新3観点の学習評価を位置づけた中学校歴史授業プラン

新3観点の学習評価を位置づけた中学校歴史授業プラン

インタビュー掲載中

3観点を位置づけ指導と評価の一体化を実現する!歴史授業モデル

3観点の学習評価を位置づけ「指導と評価の一体化」を実現するには?歴史的分野の各単元のねらいと評価規準、授業モデルと評価問題例を収録。「見方・考え方」「学習内容の構造化」「対話」「自己調整学習」「単元としての授業構想」を組み込んだ歴史授業プラン集です。


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ISBN:
978-4-18-454828-2
ジャンル:
社会
刊行:
対象:
中学校
仕様:
B5判 136頁
状態:
在庫あり
出荷:
2024年4月17日

Contents

もくじの詳細表示

はじめに
第1章 新3観点の学習評価を位置づけた中学校歴史の授業づくり
「指導と評価の一体化」を図る授業づくりと学習評価の手だて
1 資質・能力の育成のための歴史授業改善の課題
―「主体的・対話的で深い学び」の実現―
2 「主体的・対話的で深い学び」を実現する歴史授業づくり
3 学習評価の3観点と歴史的分野の評価規準
4 「知識・技能」と「思考・判断・表現」をひとまとまりとした学習評価の遂行
5 「主体的に学習に取り組む態度」の育成と評価
6 新3観点の学習評価を位置づけた単元(授業)づくり―小括―
第2章 「知識・技能」と「思考・判断・表現」の学習評価を中核に位置づけた歴史授業プラン
A歴史との対話の授業プラン
プラン1
(1)私たちと歴史
歴史との出会い方を知る
歴史の「ものさし」を知り,人・もの・ことをつなげる
プラン2
(2)身近な地域の歴史
身近な地域の歴史
様々な手段で歴史を調べ,現代と関連づけることで歴史を身近なものにする
B(1)古代までの日本の授業プラン
プラン1
(ア)世界の古代文明や宗教のおこり
民主政治を起源から考える―古代ギリシャの民主政―
主権者教育の視点から考える世界の古代文明の授業
プラン2
(ウ)律令国家の形成
源氏物語について調べ,考え合う
紫式部は道長の栄華を支えた最大の功労者か?
プラン3
(エ)古代の文化と東アジアとの関わり
古代の文化と東アジアとの関わり
国風文化は中国の影響がうすれた結果,生まれたのだろうか
B(2)中世の日本の授業プラン
プラン1
(ア)武家政治の成立とユーラシアの交流
武家政権の特徴について考える
授業で獲得した知識を活用する評価問題例
プラン2
(イ)武家政治の展開と東アジアの動き
室町政権と東アジア
時間軸・空間軸から国内外の相互関係を理解,表現する
プラン3
(ウ)民衆の成長と新たな文化の形成
室町時代の民衆の成長と新たな文化の形成を調べ,話し合う
GIGAパソコンを活用し,民衆の自力救済を説明できるようにする
B(3)近世の日本の授業プラン
プラン1
(ア)世界の動きと統一事業
戦乱の世から全国統一へ
秀吉はどんな世の中をつくりたかったのだろう
プラン2
(イ)江戸幕府の成立と対外関係
江戸幕府の成立と対外関係
対外関係の視点を意識して,幕府と藩の仕組みを理解する
プラン3
(エ)幕府の政治の展開
江戸時代中期の幕政改革と幕府政治の行き詰まり―田沼意次と松平定信,どちらの政治を支持するか?―
社会の状況等を根拠として,自分の意見を磨く
C(1)近代の日本と世界の授業プラン
プラン1
(イ)明治維新と近代国家の形成
市民革命について調べ,考え合う
市民革命は課税のあり方をめぐって始まった!
プラン2
(エ)近代産業の発展と近代文化の形成
「衛生」を軸とした近代国家形成の理解
中項目を貫く概念を用いた学習モデル
プラン3
(カ)第二次世界大戦と人類への惨禍
軍国主義と日本の行方―太平洋戦争,私の考察―
歴史は,送り手から受け手へとどのように綴られていくのかを捉える歴史学習
C(2)現代の日本と世界の授業プラン
プラン1
(ア)日本の民主化と冷戦下の国際社会
日本の民主化と冷戦下の国際社会
なぜ日本の民主化は急速に進んだのか!?
プラン2
(イ)日本の経済の発展とグローバル化する世界
高度経済成長と社会問題
歴史的な見方・考え方を主体的に働かせることを目指す歴史授業モデル
第3章 「主体的に学習に取り組む態度」の学習評価を中核に位置づけた歴史授業プラン
B(1)中世の日本の授業プラン
プラン1
主体的に学習に取り組む態度の指導と評価の指導例「武士のはじまり」
毎時間の学習活動の積み重ねが単元での主体的に学習に取り組む態度を育成する
C(1)近代の日本と世界の授業プラン
プラン1
日本が戦争に突き進んでいった要因とは!?
自己の知的成長を実感させる歴史授業モデル
おわりに

はじめに

新3観点の学習評価を位置づけた歴史授業づくりの要件


 平成29年告示の学習指導要領(以下,今次要領)では,各教科の目標及び内容が,(1)「知識・技能」,(2)「思考力・判断力・表現力等」,(3)「学びに向かう力・人間性等」の3つの柱に整理されました。そして,今次要領における目標に準拠した評価のために,目標(1)に対応して「知識・技能」,目標(2)に対応して「思考・判断・表現」,目標(3)に対応して「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点が設定されました。目標(3)には,感性や思いやりなど観点別評価や評定になじまず,個人内評価を通じて見取ることが適当な部分があることから,観点としては,教科等において「主体的に学習に取り組む態度」が設定され,知識・技能を獲得したり,思考力・判断力・表現力等を身に付けたりするために,自らの学習を調整しようとする学習者の意思的な側面を評価することが重要であるとされています(1)。

 これを受けて,中学校社会科歴史的分野の評価の観点は,次のように示されています(2)。


【知識・技能】我が国の歴史の大きな流れを,世界の歴史を背景に,各時代の特色を踏まえて理解しているとともに,諸資料から歴史に関する様々な情報を効果的に調べまとめている。

【思考・判断・表現】歴史に関わる事象の意味や意義,伝統と文化の特色などを,時期や年代,推移,比較,相互の関連や現在とのつながりなどに着目して多面的・多角的に考察したり,歴史に見られる課題を把握し複数の立場や意見を踏まえて公正に選択・判断したり,思考・判断したことを説明したり,それらを基に議論したりしている。

【主体的に学習に取り組む態度】歴史に関わる諸事象について,国家及び社会の担い手として,よりよい社会の実現を視野にそこで見られる課題を主体的に追究,解決しようとしている。


 3観点の学習評価を適切に行うためには,社会科教師には,少なくとも以下の6つの要件を授業づくりにおいて実質化することが求められると考えます。

要件1.「歴史的な見方・考え方」を働かせる。

 「思考・判断・表現」の観点にみる「時期や年代,推移,比較,相互の関連や現在とのつながり」などが「歴史的な見方・考え方」です。授業づくりにおいては,「歴史的な見方・考え方」は,@学習問題を設定する,A学習内容を選択・構成する,B生徒の思考・判断過程として学習過程を組み立てる時の「視点や方法」として「働かせる」ことが必要になります。

要件2.学習内容を構造化する。

 「知識・技能」の観点に関わり,「歴史的な見方・考え方」を働かせて,歴史的事象の意味や意義,時代の特色,歴史の大きな流れを捉えた概念的な知識と焦点化された事象(事例)とを明確に設定し,概念的な知識を中核に授業で扱う諸知識を相互に結びつけ構成することです。

要件3.思考・判断過程としての学習過程の類型をつかみ授業づくりに活かす。

 「思考・判断・表現」の観点にみる「考察」と「選択・判断」は,学習過程の大まかな類型を示していると見ることができます。「考察」型は,史・資料を活用しながら,事象間の関係や意味,意義,時代の特色,歴史の大きな流れを追究し解釈していく学習過程を踏む授業。「選択・判断」型は,歴史的な論争問題・場面に対応する複数の選択肢を,史・資料から得た事実を根拠に評価し選択していく学習過程を踏む授業と言うことができます。こうした類型を踏まえ適切に学習過程を組み立てることが求められます。

要件4.学習過程に「対話」を組み込む。

 歴史授業では,生徒が,史・資料に問いかけ考える,過去を生きた人々の様々な声をつかみ考える,歴史的事象の意味・意義等について自ら解釈をつくり出すことを,生徒同士の対話,生徒と教師の対話,生徒と社会の人々との対話を通じて実践し,その内容を説明したり,議論したりするように展開することが大切になります。

要件5.生徒が自己の学習を調整することを指導する。

 「主体的に学習に取り組む態度」の観点の中核は,生徒が自己の学習過程を見取り調整できることです。生徒が,学習問題について興味・関心を下支えに,問題解決の過程・方法に見通しをもつ,学習の過程を振り返る,学習の結果を評価し,次の学習に向けて過程や方法・結果を調整することができるように,教師の意図的な指導が必要になります。

要件6.単元として授業を構想する。

 3観点の学習評価は,1時間単位の授業で見取ることはできません。目標と評価の観点に準拠した単元(内容や時間のまとまり)として授業を構想し展開することが求められます。

本書は,第1章で3観点を位置づけた授業づくりと学習評価の理論を述べた後,第2章で「知識・技能」と「思考・判断・表現」を結びつけた学習評価を可能にする授業プランを,第3章で「主体的に学習に取り組む態度」の評価を中核に位置づけた授業プランを提案しています。執筆者は,授業づくりと学習評価について好事例を数多く開発されてきた中学や大学等の教師たちにお願いしています。読者の皆様が,上記の歴史授業づくりの6つの要件を観点に本書を読み進めていただく中で,今次要領が求める授業改善の実質化のためのヒントを得ていただければ幸いですし,また本書で提案する授業プランの検討を通じて実践上の課題を明確にしていただけることを願っております。


   /梅津 正美


【注】

(1) 国立教育政策研究所教育課程研究センター編『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 中学校社会』東洋館出版社,2020年,pp.8-10

(2) 同上書,p.109

著者紹介

梅津 正美(うめづ まさみ)著書を検索»

鳴門教育大学大学院学校教育研究科教授。博士(教育学)[広島大学]。広島大学大学院教育学研究科教科教育学専攻博士課程前期修了。島根県立高等学校教諭,広島大学附属福山中・高等学校教諭,鳴門教育大学大学院学校教育研究科准教授を経て,現職。主な研究領域は,社会科授業構成論,米国の歴史カリキュラム編成論など。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書
    • 具体例があるので、参考になる
      2023/3/2550代教諭
    • 単元を貫く問いを考えていく中で、非常に参考にしています。
      2022/8/720代・中学校教員
    • 新学習指導要領に基づいた授業やテスト問題、単元を貫く学習課題について考える上で、参考になった。
      2022/6/2130代・中学校教員
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