勇気づけリーダーの学級経営〜これからを生きる資質・能力を育てる教師の役割〜
これからを生きる資質・能力を学級でつけるには?勇気づけリーダーの学級経営
勇気づけリーダーの学級経営(7)
見方を変えるとやるべきことが見えてくる
〜これからを生きる資質・能力を育てる教師の役割〜
上越教育大学教授赤坂 真二
2017/12/20 掲載
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1 ご飯を食べる理由

 ちょっと考えてみていただけますか。
 みなさんは、お腹が空くからご飯を食べますか、それとも空腹を満たすためにご飯を食べますか。
 ………………………どちらですか。
 この場合、どちらであろうと私たちの日常生活にはなんら影響はありません。しかし、このことが、気になる子の指導や問題行動への対応では大きな差異を生みます。「人は原因があるから行動する」と考える立場が原因論です。従って「お腹が空くからご飯を食べる」というのは、原因論の立場です。それに対して「人は目的に向かって行動する」と考える立場が目的論です。従って「空腹を満たすためにご飯を食べる」というのは、目的論の立場になります。
 前者に立つと、子どもたちの気になる行動や問題行動には原因があると捉えることができますが、後者に立つと、それらは目的に向かって起こると捉えることができます。学校現場ではついつい原因論に立ってしまうことが多いのではないでしょうか。例えば、友だちに暴力を振るったり意地悪をしたりする子がいると、「あの家庭の子はしつけがなっていない。お兄ちゃんもそうだった」とか、「あの子は、ああいう性格なんだよ。低学年の頃からそうだった」とか、「去年のクラスでは、あれが見過ごされていたんだよね」などともっともらしい原因が探られます。また、真面目な先生ほど、「私の指導がダメだから」などと自分を責めたりします。このように生徒指導場面では、家庭が悪い、性格が悪い、去年の担任や他の教師が悪い、そして、自分が悪い、と「悪者探し」をしがちです。

図1

2 子どもたちはお見通し

 しかし、目的論に立つと同じ行動でも違って見えてきます。意地悪をするのは、「相手の気を引きたい」のかもしれませんし、「一緒に遊びたい」のかもしれません、また、「ストレスを発散したい」のかもしれません。

目的論に立つことで、悪者探しが起こりにくくなります。

このことは、その後の指導に劇的な違いを生むことでしょう。悪者探しをしているとその子とのかかわりにネガティブな感情が入り込みます。何らかの落ち度がその子やその子を取り巻く環境にあると捉えてしまうわけです。ここが指導を難しくします。みなさんは、好きな人と嫌いな人を目の前にしたときの自分自身の変化にお気づきでしょうか。相手を悪い人や嫌いな人だと認識すると、それが表情、言葉、語調、身振り手振り、姿勢などあちこちに出てしまいます。相当な訓練を受けた人でも異なった対応をしてしまうようです。
 これらをコントロールしきることは至難の業です。ところが、一方で子どもたちは、相手が自分を好きか嫌いか見抜く天才です。恐らく、自分に抱かれたネガティブな感情は一瞬にして見破られるでしょう。それに気になる子どもや問題行動を繰り返す子どもは、叱る、注意するなどのネガティブな対応を受けることに慣れている可能性があるため、教師にその気がなくても、その行動や態度やかけた声が、マイナスにとられてしまうことがあります。
 教師が穏やかに「どうしてそんなことしたの?」と純粋な疑問から尋ねたとしても、子どもたちのほうは、「そんなことをするなんて信じられない」「それはやってはいけないことだ」と、責められているように捉えるかもしれません。しかし、目的論に立って気になる行動や問題行動を見てみると、

それは目的を達成するための方法であり、この子は今、適切な方法がわからないだけなのだ

と捉えることができるでしょう。すると、目の前の子は、「困っ」ではなく「困っている」になるはずです。このように捉えることで、気になる子や問題行動をする子に対するネガティブな感情の発生が抑制されることが期待できます。その分、その子とよい関係になれる可能性が高まり、指導や支援の可能性が高まります。

図2

3 教師のやるべきこと

 また、原因論に立つと、教師の意識を指導や支援を難しいところに向かわせます。家庭に原因を求めたとしましょう。今時、保護者に「なんとかしてほしい」とどれくらいの教師が言えるでしょうか。明白な過失が子どもたちにない限り(いや、あったとしても)、教師の指導力がないと思われてしまいます。また、原因を子どもたちの生育歴や過去の教師の指導に求めたとしましょう。子どもたちの過去にかかわることが出るでしょうか。それこそ、「お手上げ」です。親のしつけや過去の教師の指導を責めたところで何になるでしょうか。
 一方で、気を引きたい、一緒に遊びたい、ストレスを発散したいなどの目的は、未来にあります。教師は子どもたちの「これまで」にかかわることはできませんが、「これから」にはかかわることができます。そして、今、誤った方法で目的を達成しようとしているわけですから、今、正しい方法を教えてあげればいいのです。「そうは言うけど、その指導法がわからないんだよね」とおっしゃる方がいるかもしれませんが、これは、比較の問題です。子どもたちの過去や家庭にかかわろうとするよりも、現在や未来に関わるほうがはるかに楽なはずです。また、過去や家庭で起きていたこと、つまり原因は不確定要素が多すぎます。学校側のもっている子どもたちに関する過去や家庭に関する情報は、断片的で一方的なものです。勿論、目的も確かなものとは言いきれませんが、原因よりは妥当性が高いのではないでしょうか。過去のもつれた糸を解きほぐすよりも、これから子どもたちが何をしようとしているのかを考えるほうがよほどシンプルなのではないでしょうか。
 子どもたちの気になる行動や問題行動のほとんどは教室で起こります。つまり、子どもたちの教室における気になる行動や問題行動にも目的があるということです。それでは、子どもたちの教室における行動の目的とは一体何なのでしょうか。これを知ることで、あなたの教室の気になる子や問題行動をする子の見え方がきっと変わると思います。それはまた次回。

赤坂 真二あかさか しんじ

1965年新潟県生まれ。上越教育大学教職大学院教授。学校心理士。「現場の教師を勇気づけたい」と願い、研究会の助言や講演を実施して全国行脚。19年間の小学校勤務では、アドラー心理学的アプローチの学級経営に取り組み、子どものやる気と自信を高める学級づくりについて実証的な研究を進めてきた。2008年4月から、より多くの子どもたちがやる気と元気を持てるようにと、情熱と意欲あふれる教員を育てるために現職に就任する。
主な著書に、『スペシャリスト直伝! 主体性とやる気を引き出す学級づくりの極意』『クラスがまとまる! 協働力を高める活動づくり』『教室がアクティブになる学級システム』『アクティブ・ラーニングで学び合う授業づくり』『スペシャリスト直伝!成功する自治的集団を育てる学級づくりの極意』『学級を最高のチームにする!365日の集団づくり』『信頼感で子どもとつながる学級づくり 協働を引き出す教師のリーダーシップ』『やる気を引き出す全員参加の授業づくり 協働を生む教師のリーダーシップ 』『集団をつくるルールと指導 失敗しない定着のための心得』『気になる子を伸ばす指導 成功する教師の考え方とワザ』『思春期の子どもとつながる学級集団づくり』『いじめに強いクラスづくり 予防と治療マニュアル』『スペシャリスト直伝!学級を最高のチームにする極意』『一人残らず笑顔にする学級開き 小学校〜中学校の完全シナリオ』『最高のチームを育てる学級目標 作成マニュアル&活用アイデア』『クラス会議入門』(以上、明治図書)などがある。

(構成:及川)

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