著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
ゴールイメージと定期点検で、安心で確実な学級経営戦略を
上越教育大学教職大学院教授赤坂 真二
2016/3/4 掲載
 今回は赤坂真二先生に、新刊『学級を最高のチームにする!365日の集団づくり』(小学1年〜6年)について伺いました。

赤坂 真二あかさか しんじ

1965年新潟県生まれ。上越教育大学教職大学院教授。学校心理士。「現場の教師を勇気づけたい」と願い、研究会の助言や講演を実施して全国行脚。19年間の小学校勤務では、アドラー心理学的アプローチの学級経営に取り組み、子どものやる気と自信を高める学級づくりについて実証的な研究を進めてきた。2008年4月から、より多くの子どもたちがやる気と元気を持てるようにと、情熱と意欲あふれる教員を育てるために現職に就任する。
主な著書に、『スペシャリスト直伝!成功する自治的集団を育てる学級づくりの極意』『信頼感で子どもとつながる学級づくり 協働を引き出す教師のリーダーシップ』『集団をつくるルールと指導 失敗しない定着のための心得』『気になる子を伸ばす指導 成功する教師の考え方とワザ』『思春期の子どもとつながる学級集団づくり』『いじめに強いクラスづくり 予防と治療マニュアル』『スペシャリスト直伝!学級を最高のチームにする極意』『一人残らず笑顔にする学級開き 小学校〜中学校の完全シナリオ』『最高のチームを育てる学級目標 作成マニュアル&活用アイデア』『スペシャリスト直伝!学級づくり成功の極意』『クラス会議入門』(以上、明治図書)などがある。

―本シリーズ『学級を最高のチームにする!365日の集団づくり』は、先生のベストセラー「学級を最高のチームにする極意」の考え方を原点として、1年間365日の集団づくりの具体的な姿を、2カ月ごとの5期に分けてまとめた書籍になっています。このシリーズの、ねらいについて教えて下さい。

 理想の実現には、戦略が必要です。戦略は、主に@ゴールイメージ、Aビジョン実現のための具体的行動、B評価の3つから成り立ちます。本書の構成は画期的です。本書を開いてみて下さい。通常、こうした書籍は4月から始まります。しかし、本書のスタートは3月のゴールイメージです。各学年のゴールイメージは、「チーム」という概念を受け止めて、それぞれの執筆者(1年:近藤佳織、2年:宇野弘恵、3年:岡田広示、4年:橋健一、5年南 惠介、6年:松下 崇)が具体的に設定しました。そして、それを実現する1年間の手立てが、まるごと示してあります。手立てだけでなく、それを支える考え方も示してありますから、書籍に示してある場面以外にも応用が利きます。
 さらに、集団が順調に育っているかを確かめることができるチェックリストがついています。学力は定期的に評価がなされますが、学力を生み出す集団づくりについては振り返りがなされていないのが現状です。本書は、それぞれが各学年の学級づくりの戦略書になっています。

―「一人では解決できない課題を、良好な関係性を築きながら解決する」集団づくりは、次期学習指導要領のキーワードとなっているアクティブ・ラーニングの本質をズバリと突いていると思いますが、この理想とするクラスづくりに、まず大切な初めの一歩は何でしょうか。

 ズバリ、教師と子どもたちの個人的信頼関係づくりです。集団を形成するルール指導もあたたかな関係性の育成も、また、ゴールイメージの実現も全てここから始まります。ここを抜きに、ゴールイメージだけを追究すると、学級づくりという教師と子どもたちの協同作業がいつのまにか、教師の一人旅に陥ります。

―本シリーズの特徴の一つとして、「学級づくりチェックリスト」があります。赤坂先生は本書の中で「学級づくり20ポイントチェック」を提案されていますが、学級づくりにおいて定期的にチェックすること(共通の指標を持って振り返ること)は、なぜ大切なのでしょうか。

 Q1にも書きましたが、学力の定期点検はあります。しかし、学力向上の基盤は学級づくりだと言われながら、その定期点検をしてない場合があります。安定した学級経営のためには、学級づくりの定期点検は欠かせません。学級ができていれば学習の遅れはいくらでも取り戻せます。しかし、学級づくりの遅れは取り戻すことは甚だ困難なのです。

―本書を読まれる先生方の中には、新任の先生、若い先生も多くいらっしゃると思います。各巻にはそれぞれ「1年間を乗り切るコツ」という章がありますが、新卒の先生や若い先生方に学級づくりのアドバイスをお願い致します。また、本書のおすすめの読み方があれば教えて下さい。

 教師の仕事は高度な専門職です。常に学び続けることで変化への対応能力を身につけていくことが、教師として成功するためには必須です。自分自身の成長戦略が必要なのです。執筆者たちは、最初から成功した教師だったわけではありません。修羅場をくぐり抜けて来たからこそ今があるのです。成功し続ける教師になるためには、自分を成長させるためのシステムを持つことです。そのシステムの中核をなすのが、自分の実践を他者目線で評価する力です。
 教育書を読み、他者の助言を聞き、自分の在り方をふり返るという地道な営みを繰り返すことにより成長はもたらされます。本書は、自分をふり返る鏡となります。自分の実践と常に比較しながら本書を読んでみて下さい。自分の強みや課題が見えてくることでしょう。

―最後に、読者の先生方にメッセージをお願いします。

 学級担任の仕事は最低でも1年間の長きにわたります。また,膨大な業務をこなさなくてはなりません。喜び、焦り、迷い、いろんな感情のなかで仕事が進むことでしょう。しんどい時間もあるかもしれません。しかし、本書は、365日読者のみなさんをサポートするパートナーとなることでしょう。定期的に本書を開き、羅針盤のように行く先を確かめて見て下さい。きっと勇気を見つけることでしょう。

(構成:及川)

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