著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
学校現場は甘くない! 手立てと教師力の両方が必要である
追手門学院小学校講師多賀  一郎
2018/2/20 掲載

多賀 一郎たが いちろう

神戸大学附属住吉小学校を経て私立小学校に長年勤務。現在、追手門学院小学校講師。専門は国語教育。親塾など、保護者教育にも力を注いでいる。また、教師塾やセミナー等で、教師が育つ手助けをしている。絵本を通して心を育てることをライフワークとして、各地で絵本を読む活動もしている。現在小学館の『総合教育技術』にて、「教師教育の深層」を連載中。
著書として、『大学では教えてくれない 信頼される保護者対応』『クラスを育てる「作文教育」 書くことで伸びる学級力』『小学校国語科授業アシスト これであなたもマイスター!国語発問づくり10のルール』『学級担任のための「伝わる」話し方』『学級づくり・授業づくりがうまくいく!プロ教師だけが知っている50の秘訣』『ヒドゥンカリキュラム入門―学級崩壊を防ぐ見えない教育力―』(以上、明治図書)、『子どもの心をゆさぶる多賀一郎の国語の授業の作り方』『一冊の本が学級を変える―クラス全員が成長する「本の教育」の進め方』『全員を聞く子どもにする教室の作り方』『多賀一郎の荒れない教室の作り方―「5年生11月問題」を乗り越える』(以上、黎明書房)、『学校と一緒に子どもを育てる本』(小学館)。共著として、『クラスを育てるいいお話』『子どもにしみこむいいお話』『学級づくりロケットスタート』(高学年)(以上、明治図書)、『国語科授業づくりの深層』『学級づくりの深層』(以上、黎明書房)、『女性教師だからこその教育がある』(学事出版)等多数。

―前著『大学では教えてくれない 信頼される保護者対応』は、保護者対応に悩む先生方にたくさんお手に取っていただきました。今作は、満を持して、“学級づくり”です。……あれ? 教職課程のある大学でも、「学級づくり」って教えてくれないのですか?

 最近は「学級経営講座」などのカリキュラムも出てきましたが、まだまだ大学では採用試験対策が中心で、採用されてからのことまでは指導されていません。丸腰で現場に出ていくのが現状です。

―学級経営を教えている大学はまだわずかなのですね。とりわけ小学校は、4月の学級経営がすべて! とも聞きますが……。

 四月でのボタンの掛け違えがしだいに影響を及ぼして、学級がうまくいかないという姿をよく見かけます。ベテランでも崩れてしまったものを立て直すのは大変です。4月がすべてとまでは思いませんが、まずはスタートでつまずかないことが大切です。

―本書は、副題に「教師力を高める方法と心構え」とあるように、活動の意義や理念、考え方といった、これから長く働いていくための土台となる力について考えるための本になっています。多賀先生ご自身もネタを使って授業をされることもあるそうですが、あえて本書を“すぐに使える”というものにされなかったのにはどんな理由があるのでしょうか。

 ネタばかりでスタートして、途中でつぶれてしまった若手をたくさん見てきました。ネタばかりやっている先生は楽しいですが、本筋としての学びは提供できません。力量の高い先生がネタをするならよいでしょうが、ネタをしつつも自己の力量形成をしていかなければ、どこかでうまくいかなくなるでしょう。

―本のカバーには、「夢の仕事か?厳しいブラック企業か?」という、ちょっとドキッとする言葉が載っています。教師という仕事のいろいろな面をご覧になっていらっしゃる多賀先生だからこそのお言葉だと思いますが、それでも教職が「やりがいのあるすばらしい世界」と言い切れるのはなぜですか。

 僕は多くの教え子たちが共に人生を楽しんでくれます。そんな仕事は他にありません。100人教えて100人ともが慕ってくれるということはあり得ませんが、一割でも二割でも共に呑みに行けるような関係になれれば、人生はすばらしいと実感しますよ。

―最後に、この春から教壇に立つ読者の先生方に向けてメッセージをお願いします!

 この本は、僕が教師教育をやってきて見てきた若手のつまずきを基に書いています。学校は最初の三年間を乗り切ったら、とりあえずやっていけます。失敗や過ち等はたくさんあるでしょうが、それを超えるだけのやりがいもある仕事です。楽しく教師生活を送れるように、この本は手助けになればうれしいです。

(構成:林)

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