- まえがき
- 第1章 今,なぜ,自治的集団づくりなのか?
- 〜実践の質を決めるのは,それを支える考え方です〜自治的能力の育成の理論編
- 「自ら向上する子どもを育てる学級づくり」の使い方
- ※第2章以降の実践編は,下記の項目を中心にまとめています。
- @自治的能力を育てるため取っている手立て
- ▲学級の自治的能力を育てるための指導の手立てを,追試が可能できるよう,流れがわかる形でまとめています。
- Aどんな集団が育ったか
- ▲@の手立てを取った結果,どんな学級に育ったかという子どもの事実・エピソードをできる限り客観的にまとめました。
- B指導のポイント・コツ
- ▲@の指導が成功するための留意点を,日常指導の中で配慮していくべきことも含めてまとめました。向上する自治的集団づくりへのアイデアが満載です。
- 第2章 自ら向上する子どもを育てる学級づくり 生活づくり編
- 1 クラス会議で勇気づけ〜低学年にも自治的集団の素地を〜
- 1 どんな子どもを育てたいか
- 2 クラス会議って何? 始めたきっかけ
- 3 勇気づけのクラス会議
- 4 子どもたちの成長〜自分たちで考える・決める〜
- 5 日常の中でも勇気づけ
- 2 クラス会議を中心とした集団づくり 中学年の自治的集団づくり
- 1 内面と内面をかかわらせる
- 2 クラス会議をしよう
- 3 子どもの変容
- 3 クラス会議と学級プロジェクトで自治的集団を!!
- 1 どんな子どもを育てたいか
- 2 クラス会議と学級プロジェクト
- 3 一人一人の子どもたちを見つめて
- 4 少人数から集団を「チーム」に!!
- 1 なぜ,「少人数」なのか
- 2 実施方法 チームでの活動が子どもたちを変える
- 3 指導のポイント・コツ
- 5 毎日短時間のクラス会議で学級をあたたかい自治的集団にしよう!
- 1 クラス会議について
- 2 なぜ毎日行うか?
- 3 実施方法 クラス会議の導入・日常化の手立て
- 4 毎日続けるためのポイント
- 5 クラス会議の価値
- 6 実践しながら教師も学ぶ
- 6 クラス・カフェ「ファシリテーション型学級会」
- 1 そこに自治はあんのかい!?
- 2 クラス・カフェで自治的能力を育てよう
- 3 エピソードで見るクラス・カフェの実際
- 4 クラス・カフェ その後
- 第3章 自ら向上する子どもを育てる学級づくり 授業づくり編
- 1 パフォーマンス的自由討論と,真の自立した学習者を育成する自由討論
- 1 自由討論へのプロセス
- 2 三つの質を高める
- 3 子ども主体の能動的な学習が目指すもの
- 4 一斉授業の質で,土台をつくる
- 5 1年間の学級や子どもの育ちを理解する
- 6 子どもたちのどのような部分を伸ばしていくのか
- 2 教科における学び合いによる自立的学習者の育成
- 1 自立的学習者とは
- 2 自立的学習者集団の風景
- 3 学び合う授業のつくり方〜目標と学習と評価が一体化した授業〜
- 4 学び合う授業の様子
- 3 授業における自治的能力を育む,生徒主体の授業改善活動
- 1 あの指導は本当に「生徒のため」だったのか
- 2 授業の振り返り活動プログラム
- 3 振り返り活動の効果を高めるために
- 4 学びやすい環境をつくりはじめた生徒たち
- 4 学級経営の集大成としての学級文集
- 1 学級文集を作るということ
- 2 生徒が自主的に活動する仕掛け
- 3 学級文集の作成には1年間の学級経営の成果が出る
- 第4章 自ら向上する子どもを育てる学級づくり 行事・委員会編
- 1 ぼくたちの夢実現〜運動会プロジェクト〜
- 1 教師のつくる運動会
- 2 「学校」の主人公は,子どもたち
- 3 子どもが考える運動会
- 4 プロジェクト活動の実際
- 5 子どもたちの変容と保護者の反応
- 6 教師の変容
- 7 まとめ
- 2 学級づくりの一過程としての修学旅行の班づくりを捉える
- 1 修学旅行の班づくりにて
- 2 修学旅行班づくりの実際
- 3 「望ましい集団生活の在り方」について学ぶ
- 4 大切なのは教室で起こる事実を教師がどう価値付けるか
- 3 行事を通して身に付ける自治的能力
- 1 「自治的能力」との出会い
- 2 高等学校における自治的能力
- 3 自治的能力の土台となる要素
- 4 自治的能力を身に付ける一実践〜合唱コンクールを例にとって〜
- 5 クラスのその後
- 6 忘れられない合唱コンクール
- 第5章 自ら向上する子どもを育てる学級づくり 評価編
- 1 自治的活動の評価方法
- 1 成果を測るのは目標と評価
- 2 自治的活動の評価の方法
- 3 評価のポイント
- 4 評価を今後の活動に活かす
- あとがき
まえがき
3月,子どもたちとの別れ。
「いいクラスになった!」
と子どもたちに向かって言ってやりたい,子どもたちを一人一人抱きしめてやりたい,そんな思いで最後の日を迎えます。
「先生,4月からも僕たちの担任になってほしい」
「先生のこと,絶対に忘れない」
涙,涙の別れでした。
しかし,次年度,あなたの担任した子どもたちの様子がおかしい。新しい担任たちから聞こえてくる「気になる子」の名は,昨年度あなたの学級の子どもたちの名ばかり。授業中の態度が悪ったり,反抗的な態度をしたり,不登校傾向になったりしていると言います。あなたとしては,とても信じられない気持ちです。放課後になると,かつての愛児たちが教室に遊びに来ます。彼らが口々に言うのは,担任とクラスメートに対する不満や悪口です。
こうした経験をもっている方は,けっこういることでしょう。これは,「よい学級をつくった」と思った次の年に起こりがちな光景です。次の年に限ったことではありません。小学校だったら,担任の言うことしか聞かず,専科の先生の時間になると荒れる学級。中学校だったら,特定の教科担任の授業になると荒れる学級があります。
「それって,その時間の担当の力量が低いからでしょ」
と一笑に付しますか。
100歩譲ってそうだとしても,みなさんは,ご自身の学級がそのような状態だったら,どうしますか。指導しますか,放置しますか。たとえ,指導したくても,進級や卒業で自分の手の届かないところに行ってしまったらどうしますか。
自分が担任している時うまくやっていても,次年度になって,学級や学習に適応できない,担任になじめない,クラスメートと交われないというのでは,子どもたちが本当に「育った」と言えるのでしょうか。ましてや,次年度に前に担任した学級が崩壊したり,またクラス編制替えがあったとしても学級崩壊の主役級が,自分の学級出身者だったりしたらどうでしょう。
本書は,子どもたちを本当の意味で育てるための実践を集めました。執筆者たちの学級では,子どもたちが生活上の諸問題を話し合い解決します。教師が,「こうしなさい」と言ってしまえば,解決することができるにもかかわらずです。
学習課題を,時にはペアやグループを使って,そして時には,話したいクラスメートとランダムに情報交換しながら解決します。これも,教師が「こうです」と言ってしまえば,もっと効率よく学べるのかもしれません。
しかし,彼らはそうした道筋を通ろうとしないのです。
なぜでしょうか。
それでは,「生きる力」が身に付かないからです。子どもたちがこれから歩む人生は,困難と課題の連続です。人生の困難や課題を解決する時には,先生や親はいないかもしれないのです。私たちが,人生をたくましく生きるためには,困難を乗り越え,課題を解決する能力が不可欠なのです。
そしてその課題を解決する時に必要なことは,人とかかわる力です。どんなに大量で,レベルの高い知識をもっていようが,人とかかわることなしにその力を発揮することはできません。なぜならば,世の中の課題のほとんどは人間関係とかかわっているからです。また,世の中の仕事のほとんどは,一人ではできないようになっているからです。課題は人とのかかわりの中で発生するからこそ,人とかかわりながら課題を解決する力が必要なのです。それが「生きる力」の重要な要素なのです。
しかし,「生きる力」を身に付けるというと抽象的になりがちです。それを具体化するのが,自治的活動なのです。学級集団を自治的集団に育てる過程を通して,子どもたちが「生きる力」を身に付けるのです。
ここに書かれた実践群は,目の前の子どもたちが「言うことを聞くようにして,学級をまとめること」を志向したものではありません。子どもたちが,自分の目の前から去っても,たくましく人生を歩んでいけるようにするために必要な力を育てることを志向して,取り組まれたものです。
本書は近年出版された教育書の中では,特異であり,画期的なものと言えるでしょう。21世紀に入り,学級崩壊などの学級集団の混乱状況がクローズアップされる中で,教育界はどちらかというと教師の子どもたちをコントロールすることを志向し,それをよしとする傾向を歩んできたように思います。つまり,「教師の直接的な働きかけによって子どもをある方向に導く」という教育が志向されてきたのです。
しかし,本書は,その方向とは一線を画するものです。もちろん,教育活動には,ある程度,子どもたちをコントロールすることは必要です。私も小学校教師でしたから,その必要性は否定しません。しかし,それは,「教えなくてもいい状態にするために必要なことを教える」営みなのです。
本書に示した実践は,その性格上,「書いてある通りにやったらうまくいく」というようなものではありません。また,「1時間ですぐに結果が出る」というものでもありません。しかし,子どもたちが課題解決能力を付けてくると,子どもたちのもっている凄まじい力に圧倒されることでしょう。「こんなこともできるのか!」と驚かされます。
執筆陣は,小学校から中学校(中等教育学校を含む),高校に勤務するいずれ劣らぬ集団づくりのスペシャリストたちです。しかし,彼らもいきなり学級づくりが上手になったわけでなく,試行錯誤の結果,身に付けた力なのです。全実践の根底に流れているのは,「子どもを信じること」です。あなたの子どもたちを信じる力が,子どもたちに育つエネルギーを与えます。
さあ,挑戦してみませんか。先生が頑張る学級づくりから,子どもたちが自ら進める学級づくりへの脱皮に。
/赤坂 真二
よ。」「その行動をとる子どもたちの直そうとしているよ。」と思っている教師も多
いのではないか。
しかし、本当にできているのか?知っているだけで、本書のように実践できている
のか?おそらくできていない教師の方が多いのではないか。
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