クラスを育てる「作文教育」
書くことで伸びる学級力

クラスを育てる「作文教育」書くことで伸びる学級力

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学級を育てる&個を育てる「作文教育」の全てがここに!

「作文教育」とは「作文を中心において、子どもの心を育てること」。子どもをより深く見つめ直すだけでなく、子どもたち自身が考えを深め合うことで学級を「共育」していく指導である。多数の実物資料をもとに、赤ペンの入れ方から学級通信への活用まで徹底解説!


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ISBN:
978-4-18-178430-0
ジャンル:
学級経営
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 144頁
状態:
在庫僅少
出荷:
2024年4月26日

Contents

もくじの詳細表示

プロローグ 「作文教育」とは何か
序章 なぜ「書くこと」が大切なのか
1 書くことは「個」を育てる
1 書くことは,心を耕すことだ
2 書くことは,考えを深めることだ
3 書くことは,主体的な生活を歩むことだ
4 書くことは,心を開くことだ
5 書くことは,心の記録だ
2 書くことは「学級」を育てる
1 学級通信(一枚文集)で,学級を育てる
2 保護者が学級通信を読む
第1章 書く力をつける! 作文“指導”の基礎基本
1 「書く力」とは何か
2 書く力@ スキル面から見た書く力
1 ものごとを見つめる観察力と,とらえる認識力
2 語彙力
3 文章を書き続ける力
4 構成力
5 表現力
3 書く力A メンタル面から見た書く力
1 自己開示する力
2 書く(表現する)喜び
3 何事にも興味関心を持つ力
4 これだけは押さえたい!評価のイロハ
5 一人の成長を追って
第2章 クラスを育てる作文教育 学年別・作文教育を考える
1 入門期の作文教育
1 スタートは口頭作文から
@おしゃべりな子どもに育てる
A口頭作文で育む力
2 口頭作文と作文をつなぐ
@ポイント1 名前を全部書く
Aポイント2 「 」を使う
Bポイント3 書く題材は一つずつ教える
3 作文としての厚みを増すために
4 保護者に説明をする
2 低学年の作文教育
1 低学年の子どもの実態
2 書くことの基本を確実に
@書き綴ることの喜びを体験する
Aできるだけ人間を中心に書く
B「 」を使う
C行事や季節についての考え方
D題名の工夫・書き出しの工夫
3 中学年の作文教育
1 中学年の子どもの実態
2 意欲の差への対応
@「こんな自分です」
Aウォッチング
3 書く楽しさを大切に
@「私のはずかしかった物語」
A私は,だあれ?
4 基本の二つを徹底する
@基本1 「 」を使う
A基本2 題材指導
5 書き慣れる機会を増やそう
@国語学習の中での位置づけ
A日常生活の中での位置づけ
B日記に入る前に取り立て作文指導を
6 実践例 多賀マークの作文教室
4 高学年の作文教育
1 高学年の子どもの実態―思春期へ向かう子どもたち―
2 本音を語らせる作文教育のワザ
3 阪神大震災で確かになったこと
@詩では語れない思いがある
A公にできないことがある
B本当に書きたくなったら書く
C書くことの本質を知る
D受け止めるということ
E通信でつながり合う
第3章 作文教育の要! 子どもがもっと意欲的になる赤ペン指導
1 「赤ペン」とは,なんだろう?
2 赤ペン先生になろう
3 赤ペンの意味
4 赤ペンの書き方
5 赤ペンは個とのパイプである
6 コメントしにくいときの工夫
@事例1 子ども同士のもめごと
A事例2 家族のトラブル
B事例3 先生への悪口
第4章 学級通信が大活躍!実例で見る作文教育
1 学級通信を見直そう
1 読んでもらえることがまず目標である
2 レイアウトを工夫する
@タイトル・小見出しで注意をひく
A小見出しやリード文を罫線で囲む
B段組みを工夫する
C横組みは解説文向き
Dその他の工夫
3 クラス全員の作文を掲載する工夫
2 出し続けることの意義とてだて
3 ぬくもりのある「手書き」を活用しよう
4 無理なく楽しもう
5 「ここで出す」というタイミングがある
1 子ども個人にとってのタイミング
2 保護者にとってのタイミング
3 学級にとってのタイミング
終章 作文教育の真骨頂! 教師が綴るということ
1 子どもに「書きなさい」と言えるのか
2 僕の綴ってきたこと
3 子どもたちに救われたことも,そのまま綴る
エピローグ
参考文献

プロローグ

「作文教育」とは何か

 この本は「作文指導」だけの本ではありません。「作文教育」の本です。

 では,「作文教育」とは何かと言うと,簡単に言えば「作文を中心において,子どもの心を育てること」なのです。三十二年間の教師生活において,僕は作文を子どもたちに書かせて,学級通信(一枚文集)を出し続けてきました。それがあったからこそできたことが,たくさんありました。

 作文には,子どもの思いがあります。直接訴えかけてくるときもあれば,ちらりと垣間見えるときもありますが,書かなければ分からなかったことが,たくさんありました。


 僕の教育の最大の柱は,やはり,「作文教育」でした。

 僕の考える「作文教育」とは,上手な作文を書かせるための指導のことではありません。

  @作文を通して,子どもたちを見つめる。見つめ直す。

  A作文を通して,子どもたちが考えを深める。心を育てる。

  B文集を通して,学級の「共育」が成り立っていく。

 それが,僕の考える「作文教育」です。


 僕に作文教育を続けさせたのは,教育実習のときの一つの作文でした。

 僕は,4年生四十九人という大きなクラスにつきました。実習では,全員の子どもと何か話をしようという目標を立てていました。

 ノートに四十九人の名前を書いて,何か話をしたら,そこに書き込んでいきました。機会を作っては話しかけていき,一ヶ月でほぼ全員の子どもとなんとか話ができました。

 たった一人をのぞいて。

 そのO君は,何も話してくれない子どもでした。

 給食で隣に座ったら,ともかく話しかけました。弟がいると聞いたので,弟の話題を持ち出して話しかけてみても,反応は全くありませんでした。いろいろ試みましたが,彼は一言も応えてはくれなかったのです。

 「あーあ。結局,全員と話すことはできなかったなあ」

 そう思っていました。

 実は,実習の体育の授業で子どもに無理な運動を要求して,怪我をさせてしまった僕は落ち込んでいました。担任の先生がその子を抱きかかえて連れて行くまで,僕は事故に気づいてさえいなかったのです。教師の資質が僕にはないのではないか,と思いました。

 それに加えて,他の実習生はさっと子どもたちのそばに寄っていけるのに,子どもが怖いと感じていた僕は,なかなか近づいてはいけませんでした。運動場で遊ぶときに,一緒に入れてもらうのがやっとだったのです。

 「僕は,教師には向いていないのではないか。教師はやめておこう。何か別の仕事を探そう」

 そんな気持ちで実習を終えて下宿に帰ってきました。

 独りになって,担任の先生からもらった子どもたちの作文を読みました。教育実習へ行くと,最後にいただけるものですよね。だいたいお決まりの言葉が並んでいるものです。

 「先生がいなくなると,さびしいです」

 「また,神戸市の先生になって帰ってきてください」

 そんなきれいごとの並んだ作文には,冷え切った僕の心は動きませんでした。「子どもは,こういうふうに書くものだよなあ」と,しらけた感じで読んでいました。

 そう。僕はもう,教師にはならないつもりだったのです。

 そのとき,O君の作文に目が留まりました。

 「多賀先生は,僕にいつも話しかけてくれます。給食のときにも話しかけてくれます。そんな多賀先生がいなくなるのは,とてもさびしいです。多賀先生がいなくなるのはいやだ」

 何度も読んで,何度も泣きました。下宿で,独りで。熱い思いがこみ上げてきました。

 彼は何も言わなかったけれど,僕のしていたことは,ちゃんと通じていたんですね。書かなければ,決して分からなかったこと……。

 そして,やっぱり,教師を目指そうと思ったのです。

 教師になって,子どものことが信じられなくなったとき,いつもこの作文を取り出してきて,読みました。その度に,熱い思いが沸き起こってきて,なみだがあふれ,自分を叱咤激励してくれました。今でも,この作文のことを思うと,目頭が熱くなります。子どものために精一杯やろうと思えるのです。

 この作文は,教師生活を支えた僕の宝物です。


 学級には,日々,子どもたちの思いがあふれています。でも,教師は何かてだてを持たなければ,その思いを受け止めることがなかなかできません。

 そのてだての一つが,作文なのです。

 でも,ただ作文さえ書かせていれば,それで何もかも分かってしまうというようなことでは,ありません。子どもが思いを書けるためには,精神的にも,技術的にも,必要なことがたくさんあります。

 この本には,そうしたコツや,考え方を書きました。もちろん書く技術を上げる方法も書いています。

 また,学級通信(一枚文集)を書くときには,しっかりとした教師の考え方がなければ,「作文教育」になりません。


 なぜこの作文を今,子どもたちに読んでほしいのか。

 おうちの方に何を伝えたいのか。

 そのためには,どんな通信を書けばよいのか。

 そういうことを,この本では,実践に基づいて明らかにしています。


 この本を読めば,学級通信を書いたことのない先生も,学級通信を出して学級づくりをしてみたいと思うことでしょう。今,通信を書き続けている先生は,さらにレベルアップを目指していきたくなることでしょう。


 作文には,力があります。

 国語というジャンルにとどまらない大きな力があります。その力を使わないなんて,もったいないことです。

 そして,作文を通して子どもたちとつながっていくことは,教師として生きていく大きな糧になっていくのです。


 「作文教育」を学級に,どうぞ。


   /多賀 一郎

著者紹介

多賀 一郎(たが いちろう)著書を検索»

神戸大学附属住吉小学校を経て私立小学校に長年勤務。現在,追手門学院小学校講師。専門は国語教育。

親塾など,保護者教育に力を注いでいる。また,教師塾やセミナー等で,教師が育つ手助けをしている。

絵本を通して心を育てることをライフワークとして,各地で絵本を読む活動もしている。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書
    • 作文指導をする前に読み返す。作文な励む子どもを応援する赤ペンを持つ教師として、この本から自分自身が励まされている。
      2022/1/2240代・男性
    • 作文指導を実際に行っている
      2015/10/430代・中学校教員
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