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思考や判断という行為自体は1時間毎のレベルでも可能ですが、思考力や判断力をつけたいと思うと、直感的に1時間では難しそうだなと思いますよね。知識ならどうでしょう。1時間毎に知識目標は設定できると思います。一方で中学校地理的分野では、内容のまとまりや小単元で明らかにしたい地域の特色等に関連した知識があります。例えば、「アジアで急速な経済成長が進んだのはなぜか」という単元を貫く問いの答えです。その特色を明らかにすることが小単元の目標にもなります。そう考えると、知識も単元を見通した目標が必要になりますし、同時に単元を見通した評価計画が必要になりますね。
今回の学習指導要領では、全ての教科で「見方・考え方」がキーワードです。地理的な見方・考え方にはいくつかの例示がありますが、中でも「人間と自然環境との相互依存関係」や「空間的相互依存作用」という、「人と自然」の関係や、「地域と地域や、地域内の場所と場所」の作用についての見方・考え方は、「どのように」や「なぜ」といった問いと密接に関わっています。事象間の関係性を対象とするからです。「地理的な見方・考え方を働かせる」とは、例えば、事象間の関係性から「地理的な問いを発見」したり、「地理的な問いを解決」したりするための視点や方法ということでもあります。このような、見方・考え方を踏まえた問いや学習活動が、評価への手だてとして、授業プランに組み込まれていることが大切です。
白地図に色塗りをする作業が授業の中でよく行われています。作業には、その作業をする意味が必要です。生徒が、今やっている作業は何のためなのかがわかる必要があります。問いを発見するために、地図や資料を読み取る。問いを解決するために主題図を作る(白地図にまとめる)。それが伝わるような取り組みが必要でしょうね。また、地図にまとめる作業は、アナログだけではなく、デジタルでも簡単にできるようになっていますから、タブレット端末でも作業的な活動をどんどん行わせるとよいですね。本書では、評価問題にも地図や資料の読み取りに関するものが沢山あります。
PBL的な単元構成は、社会的な論争問題について生徒と共有し、それが社会問題かどうかを吟味するところからはじまります。そして、その問題に関する答えを暫定的に出してみることで、知識の不足を悟り、論争問題を解決するアイデアに関連した知識獲得を行いつつ、論争問題を考える構成になっています。本書では、第3章でPBL的な単元構成による授業が一つ提案されていますので、是非読んでいただきたいです。
まずは、評価問題がどの観点を見取るためのものか明確にしておくことです。そして、評価問題の解答プロセスを想定しておくことが重要です。それによって、生徒がどこでつまずいているのかが予測できます。また、既存の評価問題を生徒に求めている資質・能力や実態に合わせて修正して利用するという考え方も重要だと思います。
地理って面白いなと生徒に感じてもらうためには、生徒が授業の中で明確に「問いをもち」、その「問いを解いている」感覚をもてることが大切だと思います。本書では、授業が楽しくなる学習問題が設定されている授業プランが掲載されています。また、評価問題例もそのまま使っていただけると思います。社会科地理でつけてもらいたい資質・能力が身についていると生徒が実感できる授業が実践できれば、生徒はきっと授業が楽しいと感じてくれると思います。「社会科地理が楽しくて大好きだ」という生徒が一人でも増えることに、本書が貢献できれば幸いです。