリング・マインドでクラスを育てる
- 6 クラス再生の道筋
- クラスを変えるたったひとつのポイント
- 1 「学級庶民」の思い
- 2 教師の認知が変わればクラスが変わる
- クラスは再生する
- あとがきに代えて
まえがき
私は元小学校の教師です。所謂,学級崩壊の問題が全国的に顕在化する前から,そうしたクラスを担任させていただくことがありました。また,まだ発達障害という言葉,それに付随する診断名などが広く知られる前から,困難な状況に陥っている子どもたちと向き合う仕事をさせていただきました。このような状況の中で,「もし,これを知らなかったら教師という仕事を続けていられなかっただろう」と思うものがあります。
それは「アドラー心理学」です。
アドラー心理学についての説明は本編に譲ります。アドラー心理学を知らなかったら,恐らく,荒れるクラスの立て直しをすること,援助を求める子どもたちの力になること,そして,何よりもクラスの荒れに苦しむ同僚の支援をすることは到底無理だっただろうと思います。そもそも教壇に立ち続けること自体が不可能だったと思います。荒れるクラスにかかわることは私にとっては様々な覚悟を迫られるものでした。
現在は,大学の教員として教員養成にかかわりながら,全国の学校の校内研修や各自治体の研修会の講師などをさせていただいています。あちこちの団体にかかわり,授業づくりや学級経営,また,学校経営に至るまで助言めいたことができるのもアドラー心理学と出会ったからです。
私のような非力な教師にも力を与えてくれるアドラー心理学ですが,近年は教師向けの書籍が出版されてきているものの,まだまだ十分とは言えません。「教師向けに書かれた書籍はないのですか?」とご質問を受けることが未だにあります。お断りしておきますが,私はアドラー心理学の熟達者でもありませんし権威でもありません。しかし,アドラー心理学に助けられた一人として読者のみなさんに何らかの貢献ができるのではないかと考え,キーボードの前に座ることにしました。
ここで示した実践は,アドラー心理学の全てとは言いませんが,学校の教師にとってはかなり有用な情報だと確信しています。アドラー心理学の教育への適応のあり方を,具体的な実践を交えながら述べてみました。
本書はやり方ではなく考え方から始まります。考え方は行動のベクトルです。考え方が間違っていたら,順調に物事が進んだとしても,それは「間違った場所に難なく到着しただけ」です。第1章では,力をつけたいと一生懸命学んでいる教師が,思うように結果を出せない理由を,アドラー心理学を絡めながら解説しました。また,なぜアドラー心理学を適用することが,学級経営において有効なのかを述べました。第2章では,子どもの見方が劇的に変わるであろう,アドラー心理学に基づく子ども理解の視点を述べました。第3章では,第2章で示した考え方に基づき,子どもたちの不適切な行動のメカニズムを解説しました。第2章,第3章をしっかりとご理解いただければ,今,目の前で展開されている子どもたちの不適切な行動に隠されたメッセージが読み取れることでしょう。
そしてここからは具体的な対応です。第4章では,不適切な行動を繰り返す子どもたちを支援するための基本的な考え方を示しました。第5章では,子どもたちへの支援をエピソードを交えながら具体的に解説しました。ここをお読みになるときは,どうぞご自身のクラスの支援を必要としている子どもたちの顔を思い浮かべながら,そして,自分だったらどのように声をかけるかなど,日頃の指導や支援の文脈に落とし込みながら読み進めてください。ここでは,勇気づけの実際や,不適切な行動をする子どもたちだけでなく,その周囲にいる子どもたちも含めてどのように支援していくかを述べました。学級崩壊を克服するためのヒントになるだろうと思います。最後の第6章では,本書のまとめであるとともに,クラス再生のプロセスを図示しました。本書では第6章だけでなく,全編にわたってイラストや図を使って解説しています。文字を読み,目で確認しながら,理解を深めていただければ幸いです。
本書が,みなさまの学級経営,そして自らの問題に困り,援助を求める子どもたちの一助となれば,これにまさる幸せはありません。
2019年2月 /赤坂 真二
この本は、すぐに実践できるものから、教員人生を変えてくれるような考え方まで、幅広く教えてくれました。
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