- はじめに ―音読を「指導」できるようになろう―
- 第1章 音読の意義と音読指導への提言
- 音読の意義とは
- @これまでの学習指導要領における音読の位置づけられ方
- A現行学習指導要領における音読の位置づけ
- B一般社会から見た音読の意義
- C国語科教育学の知見から見た音読の意義
- D他の学問の知見から見た音読の意義
- E音読の意義についてのまとめ
- なぜ、今「音読指導」なのか@ 「指導」しているとは言えない現状
- なぜ、今「音読指導」なのかA 誰でも取り組めて、成長が分かりやすく、達成感を得やすい
- 音読指導で伸ばしたい力@ 国語科としての教科内容的観点から
- 音読指導で伸ばしたい力A 教育内容的観点から
- 二極化する音読指導 ―積極派と消極派の間を目指す―
- 音読指導のねらいの「階層化」の提案
- 「教科書が読めない」? まずはしっかり全員にスラスラ音読を保障する
- 黙読への移行も視野に入れた音読指導を
- まずは「句読点読み」を徹底し、その後「意味句読み」へと発展させていくべし
- 「目ずらし」を積極的に指導することが音読も黙読も上達させる
- 音読指導は個別評価、個別指導が命である
- 音読指導の肝は「具体化」と「共有」である
- 音読カードに頼り切る指導は悪である
- 音読指導で一番重視すべきはスピードである
- 音読指導は物語文よりも説明文で力を入れるべし
- 音読指導の時間確保の工夫
- 第2章 学力が高まる!クラス全員で取り組める音読指導システム
- 音読時の姿勢
- 音読指導の基本的な流れは「範読」→「追い読み」→「○読み」である
- 音読指導のスタートは「範読」から
- 「追い読み」で範を示しつつやらせてみる
- 「○読み」で個別評価していく
- 音読三原則「ハキハキ」「スラスラ」「正しく」
- 三原則の段階性―まずは「ハキハキ」を―
- 「ハキハキ」の指導
- @年度初めが肝心である
- A時にはバッサリと切ることが子どもを燃えさせる
- B自分の声で「ハキハキ」を「具体化」させる
- C口を大きく開けること→息をたくさん吸って吐くこと→姿勢を正すこと
- D声の大きさは人それぞれ―「大きい」ではなく「張った声」で読ませる―
- E教師が示す
- 「スラスラ」の指導
- @「やや早め」くらいでちょうどよい
- A具体的数値を示す
- B教師が示す
- C「スラスラ」の指導のカギは「追い読み」にあり
- D「正しい区切り」とセットで指導すると「スラスラ」は加速する
- 「正しく」の指導
- @読み間違いがないようにする
- A区切りの間違いがないようにする
- B高低の間違いがないようにする
- まずは教科書をフル活用せよ
- 「句読点読み」から「意味句読み」へと発展させる
- 「意味句読み」の指導法
- 黙読移行の指導―「ハキハキ音読」から「超高速読み」「微音読」、そして「黙読」へと発展させる―
- 「暗唱」で発展させる―音読活動の「上限」を取っ払う―
- 年度初めの指導のポイント―三原則の「指導」―
- 年度中盤の指導のポイント―三原則の「確認と定着」―
- 年度後半の指導のポイント―三原則を「離れさせる」―
- 個別評価の仕方とポイント
- 音読の宿題はどうすべきか―個別評価することが何よりの「宿題チェック」である―
- 発達段階に応じた指導のポイント
- 年間音読指導スケジュール
- 第3章 必ず押さえたい音読指導技術&楽しく力がつく学習活動
- 指導技術1 追い読みは2、3文字かぶせる
- 指導技術2 「目ずらし」を指導する
- 指導技術3 個別評価の際の声かけは「厳しくも温かく」
- 指導技術4 子どもの読み間違いは見逃さず、なるべく気づかせる
- 指導技術5 個別指導のポイント
- 指導技術6 ひらがなの読み間違い、読み飛ばしの重大性を子どもに認識させる
- 指導技術7 「、」や「。」の前を優しく読ませる
- 指導技術8 音読の重要性について語る
- 指導技術9 子どもの音読をモデルにして指導する
- 学習活動 マルテン読み
- 学習活動 ○○ごと読み
- 学習活動 前向きペア読み&向かい合いペア読み
- 学習活動 どこまで聞こえるかな読み
- 学習活動 題名・作者読み
- 学習活動 たけのこ読み
- 学習活動 暗唱テスト
- 学習活動 つっかえたらダメ読み(完璧読み)
- 学習活動 音読対決
- 学習活動 1分間高速読み
- 学習活動 15秒間超高速読み
- 学習活動 黙読に繋げる微音読
- 学習活動 推理音読
- 学習活動 考えて、お手挙げ音読
- おわりに
- 引用・参考文献
はじめに
―音読を「指導」できるようになろう―
音読を一切行わない教室はありません。
音読を一度も宿題に出さない教師も恐らく一人もいません。
音読はそれだけ学校(特に小学校)で重要視されている学習です。
これは、私が小学生だった頃も、教師になった現在も同様です。小学生だったとき、私は毎日家で宿題の音読に取り組んでいましたし、教師になってからも子ども達に何の疑問もなく宿題に出してきました。
周りの先生方を見渡しても、皆さん当たり前のように音読を宿題として出しています。
この本を手に取られた読者の先生方も同様ではないでしょうか。
しかし、我々教師はそれくらい学校で重要視している音読を、子ども達に「指導」しているでしょうか。ただ「やらせているだけ」になっていないでしょうか。
音読の具体的なさせ方やポイントについて指導できているでしょうか。
クラスの子ども達は、音読に対して意欲的に取り組んでいるでしょうか。
音読が苦手な子に対して、どのような手立てをとることができているでしょうか。
そもそも、音読をここまで学校教育で重要視して行っているのはなぜなのでしょうか。教師がその意義をきちんと理解できているでしょうか。
私は、教師になってからずっと音読に対してこのような疑問を持ってきました。
思い返せば、初任者時代に音読の指導法について先輩から教わったことはありませんでした。
ですから、授業中に子どもに読ませても、「もう少し声を大きく」とか「そこは〇〇と読むよ」くらいしかアドバイスできませんでした。
そのため、クラスの子ども達が音読に意欲的に取り組むということもほとんどありませんでした。
このように、音読は学校で重要視されている反面、その指導についてはあやふやで宿題任せになっているのです。
つまり、たくさん「させて」はいても、「指導」はできていないということです。
たださせるだけでは、力がつくはずもありません。子どもも意欲的に取り組むはずがありません。
このようなことに気づいた私は、音読指導に力を入れ始めました。教師になって3年目頃のことです。
そうすると、やはり子どもは変わるのです。音読に対して飽き飽きした表情を浮かべていた子ども達が嬉々として音読活動に取り組み始めました。
学力が非常に厳しい子が音読をスラスラできるようになったことで自信をつけ、他の学習にも意欲的に取り組み始めたこともありました。
1年生を担任したときには、クラスの子ども達全員が教科書1冊丸ごと暗唱するまでに読み込んだこともありました。
「音読なんて……」とバカにしていた高学年の子ども達が教室中、学校中に響き渡るような声を出して音読に取り組むようになりました。教室が明るくなりました。
「ここ、誰か音読して」と投げかけると、ほぼ全員が「はいっ!」と立候補するようになりました。
全員がスラスラ音読できるようになっているから読解の授業では意見が止まらなくなりました。
皆文章を読み込んでいますから、市販テストなどは平均100点に近くなりました。
このように、音読指導改善の効果は無数にあります。
本書は音読を「指導」できるようになるための本です。
第1章は「理論編」です。ここでは、主に音読指導の意義についてまとめました。本腰を入れて指導を改善していくとなるとその意義をしっかり見つめ直す必要があります。あまり意義のないことに力を入れても仕方ないからです。また、私が実践を通してつかんだ音読指導に対する主張も述べています。これらをしっかり捉えていただくことで、これ以降の具体的な実践に一本の筋が通り、さらに効果的な指導ができるはずです。「理論(考え方)」をしっかりつかんでおくことで、子どもの状況に合わせて自分で実践を取捨選択したり、創ったりしていくことができます。
第2章は、「実践編」です。ここでは、理論編を踏まえた音読指導のポイントを具体的にまとめました。ただ読ませるだけか、抽象的になりがちな音読指導を具体的にしていくため、音読指導が変わっていくためのポイントをまとめてあります。全て私が実践を通しているものです。年間の時期ごとの指導方針などにも触れているので、実際に指導を構想していく際に役立つ章です。また、実際の「指導例」も入れました。音読の声は消えていく「音声言語」ですから、音読指導ではその場で即興的に指導していくことが必要とされます。そのため、具体的にどのように子ども達に話し、指導していくか、という指導例が役立つと考えたからです。すぐに音読指導を変えたいという方はこの章から読むといいかもしれません。
第3章は、「音読指導技術&学習活動編」です。ここでは、細かい指導技術や実際に教室で使える学習活動を紹介していきます。明日から使え、そして効果の高い音読の指導技術を厳選してご紹介します。
本書を活用し、先生方のクラスの子ども達が音読好きになってくれれば、こんなにうれしいことはありません。
/土居 正博
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