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本シリーズでは、「目標(評価規準)」・「授業の構想と展開」・「学習評価」を一体として捉えることを大切に考え、中学校社会科の授業と学習評価についての具体的な好事例を数多く掲載しています。読者の先生方は、授業と評価に関する自己課題を明確に意識しながら、「自分ならばどうする」という問いをもって読み進めていただければと思います。
今次要領が示す授業改善の方向性を踏まえ、アクティブ・ラーニングとしての歴史授業の形は、次のように示すことができます。
生徒が、よりよい社会の実現を視野に、歴史的事象に対し、歴史的な見方・考え方を働かせて、学習問題を見出し、史・資料を活用しながら多面的・多角的に考察し、表現することを通して、問題解決につながる知識・概念や能力を獲得していく授業
アクティブ・ラーニングと3観点の学習評価を可能にする授業づくりのための要件を、6つに整理して示しました。
第1に、学習内容と結んで、社会的事象の意味、意義、特色や相互の関連を説明した概念的知識の獲得につながる学習問題であること。
第2に、知識や能力を実際に働かせることを求める社会生活における状況や諸課題と結びついた学習問題であること。
第3に、生徒が、「やればできる」「チャレンジしてみたい」といった気持ちをもつことのできる学習問題であることです。
歴史テスト問題の作成のポイントは、大きくは2つあると思います。
第1は、生徒の解答の過程が、歴史的な見方・考え方を働かせて思考し、判断したことを説明する過程として組み立てられていること。
第2は、解答として求められる知識の質が、授業の到達目標と合致した歴史的事象の意味や意義、時代の特色などを捉えた概念的知識のレベルであることです。
第1に、目標に準拠して生徒の学習の改善につながる評価であること。
第2に、教師の授業改善につながる評価であること。
第3に、教育課程や教員組織等の改善につながる評価であることです。
今次要領が求める授業と学習評価の改善の方向性は、まさにこうした3つの学習評価の意義を実質化することを私たち社会科教師に求めていると受け止めたいと思います。
「生徒の資質・能力を伸ばすために、現在用いている授業づくりや学習評価の手だてのどこをどう改善すればよいのか。」「授業や評価の力量を向上させるために、教師間の対話を促し研修の体制をどう構築するか。」資質・能力ベースの社会科教育を実現するためには、いずれも避けて通れない課題です。読者の先生方がこうした課題に協働で挑んでいかれる支え手として本書が役立つことを願っております。