著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
学級経営はトラブルや困りごとが多い、だからこそ…最適解にたどりつく選択肢を増やしていこう!
川崎市公立小学校土居 正博
2022/2/22 掲載

土居 正博どい まさひろ

1988年,東京都八王子市生まれ。創価大学教職大学院修了。川崎市公立小学校に勤務。国語教育探究の会会員(東京支部)。全国大学国語教育学会会員。国語科学習デザイン学会会員。全国国語授業研究会監事。教育サークル「深澤道場」所属。教育サークルKYOSO’s代表。著書・編著書に、『クラス全員のやる気が高まる!音読指導法―学習活動アイデア&指導技術―』『クラス全員が熱心に取り組む!漢字指導法』タイトル『1年生担任のための国語科指導法』『新卒3年目からグイッと飛躍したい!教師のための心得』『初任者でもバリバリ活躍したい!教師のための心得』『新任3年目までに身につけたい 困った場面をズバリ解決!指導術』(いずれも明治図書)など多数。

―今作は、昨年ご好評をいただいた「あるある」本(『新任3年目までに身につけたい 困った場面をズバリ解決!指導術』)の続巻です! まずはコンセプトを教えてください。

 今作は、前作と比べて「学級経営に焦点を絞り、実践内容の詳細を具体的に知ることができる」という特長があります。前作は、初任者を含めた若手教師を中心に多くの先生方にお読みいただき、「読みやすい」「分かりやすい」という、概ね好評の声をいただくことができ、編著者として喜ばしい気持ちでいっぱいでした。
 その一方、「通用しない子もいる」「実践についてもう少し詳しく知りたい」とのお声もいただくことがありました。前著では、どちらかというと初任者の先生方にもお伝えするような、やや一般的な解決策を分かりやすくお示ししたつもりでした。なので、このような「少し物足りない」というお声をいただくことも当然かと思います。
 そこで、今回の本では「学級経営」の困った場面に絞り、大幅に場面の数を増やすとともに、一つの困った場面につき二実践を掲載いたしました。二実践掲載したのは、読者の先生方が子どもの実態に合わせて適した実践を選んだり、場合によっては二つの実践を組み合わせたりして、よりよい解決の道を探れると考えたからです。さらにその一つ一つの実践例もなるべく詳細なものを載せるようにしました。
 きっと若手教師の皆さんの大きな武器になると思いますよ。

―困ったことの解決法を、複数提案しているというのがとても新しいですね。新任3年目以降は、やはりこういった複数の解決法の中から選択していくような力が求められるのでしょうか?

 そうですね。「こうすれば絶対うまくいく」という方法はありませんからね。
 この本をお読みになるようなやる気のある先生でしたら、大体3年目を過ぎると、早い人なら2年目から「苦しいクラス」を担任することが増えてきます。そういったクラスでは、一般的な手法は通用しないことが多々あります。そうした時に「あの本に書かれていたことが通用しない……終わりだ」と諦めてしまうのか、「これでダメなら、次はこうしてみよう」などと試行錯誤できるのかは、大きな違いを生みます。前者はきっとこの仕事に絶望してしまうでしょうが、後者はこの仕事の面白さをより一層かみしめることができるはずです。後者のような先生になっていくには、「引き出し」を増やさなくてはなりません。引き出しとは、具体的実践であったり、一つの事象への捉え方であったりします。本書は、一つの場面に複数の事例を掲載していることで、こうした「引き出し」を増やしていくのにピッタリです。

―土居先生も現在は若手の先生を指導されるお立場かと思いますが、トラブル場面の解決法として、『もっとこうしたらいいのになぁ』とか、『若いのに、これはすごい解決法だ!』と思ったエピソードなどがあれば教えてください。

 私が接してきた若い先生方は皆さん本当にまじめで、子どもにしっかり向き合っている方ばかりです。私が初任者の時とは本当に比べ物にならないと思います。
 そういう風に、皆さん素敵な方ばかりですが、残念ながら順調にいく方とそうでない方がいらっしゃいます。順調にいく方は、子どもとの適切な距離感をとれていることが多いと思います。若手のうちはどうしても子どもと近くなりすぎてしまうのですね。それが原因で指導が通りにくくなっている方を多く見てきました。若手の先生でも上手くいっている方は、「言うべき時にはきちんと言う」という印象があります。なかなか自信を持てない気持ちも分かりますが、子どもの前に立つ時は、多少自信過剰なくらいでいいですから、指導すべき時は指導する、言うべき時は言う、ということを心掛けるとよいと思います。それに、歳を取れば、嫌でも自分の粗が見えてきて、自信過剰でなくなっていきますよ。私のように……(笑)

前著のインタビューでは、本書をご執筆くださったサークル(KYOSO’s)について教えていただきました。コロナ禍でのサークル活動はどのようにされているのですか。

 サークル活動は全てオンラインで行っています。それまでは月に一度集まって行っていたのですが、コロナ禍の中ではそうもいきません。しかし、オンラインでのサークルであれば、移動時間はありませんし、遠方に住んでいるメンバーも参加できますし、悪いところばかりではありませんよ。
 活動内容は、引き続きレポート検討です。各メンバーが担当月に実践レポートを作成し、発表します。他のメンバーはそれを聞いてコメントをします。これが本当に面白いのです。最近はメンバーのレポートやコメントの質も相当高まってきて、参考文献に学術書が出てきたり、一本のレポートについて1時間半くらい話してしまったりと、濃密な時間になっています。コロナ禍になってやってみて分かったことですが、オンラインでも十分サークル活動は可能ですね。メンバーの成長を見ていて実感しています。ただ、そろそろ対面で集まってサークルをして、その後の飲み会とかもしたいですけどね(笑)

―はやくコロナが終息しますように…!ですね。本書は、前著を読んで一年間を乗り切った先生にぜひ、さらなるステップアップの手立てとして読んでいただきたい一冊です。ぜひ、読者の先生に向けて、メッセージをお願いします!

 本書にご興味を持っていただきありがとうございます。また、前著をお読みいただいた先生方、重ねて御礼申し上げます。本書は、前著よりもさらにパワーアップし、実践事例を増やしました。若手教師が最も着手すべき、安定した学級をつくるための学級経営に焦点を絞り、サークルメンバーで検討に検討を重ねました。ぜひ、本書を武器に若手教師時代の学級経営を盤石なものにしていってください!

(構成:林)
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