著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
若い先生のつまずきは、その多くが「あるある」だ!
川崎市公立小学校土居 正博
2021/1/22 掲載
 今回は土居正博先生に、新刊『新任3年目までに身につけたい 困った場面をズバリ解決!指導術』について伺いました。

土居 正博どい まさひろ

1988年、東京都八王子市生まれ。創価大学教職大学院修了。川崎市公立小学校に勤務。国語教育探究の会会員(東京支部)。全国大学国語教育学会会員。国語科学習デザイン学会会員。全国国語授業研究会監事。教育サークル「深澤道場」所属。教育サークルKYOSO's代表。『教師のチカラ』(日本標準)編集委員。2018年、「読売教育賞」受賞。著書に、『クラス全員が熱心に取り組む!漢字指導法』『1年生担任のための国語科指導法』『新卒3年目からグイッと飛躍したい!教師のための心得』『初任者でもバリバリ活躍したい!教師のための心得』(いずれも明治図書)など多数。

―「若手教師がつまずくことはすべて同じではないが、かなり似通っている」とのこと。そうなんですか?

 はい。私はそのように考えています。例えば、本書にも載せている「授業開始時に泣いている子がいる」という場面は多くの教師が必ず経験する「あるある場面」です。そして、若手教師が「どうしよう」と悩む場面でもあります。新卒1年目など、希望に燃える状況であればあるほど、「一人を大切にしなくては!」と意気込み、その泣いている一人につきっきりになりがちです。そういう意気込みや、一人に寄り添う姿勢自体はもちろん重要なのですが、クラス全体を放っておくことは愚策です。このような「あるある」場面は、多くの若手教師が経験し、なおかつそこでの対応は非常に重要なのです。
 この事例を含め、一緒に勉強しているサークルKYOSO'sメンバーに、他にも自分が困った場面はないか挙げてもらうと、その多くの場面がメンバー間で被っていました。つまり、「若手教師がつまずくことはかなり似通って」いたのです。そのような「あるある」で困った場面を具体的にたくさん挙げ、それに対するアドバイスをまとめたのが、本書です。

―具体的なつまずき場面は目次をご覧いただくとして……書名やカバーには、“術”とか“スキル”という言葉が躍っていますが、実は単なる技術だけでなく、マインドについても述べていただいている項目が多いですよね。どうしてでしょう?

 やり方(スキル)だけでなく考え方(マインド)も非常に重要だと考えているからです。
 本書は、若手教師がつまずくことの多い場面を挙げ、それに対して「少し先輩」である我々サークルメンバーがアドバイスするという形式の書籍です。なるべく解決策(やり方)が分かりやすいように、というつもりでメンバーで声を掛け合い協力して執筆していたのですが、どうしても「考え方」抜きには語れない項目が多くありました。やはり、考え方があってこそのやり方だと改めて気付かされました。こうした経緯から、やり方だけを考え方から切り離して語るのは難しく、むしろ背景にある考え方もしっかり読者の先生方に伝えていった方がよいのではないか、ということで、こういった述べ方になりました。

―国語教育を中心にご活躍されている土居先生ですが、本書で挙げている「困った場面」には、実際に土居先生が経験したものも含まれていらっしゃるそうですね。先生にとって忘れられない「困った場面」はありますか?

 正直に言って、私は本書に載っている「困った場面」をほとんど経験しています(苦笑)。「あるある」ですから……。それだけ誰もが直面する場面だということです。重要なのは、問題に直面するかどうかではなく、うまく対応し乗り越えられるかどうかです。ですから、本書は困った場面に直面しなくなる本ではなく、困った場面に押しつぶされなくなる本だと言えるでしょう。あるあるな困った場面は、うまく乗り越えられれば、むしろ自分の糧とできるのです。
 さて、私にとって忘れられない「困った場面」は、「保護者と離れられない子がいる」というものでしょうか。当時私は、1年生を担任していました。子どもが保護者に付き添われて登校してきましたが、なかなか離れられずにいました。保護者も仕事に行かなくてはいけないのに泣きつかれて困っていました。私もどうしたらいいか、非常に困っていました。そこへベテランの先生がいらっしゃり、サッとその子を抱きかかえて保護者を見えないようにしてしまいました。そして「お母さん、すぐ行ってください。」と行かせました。その瞬間はその子どもはワーッと泣きましたが、保護者がいなくなるとすぐに泣き止み、授業に参加しました(本書では違う解決策を紹介しています)。この時、私は「困った場面をサッと解決する指導術は確かに存在するんだ」と確信したのでした。

―本書は、先生が代表を務められている教育サークル、KYOSO'sのみなさまでお書きいただきました。サークルってどんなことをされているんですか?

 サークルでは毎月一回、定例会を行っています。定例会では、メンバーが書いてきた授業実践レポートを読み合い、検討し合っています。ここでは、批判的な意見も含め厳しく検討し合うことにしています。サークルの参加条件は、必ずレポートを書いて持ち寄ること、です。つまりお客さん状態は許されません。レポートの発表は二か月に一回、回ってくるのですが、これがなかなかキツイのです。しかし、単に参加するだけ、人の発表を聞くだけということと比べて断然力がつきます。
 若くてやる気のある先生には、気の合う仲間や同じくやる気のある同志を見つけ、少人数でサークルをつくることをおすすめします。また、「KYOSO's」定例会に参加してみたいという方がいらっしゃいましたら、SNS等で土居にコンタクトを取っていただき、レポート持参の上(笑)、ご参加ください。我々は「来る者は拒まず、去る者は追わず」というスタンスですので、いつでもお気軽に。

―本書をお読みくださる方の中には、4月から初めて教壇に立つ、という方もいらっしゃるかもしれません。ぜひ、若い先生方に向けて、メッセージをお願いします!

 お若い先生方には、本書の目次の「困った場面」一覧をご覧いただければ、「あー! これあるある!」と頷いていただけると思います。それだけ、若手教師のつまずく問題は似通っているのです。逆に言えば、同じ若手教師たちから一歩抜きんでて、クラスを安定させられ、授業でも子どもを伸ばせるか否かは、こうしたあるある「困った場面」に動じずに、きちっと対応できるか否かにかかっている、とも言えるかもしれません。
 また、「まだこんな場面に遭遇したことがないなー」という先生方や、まだ現場に立たれていない学生の方も、「心構え」があるのとないのとでは大違いです。「若手教師はこういうことでつまずきがち」だということを本書を通して知り、「心構え」があれば、いざ問題に直面した時に落ち着いて対応することができます。こうした意味で、本書は今お困りの先生方のための処方箋にも、これから問題に直面するであろう先生方の予防薬にもなり得ると思います。教育現場の厳しさは増す一方ですが、本書を武器に乗り越えていっていただければうれしいです。

(構成:林)
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