著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
アドラー心理学で、子どもたちも教師も勇気あふれる教室を
上越教育大学教職大学院教授赤坂 真二
2019/2/15 掲載
 今回は赤坂真二先生に、新刊『アドラー心理学で変わる学級経営 勇気づけのクラスづくり』について伺いました。

赤坂 真二あかさか しんじ

1965年新潟県生まれ。上越教育大学教職大学院教授。学校心理士。19年間の小学校勤務では、アドラー心理学的アプローチの学級経営に取り組み、子どものやる気と自信を高める学級づくりについて実証的な研究を進めてきた。2008年4月から、即戦力となる若手教師の育成、主に小中学校現職教師の再教育にかかわりながら、講演や執筆を行う。
主な著書に、『資質・能力を育てる問題解決型学級経営』『最高の学級づくり パーフェクトガイド』『スペシャリスト直伝! 主体性とやる気を引き出す学級づくりの極意』『スペシャリスト直伝! 成功する自治的集団を育てる学級づくりの極意』『スペシャリスト直伝! 学級を最高のチームにする極意』『スペシャリスト直伝! 学級づくり成功の極意』『クラス会議入門』(以上、明治図書)がある。その他編著書多数。

―赤坂先生は、本書の中で「アドラー心理学」について、「もし、これを知らなかったら教師という仕事を続けていられなかっただろう」と述べられています。学級経営において、アドラー心理学はどのように有効でしょうか。

 世の中には「こんなときに、こうすればよい」という方法論を示した書籍はたくさんあります。しかし、教室の現実は、教師の想定を超えることがしばしば起こります。特に学級経営や生徒指導場面においては、「こうすれば大丈夫」などという万能薬はないわけです。アドラー心理学は、教師の想定を超えるような場面にも確かな指針を与え、読者のみなさんのやるべきことを明確に示してくれます。

―アドラー心理学が教育に役立つ事例として、まず「子どもたちの不適切な行動への対応」が挙げられています。本書ではエピソードを入れながら、実践例が詳しく述べられていますが、そのポイントについて教えてください。

 アドラー心理学では、子どもたちの不適切な行動には、目的があると考えます。そのことから「不適切な行動に注目しない」という一つの対応の方向性が見出されます。これは、有効な解決策の一端ではありますが、それだけではエスカレートする可能性があります。どうしたらよいかは、本書をご覧ください。

―本書には、「学級崩壊マニュアル」という逆説的な項目があります。学級崩壊がある日突然起こるのではなく、教師の働きかけの積み重ねによって創り上げられることが述べられていますが、学級崩壊の原因はどのようなところにあるでしょうか。また、荒れのサインを見逃さないようにするには、何が大切でしょうか。

 学級崩壊のパターンは幾通りもあろうかと思われますが、子どもたちの不適切な行動にそのきっかけがある場合は、不適切な行動に教師などが過剰に注目していることが挙げられます。教師は知らず知らずに気になる子ばかりに注目しているのです。不適切な行動が継続する場合は、必ず、それを強化し引き出している相手役がいるのです。場合によってはそれは、教師である「あなた」かもしれません。荒れのサインを見るときは、荒ればかりを見るのではなく、荒れの前後を一つのシステムとして見るとよいでしょう。

―本書のもう一つのキーワードとして、「勇気づけ」があります。子どもたちを勇気づけ、適切な行動を支援していくためには、どのようなことが大切でしょうか。

 「勇気づけ」は、言葉がけだと解釈されている場合がありますが、それは正確ではありません。「勇気づけ」は考え方であり技術です。何よりも、まずは、その子を尊敬し信頼するという教師側の構えがないとうまくいかないことでしょう。勇気づけがうまくいくかどうかは、勇気づける側が相手をより早く尊敬し、より多く信頼できるかどうかにかかっています。

―第4章では、「気になる子の支援」についてまとめられています。先生はその中で、「共同体感覚」というキーワードと、不幸せのサイクル、幸せのサイクルについて述べられていますが、この点について教えてください。

 共同体感覚はアドラー心理学でよく使われる言葉ですが、少し取っつきにくい言葉ですね。簡単に言うと「他者への関心」や「人とつながっているという実感」です。私たちの幸福感は、この人とつながっているという感覚が大事なのです。私たちは人に貢献することで、人とつながり幸福感を高めます。これが「幸せのサイクル」です。しかし、不適切な行動をする子どもたちは、人とつながりたいのに、適切な方法を知らないがために不適切なことをし、さらに人とのつながりが切れていくという「不幸せのサイクル」真っ只中にいます。共同体感覚を育てることで子どもたちは適切な行動をするようになります。「不幸せのサイクル」から脱し、「幸せのサイクル」を回し始めます。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 私は、アドラー心理学に出会わなかったらきっとクラスの荒れに飲み込まれていたことでしょう。日々起こるクラスのトラブルに自分を見失っていたことでしょう。アドラー心理学はそんな悩める教師に、学級経営の基盤となる考え方から、子どもたちへの具体的な声かけまでを示してくれます。アドラー心理学の活用は、子どもたちを勇気づけるだけではありません。何よりも、教師が勇気づきます。子どもに渡した勇気は必ず自分に返ってきます。本書が、勇気あふれる教室づくりの一助となればこれにまさる幸せはありません。

(構成:及川)

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