GIGAスクール構想で変える!1人1台端末の授業づくり
1人1台端末導入で、授業が確実に変わります。そして、仕事術も確実に変わります。具体的な実践のヒント・授業のノウハウを伝授!
1人1台端末の授業づくり(1)
失敗から考えた協働編集
香里ヌヴェール学院小学校樋口 万太郎
2021/6/20 掲載

 みなさん、こんにちは。樋口万太郎です。1年間、連載をさせてもらうことになりました。
 この連載では、拙著『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の授業づくり』、そして、7/2に発売される続編『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の授業づくり2』に掲載されていないことやもう少し付け加えて話をしたいことを中心に書いていきたいと思います。
 この連載のキーワードは、
「経験を積む」
「同じことからの脱却」
「トライ&エラー」
です。

 1回目のテーマは、「協働編集」についてです。
 本校で使用している学習支援アプリの1つに、「Google Workspace」があります。(他に、本校では「ロイロノート・スクール」を使用しています。)
 学習支援アプリにはそれぞれの特性があります。そのため、学習内容に応じて、学習支援アプリを使用していくことが大切です。
 「Google Workspace」には、協働編集することができる「ドキュメント」「スプレッドシート」「スライド」などがあります。このなかで、昨年度の学級で1番使用していたのが、「スライド」でした。
 この協働編集である「スライド」をはじめて授業に導入したときには、

  • 人が打ち込んだものを消してしまう
  • 自分が打ち込んだものを消されてしまうため、「誰が消したの!?」と言った声が聞こえてくる
  • 協働編集できるシステムに驚き、「ああああ」と意味のない文を打ってしまう
  • 「うまくいかない〜」と言った声が多く聞こえてくる

といったカオスな様子になり、見る人によっては「荒れ」ている状態になりました。
 すぐに、なぜそのようなカオスな様子になってしまったのか、理由を考えてみました。すると、

(1) 適切な準備ができていない
(2) 経験が不足している

という理由を思いつきました。
 この2つの理由から、私は上のようなカオスな様子を荒れているとは思いません。
 では、その2つの理由についてもう少し詳しく説明をしていきます。

(1)適切な準備ができていない

 1つのデータに、クラスの人数分の36枚のスライドを作りました。
 そして、それぞれのスライドに出席番号をつけました。ただ、初めて行ったときは、操作にも慣れていないため、準備もなれていないため、とても時間がかかりました。
 自分用のスライドがあるため、子どもたちには「自分たちの出席番号のところで文字を打ってみよう」と言いました。しかし、誰かがスライドを動かしてしまい順番が違うことで混乱したり、違う人のスライドに書き込みをしてしまったりしてしまいました。
 この経験から、この「クラスの人数分の36枚のスライド」「それぞれのスライドに出席番号をつける」のは適切ではない、つまり1つのデータにクラスの人数分の36枚のスライドを作ることは、多すぎることに気がつきました。
 そこで、

  1. グループごとにデータを作る
    (4人グループであれば、9つのデータを作る)
  2. 1つのデータでグループ分だけをつくる
    (4人グループであれば、1つのデータに9枚のスライドをつくる)

ということをすると、上記のようなカオスな状態はなくなりました。
 そもそもこの「スライド」は協働編集することに良さがあります。一人1枚あると、基本的には協働しません。クラスの人数分を用意する必要がないということに、私の場合は上記の経験から気づいたのです。
 言い訳をするわけではありませんが、こういった「トライ&エラー」をすることが大切です。1人1台端末に関わる授業実践は増えてきました。その実践をみて、そっくりそのまま自分の学級でも取り組んだとしても、うまくいくとは限りません。しっかりと「トライ&エラー」をすることが大切です。「トライ&エラー」をするからこそ、自分にとっての適切な使い方を見つけることができると考えています。

(2)経験が不足している

 教師も子どももスライドを使い、協働編集する経験が不足しているということです。
 私は、「経験こそ全て」だと考えています。
 1つのデータにクラスの人数分の36枚のスライドでの協働編集も経験を積んでいけば、子どもたちは有効に使えるようになったかもしれません。
 しかし、私は上の@Aの方法を選択し、子どもたちに経験を積ませていきました。
 経験を積んでいくと、教師がスライドの準備をしなくても、子ども達自身でスライドの準備をすることができるようになりました。子どもたちにはアドレスが一人ひとりあります。共有するための方法を教えれば、自分のアドレスを交換し、自分たちで「協働」するための場を作ることができます。
 教師が作るよりも自分たちで作るだけで、学びが自分ごとへの学びへと変わっていきます。

スライドにも工夫を!

 協働編集をするときには、白紙の状態のスライドではなく、最初はレイアウトを決めておきます。
 グループで1枚の新聞、チラシ、パンフレット作りといった紙の表現物を作成する活動のデジタル版だと考えてください。グループで紙の表現物1枚作るときには、それぞれの用紙で作成したものを、1枚の大きな紙に貼り付けるという工夫を行われたことがある方もいることでしょう。1枚の大きな紙にみんなで書いていくのは非効率です。しかし、スライドで行う場合は話が変わります。この話題は次回にて!
 6年理科「私たちの生活と環境」の学習では、以下のレイアウトを使用しました。

画像1

 4人グループで取り組みます。自分の考えをまとめる場所(1、2、3、4)を決め、その場所にまとめていきます。
 全員が同じテーマではなく、それぞれのテーマを決めた上で取り組んでいきます。そして、サブタイトルやまとめはグループで決めます。
 なぜ、このレイアウトを使用しているのか、詳しい話は次回説明していきます。

樋口 万太郎ひぐち まんたろう

1983年大阪府生まれ。大阪府公立小学校、大阪教育大学附属池田小学校を経て、2016年より京都教育大学附属桃山小学校教諭。「子どもが楽しむ・教師も楽しむ」「子どもに力がつくならなんでもいい!」をモットーに日々の算数授業を行っている。著書に、『子どもたちの学びが深まるシン課題づくり』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の算数授業づくり』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の授業づくり』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の授業づくり2』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の国語授業づくり 物語文編』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の国語授業づくり 説明文編』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の学級づくり』(明治図書出版)などがある。

(構成:及川)

コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • fn
    • 2021/6/21 19:53:56
    ある会で、ICTのイライラについて、お聞きしたことがあります。小学生と中学生でそのイライラが違うそうです。小学生は、うまく操作できないイライラ。中学生は、操作にもたつく先生にイライラ。ズキっと刺さります…
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