著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
タッチパネル世代には対話的な学びが必要です
早稲田中・高等学校中島 秀忠
2018/2/17 掲載
 今回は中島秀忠先生に、新刊『中学校数学サポートBOOKS 対話的な学びを促すおもしろ問題50』について伺いました。

中島 秀忠なかじま ひでただ

1979年埼玉県生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科数理科学専修修士課程修了。2005年より早稲田中・高等学校教諭。学生時代に個別指導塾で学習意欲の低い生徒を教えてきたことが契機となって、幅広い学力層に数学を楽しみながら理解してもらうことを目指すようになった。NPO和算を普及する会会員。

―まずは本書の構成とねらいについて、簡単にご紹介ください。

 最近の中学生にとってiPhoneやiPadは、物心ついた頃から普及していました。これらの端末は、幼い子でも扱える直感的な操作で、素早く知識を獲得させてくれます。それが当然の世代を、私はタッチパネル世代と呼んでいます。知識に音声や映像を伴っているのが当然なので、この世代は単なる講義型授業では惹きつけられません。これまで以上にインパクトのある、対話的な学びが必要ではないでしょうか。
 本書には、対話の巻き起こる問題を中学3年間すべての単元に渡って載せています。タブレット端末を使わなくても、“ちょい足し”することで授業がより良くなるプリント集を目指しました。

―本書では、数学の入り口として使えるものから発展事項を学べるものまで、様々な問題をご紹介いただきましたが、特にイチオシの問題はありますか?

 生徒一人ひとりの誕生日(m月d日生まれとする)を活用する問題がイチオシです。中学3年「解の公式」では始めにmやdを係数にもつ二次方程式をつくります。自分や級友のつくった方程式を解くうちに、約分済みの公式(解の公式[2])を学べる流れにしています。
 また、中学2年「確率」で「何番目に選ぶと当たりやすいか」というテーマを扱う際、教科書では2人がくじ引きを続けて引く場面が一般的です。本書では一風変わって、内容量3個のうち1つだけ超すっぱいお菓子「すっぱいガム」を題材にしています。生徒に身近なお菓子の問題であればいっそう盛り上がるでしょう。

―本書をコピーし、授業プリントとして使用する際のコツがありましたら、お教えください。

 演習プリントとして黙々と進めるのではなく、生徒にどんどん発表させてください。生徒のつぶやきも拾ってください。それを授業に上手に組み込むには先生の準備が肝要です。そこで授業展開例を全項目に渡って書きました。これは私の経験から紡いだもので、授業で予想される対話や、よくある誤答例を豊富に載せています。読むと、授業準備の大きな助けになります。さらに、扱う問題の順番も好きな順で構いません。(1)を後に回して(2)からやるとか、(1)しかやらないとか、生徒の到達度に合わせて自由にデザインしてください。

―本書は箱ひげ図など新学習指導要領の内容にも対応していますが、これからの教材研究や問題開発を考えるにあたって、どのようなことを大切にしていけばよいでしょうか?

 2017年3月に学習指導要領が改訂され、その中で「主体的・対話的で深い学び」の実現(アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善)が求められています。そのためには、対話の根幹をなす定義や公式の共有が不可欠です。アクティブ・ラーニングではそれが授業の冒頭でなされます。その後本時の課題が伝えられ、クラス全体でその課題達成に向けて進みます。
 本書の内容でアクティブ・ラーニングにそのまま使えるものもあります。その課題は、生徒が発言しやすく工夫された教材がよいですね。教員と生徒の間の対話だけでなく、生徒と生徒の間でも対話の起こりやすい問題開発が求められています。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 皆さんが中学生の頃に受けた授業を思い出してみてください。先生の雑談や、教科書から逸れて出題された問題が印象に残っていませんか。
 本書は、そのような刺激を与える発展問題や数学史の話題も扱っています。中学3年間全章に渡って書いていますので、授業が新しい章に入るたびに本書を開き、使えるネタがないかチェックするのをお勧めします。そこで生まれた対話が生徒の記憶となり、さらには生徒の自信につながると思うのです。よろしくお願いします。

(構成:赤木)
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