- シリーズ発刊に寄せて・シリーズの読み方
- まえがき 里山のような学級を作る「里山学級論」
- 第1章 【3月】学級づくりのゴールイメージ 里山のような学級を作る
- 学級づくりチェックリスト(学級経営 5年生)
- 1 1年間の育ちを作物モデルから考える
- 2 5年生とはどんな学年か
- 3 作物モデルで子どもの育ちを見る
- 第2章 【4月〜5月】土をつくる・種を蒔く 居心地良く過ごせる環境づくり
- 1 最初の1週間〜土をつくる〜
- 1 始業式前後が勝負を分ける
- 2 年間の見通しを持つ〜1年間の計画を洗い出す〜
- 学級づくりチェックリスト(事務・購入するもの・年度始めの計画)
- 3 四季を見通す 初日,最初の3日,1週間の計画を立てる
- 学級づくりチェックリスト(最初の3日間)
- 4 子どもの様子を知る〜引き継ぎで注意すること〜
- 5 子どもとの出会い〜初日に大切にしたいこと〜
- 6 初日の流れ
- 7 夢を語る・願いを語る〜初日の語り〜
- 8 ゲームで学級を作る
- 9 システム作り〜3日で作り,軌道に乗せる1週間〜
- 2 基礎固めの4月・5月〜種を蒔く・芽吹かせる〜
- 1 4月にすること〜種を蒔く〜
- 2 5月にすること〜定着と子どもをつなげる〜
- 3 学習規律と学習技能を育てることが肝
- 4 芽吹く姿を愛でる
- 5 子どもをモデルにする効果
- 3 子どもとつながる・保護者とつながる
- 1 つながる技術
- 2 保護者とつながる参観日・家庭訪問
- 3 足を運ぶ
- 4 1週間を目安に保護者に伝えること
- 5 つながることの落とし穴
- 6 人間関係チェックシステム「仲間作りゲーム」
- 4 多様性を持たせる
- 1 何に注目させるか
- 2 「多数決が正義」を破壊する
- 5 ゴールイメージを共有する
- 1 学級目標を作る
- 2 ゴールイメージを共有する5つの方法
- 6 ピンチはチャンス
- 1 ピンチはチャンス
- 2 具体的な方法を考える
- 7 教室のマネジメント
- 1 教室のマネジメントとは?
- 2 待っていないけど待っている
- 8 朝の会・帰りの会
- 1 朝から鍛える・整える
- 2 帰りの会は子どもたちをほめるためにある
- 9 授業づくり・学力づくり
- 1 4月の授業づくり
- 2 音読のパターン
- 3 授業パターンの確立〜国語のパターン化〜
- 4 漢字学習の方法
- 5 5月の授業づくり
- 6 子どもをつなげる・子どもに預ける授業パーツ
- 7 誤答提示の技術
- 8 4月,5月は「質」ではなく,「量」にこだわる
- 9 話し手ではなく,聞き手を育てる
- 10 読書習慣をつける
- 11 ていねいさを保証する 連絡帳一点突破
- 12 基礎的な計算力をつける100マス計算
- 10 育ちを確かめる〜GW明けにシステムチェック〜
- 11 4月・5月の授業ネタ
- 1 絵本「からすたろう」から学ぶ
- 2 ハッピーレター
- 3 バケツ稲
- 12 年間を貫く教師の指導@ ほめること・叱ること・認めること
- 1 ほめること
- 2 認めること,受け入れること
- 3 ほめること・認めることで個とつながる学級を作る
- 4 最初から「ほめること」は決めておく
- 5 子どもをほめるための仕掛け
- 6 ほめることで多様性と逆転現象を生み出す
- 7 「0(ゼロ)スタート」で子どもを見る
- 8 7割主義〜スルーすること〜
- 9 叱ることはラインを示すこと
- 10 叱り方の軽重・ほめ方の軽重
- 11 立ち位置を見直そう 何が見えているか 子どもを見る視点
- 13 年間を貫く教師の指導A 指導技術を磨く
- 1 教師の話す言葉は5種類
- 2 指示活動評価のサイクル
- 3 子どもの口癖は教師が作る
- 4 最も効果の高い指導「感化」
- 第3章 【6月〜7月】根をはらせる・葉を茂らせる 定着させ,子どもを育てる取り組み
- 1 お楽しみ会をしよう
- 2 大掃除を盛り上げる方法
- 3 第2期の授業づくり・学力づくり
- 4 「あのこ」の授業〜道徳の授業でゆさぶる〜
- 第4章 【夏休み】2学期を迎える戦略・しかけ
- 1 課題と対策を書き出そう
- 2 個人懇談を活かす
- コラム 学級づくりは何のため?
- 第5章 【9月〜10月】花を咲かせ,実をつける準備をする ルールやシステム,ゴールの確認
- 1 9月〜10月 システム確認期
- 2 第3期の授業づくり〜預ける割合を増やす「学び合い」の勧め〜
- 3 夏休みの宿題の答え合わせ
- 4 行事で鍛える,行事でつながる
- 5 目標を達成できなかった子への語り
- 第6章 【11月〜12月】収穫期 流れを切らずに個と集団の力を活かす
- 1 授業で自治的な集団を育てる
- 2 行事の後は,注意する時期
- 3 楽しい米パーティーをしよう
- 第7章 【冬休み】3学期を笑顔で迎える戦略・しかけ
- ☆ 確認をする・計画を立てる
- 第8章 【1月〜2月】小さな収穫 次年度への調整期の始まり
- 1 3学期だからこそ大切にしたい学習の基礎基本とは
- 2 3学期の荒れを考える
- 3 第5期の授業づくり
- 第9章 【3月】ゴール そしてまた春が来る
- 1 6年生を送る そして 学校を引き継ぐ
- 2 そして また 春が来る
- 3 お別れパーティーをしよう
- 4 ムービーで振り返る1年間
- 第10章 【1年間を乗り切るコツ】わたしはこうやって生き延びている
- 1 職員室を味方につける
- 2 本をよりどころにする
- 3 本やセミナーの内容を鵜呑みにしない
- 4 「隣の」先生のたくさんまねをする
- 5 あきらめる
- 6 あきらめない
- 第11章 学級づくり20ポイントチェック
- 〜集団を育てるための定期点検リスト〜
- 1 学級づくりにも定期点検を
- 2 学級づくりチェックリスト
- 3 いつも自分のあり方を見つめながら学級を見る
- あとがき エピローグ
シリーズ発刊に寄せて
アクティブ・ラーニング。「主体的で協働的な学び」と説明されるように,そこでは課題解決に向けて積極的に他者とかかわる学習が展開されます。高い意欲と活動性に支えられた学習は,温かさと安心感が保証された集団において実現されることは,多くの説明を要しないでしょう。学びの質への問いかけは,即ち「質の高い学びを成立させる集団とは?」という集団のあり方への問いかけなのです。
日本の学校教育において,学級は「楽園」でした。そこは,子どもたちの笑顔で溢れ,瑞々しいやる気に満ちた場所として捉えられてきました。しかし,その様相が変わってきたのが1990年代です。中学校では「普通の子」が感情を暴発させて,刃物で人を傷付けるような事件が報道されました。
そして,小学校においては学級崩壊と呼ばれる機能不全に陥る学級の存在が知られるようになりました。2000年になると,この現象は全国各地で聞かれるようになり,小学校の「楽園神話」は確実に壊れていきました。
かく言う私も,小学校教師だった1990年代半ばに機能不全に陥った学級を担任しました。初対面の時に,誰一人私を見ることなく,私語を続ける子どもたちの姿に愕然としたことを覚えています。それまで授業づくりに関する方法を必死に学んできた私は,慌てて学級づくりの情報を集め始めました。しかし,情報がなかったのです。当時は,授業づくりに関する情報は豊富にありました。1単元の全指示・全発問を示した書籍から1年間使えるワーク集までありました。ところが学級づくりに関する情報が見当たらなかったのです。
生徒指導の事例を扱った書籍はありました。しかし,それらはみんな個別の事例を扱ったものでした。学級の殆どの子どもたちが着席しない,話を聞かない,そして,毎日のように生徒指導上の問題が起こるような学級への対応法を示した情報は手に入りませんでした。
それから数年が経ち,運命的な出会いもあり,私は仲間とともに,学級づくりに関する情報を発信する機会をいただくようになりました。学級崩壊がメジャーになるに従って,学級づくりに関する書籍が次々と発刊され,それまであまり関心を向けてこなかった研究者も学級づくりを研究の対象とするようになりました。かくして書店の教育書コーナーには,学級づくりに関する書籍が数多く並ぶようになりました。
しかし一方で,教育界は,PISAショックに端を発した学力低下論争から,特に義務教育において,学力調査の結果に関心がはらわれるようになりました。それが現在も続いていることはみなさんがご存知の通りです。先生方の関心は,授業づくりに集中するかと思われましたが,どうやらそう単純には事は進行しませんでした。いや,学力向上という結果を出さなければならないからこそ学級づくりにも真剣に関心をはらわざるを得なくなったと言えます。
大学教員となった今,各自治体教育委員会の要請により,年間かなりの数の学級づくりの講座を担当させていただいております。「学力向上の基盤は学級づくり」との認識からでしょう。これまでの授業づくりへの関心は,授業のネタや教授方法に向けられていました。つまり,「どんなネタをどのように教えるか」ということだったのです。しかし,今は,数値としての学力が問われる時代になりました。指導の過程よりも指導の結果が重視されるようになったわけです。
先生方の関心が授業づくりに向けられるようになったからといって,学級崩壊の問題が解消されたわけではありません。むしろそれは多様化し,複雑化しているのが現状です。以前のように単純に無秩序状態になっているとか,教師に反抗しているといったわかりやすいものだけではありません。一見,授業は成り立っているようですが,何となくダラッとシラッとしていて,低意欲の状況が見られたり,表立って大きな問題はありませんが,ネットなどの電子空間で仲間を激しくいじめていたりするような「静かなる荒れ」と呼ばれる事態も見られています。
指導の結果が重視される時代になったからこそ,「学びの場としての学級のあり方」が新たに問われていると言ってもいいでしょう。このような状況の中で,職員室が世代交代を迎えています。指導層となるベテランの大量退職が進んでいます。私たちの時代は,困ったら先輩に気軽に聞くことができました。しかし,今はそれが難しくなっています。
ならば,教員養成の段階で何とかしなくてはと思いますが,残念ながら,現在の教員養成のプログラムにおいて,学級づくりに関する内容は標準装備されていません。普通に教員免許をとるだけでは,学級づくりを学ぶことができないのです。つまり,多くの新採用の先生方が,学級づくりにおいて丸腰の状態で現場に放り出されるような状態が続いています。そうした危機感を背景に誕生したのが本シリーズです。
本シリーズでは,高い機能をもつ学級集団の姿として「チーム」を構想しました。チームとは,「一人では解決できない課題を,良好な関係性を築きながら解決する集団」です。アクティブ・ラーニングの本質をズバリと突いていると思います。そして,各学年の執筆者たちが,「チーム」を自分なりに受け止めて理想とする学級の姿をゴールイメージとして設定しました。さらに,学年別にチームに育てる指導のプロセスを「1年間まるごと」紹介しました。
本シリーズを執筆したのは,質の高い学びを実現する集団を育てている6人(敬称略,括弧内は執筆担当学年)の実践家です。近藤佳織(1年生),宇野弘恵(2年生),岡田広示(3年生),橋健一(4年生),南 惠介(5年生),松下 崇(6年生)です。彼らは,いずれも地元に学びの仲間と研究会をもち,精力的に全国に向けて発信をしているメンバーです。彼らに学級づくりに関する考え方と技術を余すところなく伝えてもらいました。
圧倒的な質の実践を支えているのが,その貪欲な探究心と謙虚な人柄です。年齢は私よりも若い先生方ばかりですが,いつも刺激をもらっている皆さんです。1年間の実践を公開できること,それが即ち,彼らの実力の証明です。どうぞ渾身の作をお手に取ってご堪能ください。
/赤坂 真二
5年担任でなくても、中高学年を担任する先生におすすめです。
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