堀江式 国語授業のワザ
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堀江式 国語授業のワザ(16)
「単元を貫く言語活動」こうすれば展開できる!その1
―「ごんぎつね」(4年)をもとにしたブックトーク言語活動―
兵庫教育大学大学院教授堀江 祐爾
2013/9/5 掲載

【単元を貫く言語活動の展開】

「単元を貫く言語活動」という言葉を最近よく耳にします。実際にはどのように展開すればよいのか、具体的な授業例をもとに教えてください。

「単元を貫く核となる言語活動」と呼ぶことを提唱

 国語科における学習活動はすべて「言語活動」と言うことができます。たくさんある言語活動の中でも〈核となる〉言語活動によって単元全体を貫いていくことが重要です。したがって、「単元を貫く核となる言語活動」と呼ぶことを提唱します。

ココがポイント!

年間指導計画的な観点(単元つなぎ・学期つなぎ・学年つなぎ)を重視する

 塩江理栄子先生(赤穂市立原小学校)の「ごんぎつね」(4年)の授業実践をとおして、「単元を貫く核となる言語活動」のポイントを整理してみます。
 塩江先生は、「〈ブックトーク異学年交流活動〉を年間を通して行うことによって、読みを深め、つながろう」という【年間を貫く目あて】のもと、次のような年間指導計画を設定しました。

例

 このくらいの「粗め」の年間指導計画なら頭の中に納めておき、必要なときにはいつでも書き出すことができますね。
 「ブックトーク」という言語活動が年間全体を貫いています。「単元を貫く核となる言語活動」の理想的な姿は「複数の単元を貫く核となる言語活動によって年間を貫く」ということではないでしょうか。

効果抜群! 堀江式 大ワザ&小ワザ

ワザ1 核となる言語活動を決めるために、これまで身につけた力の振り返りとこの単元において身につけたい力の見通しを子どもとともに行う

 「言語活動先にありき」ではありません。学習指導要領に示された言語活動も、教科書の手引きに示された言語活動も、「例」にすぎません。
 その単元の学習にふさわしい言語活動を決めるためには、まず、子どもたちの現状把握が必要です。それが「これまで身につけた力の振り返りとこの単元において身につけたい力の見通しを子どもとともに行う」ということです。
 塩江先生は、第1時間目に次のようなステップを踏んで学習活動を展開しました。板書をもとに考察を行います。
例

★ステップ1 昨年度の学びとつなぐ

 この子どもたちは音楽劇「ごんぎつね」を3年生のときに行いました。すでに「ごんぎつね」に触れているということです。そのときの学習活動についての振り返りをしました。「昨年」と書いてあるのはそのためです。
 あくまで「音楽劇」であり、「ごんぎつね」テキストをしっかり読んでいるわけではないことに注意が必要です。

★ステップ2 「1学期の物語教材の学習においてどのような力をつけたか。そして(この単元において)どんな力をつけたいか。」を子どもと一緒に考える

例 「読んで考えたことを話し合う」という単元の目あて(大目標)は教科書に示されたものであり、「仮の目標」です。
 本時の目あては「どんな力をつけたいか(を考えよう)」です。
 まず、1学期に学習した物語教材である「白いぼうし」において、どのような力を身につけたかを振り返ります。「あらすじが(を)短く(書く力)」「主人公(の心情を読み取る力)」「ブックトーク(をする力)」「引用(をする力)」などが出てきました。
 次に、「一つの花」の学習においては、「四場面がいるか(を考える力)」「テーマを見つける力」「ブックトーク(として)つながりのある本(を見つける力)」「理由(を示す力)」「(表現の)工夫(をする力)」などが出されました。
 そして、いよいよ、「ごんぎつね」の学習において身につけたい力を子どもたちに考えさせます。「登場人物の行動や気持ちの変化をとらえる力」「(それを)線で表す(力)」「自分と重ねる力」などが、子どもたちから提案されました。
 1学期の「白いぼうし」「一つの花」の学習においても、同様のことを行ってきているため、子どもたちは常に「身につけたい力」を意識して学習に取り組みます。

★ステップ3 教材を読んで、不思議だなあと思ったこと、みんなと勉強したいことを、子どもから引き出す

例 これは従来の授業でも行われてきたことです。ただし、塩江実践ではここから始まっていないところがポイントです。その前に「身につけたい力」を確認しているのです。
 注目すべきは、ただの初発の感想ではなく、「どこでごんの気持ちが変わったかのか」「テーマ」「場面ごとのごんの気持ち、全体で比べてみたい」など、「身につけたい力」を踏まえた、学習活動のくだきになっているところです。つまり、「身につけた力」を子どもたちが生かそうとしているのです。

ワザ2 どのような言語活動を行うのかを子どもと共有し、学習計画を子どもとともに作る

 「身につけたい力」を明確にして終わりではありません。ではそれをどのような「学習計画」によって実現するのかについても、子どもと一緒に考えていきたいものです。
 学習計画を子どもと共有することなく、多くの授業が行われていることでしょう。いわゆる「ブラックボックス化」された授業です。どんな学習活動を行うのか、教師が指示するまでわかりません。また、その学習活動がどういう学習活動に関係し、どう展開されるのかもわかりません。
 こういう状態から脱皮することも、豊かな言語活動を展開するポイントです。
 塩江先生は、第2時間目には次のようなステップを踏みました。

★ステップ1 学習計画をランダムに出させ、それを整理する

例

 目あてとして「学習計画(をつくろう)」が提示されています。
 そして、子どもたちから学習計画の要素を引き出していきます。
 「つけたい力(を出す)」はすでに行いましたので、最初にきています。「意味調べ」は家庭学習としてすでに行っています。
 子どもたちはさらに、「登場人物の気持ちの変化」「ブックトーク(きつね、作者つながり、二さつ)」「ごんと兵十のせいかく(内面)」「自分なりのテーマ」などを出していきました。
 最後に、教師と子どもたちが話し合って、「学習計画」になるように順番を考えて番号をつけていきます。
 今回の「学習計画」において、着目したいところは、「登場人物の気持ちの変化」の横に書かれている「ごん日記」と、「自分なりのテーマ」の下に書かれている「はじめのテーマ」「自分の成長」というところです。
 この後のテキストの読み取りの際に、「ごん日記」という言語活動を行わせました。これは教科書(光村図書)の手引きに、【「ごん」になったつもりで、……場面ごとに日記を書きましょう。】という言語活動についてのヒントが示されており、その言語活動を使うことになったのです。
 「はじめのテーマ」「自分の成長」は、「はじめに自分が考えたテーマと学習の最後に考えた自分のテーマを比べる」ことによって、読みの深まりと広がりを確認することにつながっていきます。
 「学習計画」は教師が表に整え、いつでも確認できるように、大きく印字したものを教室右側の窓に貼りました。

★ステップ2 「はじめに自分が考えたテーマ」を発表させる

例 先に書いたように、学習の最後に考えた自分のテーマと比べるために、まず「はじめに自分が考えたテーマ」を発表させました。
 板書においては「はじめの自分なりのテーマ」となっています。「自分なりのテーマ」は、この単元の〈核となる言語活動〉であるブックトークにつながる重要な要素です。
 注目したいのは、「おんがえし」というテーマを出した子どもに対して、塩江先生が「そうなの?本文にそう書いてあるの?」という意味の疑問を投げかけ、ゆさぶったところです。やがて、子どもたちが本文に明示されてある「つぐない」というキーワードを見つけ出しました。
 「兵十へのあやまり」「小さなやさしさ」など、「自分なりのテーマ」が引き出されています。

 「単元を貫く核となる言語活動」を実現するためには、このように子どもに寄り添った丹念な「単元びらき」が必要です。3回連続特集の第2回目では、「単元の展開」のポイントについて考察していきます。お楽しみに!

堀江 祐爾ほりえ ゆうじ

兵庫教育大学大学院教授、元中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会国語専門部会委員、平成20年版中学校学習指導要領(国語)作成協力者、「国語教育の実践と研究をつなぐ会」世話役代表。
主な著書に『「国語力」向上の授業改革1 国語科授業再生のための5つのポイント』『小学校新国語科 言語活動の展開がよくわかるシリーズ1 書く力がぐんぐん伸びる!「言葉のワザ」活用ワーク』、などがある。最新刊『小学校国語科授業アシスト 実物資料でよくわかる!教材別ノートモデル40』が好評発売中!

(構成:林)
コメントの一覧
14件あります。
    • 1
    • かにっ子
    • 2013/9/8 17:04:48
    私の学校も「単元を貫く(核となる)言語活動」を設定して、国語の授業に取り組んでいます。けれども、今までの授業とどう違うのかや、導入の在り方など、分からないことがたくさんあり、悩みながら、みんなで研究を進めています。塩江先生の実践で、第1次をどのようにスタートさせればよいのかや、子どもたちと一緒に学習計画を立てるにはどうすれば良いかがよくわかりました。次の展開についても楽しみにしています。
    • 2
    • 国語ラボラトリー
    • 2013/9/8 23:25:50
    重要なのは、「核となる言語活動」をとおしてどのような力を身につけるか、あるいは、身につけた力を「核となる言語活動」のなかでいかに活かしていくかということでしょう。今回は、「単元びらき」として、ブックトークという言語活動に向けた子どもたちとのやりとりが示されています。学習の全体像や見通しを持つことによって、子どもたちは、自分がつかんだテーマを確かめようと「ごんぎつね」を読み深めていくのです。
    • 3
    • 島唄
    • 2013/9/9 0:06:24
    今までにどんなことばの力をつけたのかを確認する。その単元でどんな力をつけたいのかを子どもと共有し、一緒に学習計画を立てる。これらのステップをふむことによって、「単元を貫く核となる言語活動」が、ただの活動に終わらず、子ども達にたしかな力をつけ、読みも深まるということが、塩江先生の実践例からよくわかりました。特に、「ブラックボックス化しない」ことが子ども達が指示待ちにならないようにするためにも大切だと思いました。
    • 4
    • 名無しさん
    • 2013/9/11 19:19:41
    板書の画像なども豊富で、具体的でわかりやすいですね。
    • 5
    • 名無しさん
    • 2013/9/11 20:35:42
    子どもと一緒に学習計画を作るという発想に驚きました。子供にしてもこれから何をどのように学んで行くのかを知ることは学習意欲の向上につながるでしょう。さらにその計画作りに自分たちの意見が反映されるとなれば、なおさらのことです。子供を認めているということにもなるとおもいます。中心がはっきりすることでぶれない授業ができるのではないでしょうかf。
    • 6
    • keichanman
    • 2013/9/14 4:16:43
    「単元を貫く核となる言語活動を決める」とき、少し疑問を感じでいたのです。なぜなら、「話し合う」「感想文を書く」などの活動が多いからです。とくにこの10月単元は、多くの学年で「感想文」の指導をするようになっています(光村図書の場合)。読書の秋を想定しているためかもしれません。感想文の指導は、夏休み前などにしておきたいものですし、活動としては、小さくまとまった活動と言えるでしょう。そこで、教科書に示されている活動を無視して(まったく無視するわけではないのですが)子ども達とともに考えればよいということですね。ダイナミックな年間を通した言語活動を展開したらよいということ、納得がいきました。
    • 7
    • 基洋宏
    • 2013/9/23 10:57:17
    「単元を貫く言語活動」を「複数の単元を貫く核となる言語活動によって年間を貫く」ということと共に解説してくださっていることが新鮮でした。「子どもたちに、どんな力を身に付けさせなければならないのか、そのために、何をしなければいけないのか。」ということは、これまでも考えながら取組を進めてきたつもりです。しかし、各単元における教育活動が、1年間のなかでどのような位置づけにあるのかということまでは、なかなか考えられませんでした。堀江先生の論考を拝読し、そうしたことを考えながら日々の指導をすることの大切さに気付かせていただきました。「『単元を貫く言語活動』こうすれば展開できる!その2」を心待ちにしています。
    • 8
    • ロキオ
    • 2013/9/23 20:24:11
    確かに「単元を貫く核となる言語活動」と呼ぶと、たくさんある言語活動の中でも〈核となる〉言語活動によって単元全体を貫いていくことがよくわかりますね。「単元を貫く核となる言語活動」の「単元」は一つではなく、複数であるということも納得できます。だからこそ、「複数の単元を貫く核となる言語活動によって年間を貫く」ことが重要なのですね。
    • 9
    • 飛行機雲
    • 2013/9/25 18:37:29
    「学習計画を子どもとともに作る」ということ、塩江先生は本当に子どもと一緒に学習計画を作っているのですね。私の授業はまさに「ブラックボックス化」された授業です。もちろん、教師が責任をもって学習計画を立てるのですが、教師だけが作っているのが問題なのですね。子どもたちと共有できる学習計画を立てることができれば、子どもたちは自分たちが行っている学びの意味がわかり、より意欲的に授業に入り込むことでしょう。
    • 10
    • 2013/9/26 23:25:21
    「単元を貫く言語活動」を具体的にイメージすることができました。板書を示して、分かりやすく解説してくださっていることが、有り難いです。
    • 11
    • がま
    • 2013/10/30 18:29:32
    単元ごとに出口を意識した授業展開を数多く見てきましたが、こちらの実践では、「年間を通じた」視点を持ち、ブックトーク活動によって子どもたちに力をつけていこうとしています。「年間を通じた」視点で国語科の授業をしていくことが、ぜひお手本にしたいところです。教師がゴリ押しするような授業展開でなく、昨年度や、1学期、初発の感想などを「つなぎ」ながら、授業展開にしているところも見逃せません。
     学習計画を子どもたちとともに作っているところや、つないでつないで授業構成をしているところなど、本当にすごいです!次の稿が楽しみです。
    • 12
    • nekoeko
    • 2013/12/30 20:12:27
    学習計画を子どもと一緒に作るという発想に驚きました。教師主導ではなく、子どもを中心にとは考えていましたが、計画を作る際にも子どもに参加させるという発想はありませんでした。子どもにしても、学習の全体像や到達すべき所が見えているわけですから、学習意欲が湧くことでしょう。教師の側にいろんな幅広い教材研究や、先の見通しがあってこそ、子どもたちと一緒に学習計画を作ることができるのだと思います。
    • 13
    • u12025k
    • 2014/2/18 21:57:30
    学習計画を立てる上では、単元つなぎ・学期つなぎ・学年つなぎを重視することで、子どもたちの中の既習と未習とを関連付けながら学習を進めていくことができるというところに改めて重要性を感じました。その際、年間を貫くめあてを設定することが大事であり、子どもたち自身が学習面における成長を長期的な視点に立って見通せる必要があるのだと思いました。
    学習計画を子どもたちと共に考えることは、子ども自身の学びの質を高めることにもつながると感じました。教師にとっての役割は、子どもの学習目標や学習計画の内容を定めることではなく、子どもたち自身が考えた内容を整理して明確にし、提示しなおすというところにあるのだと思いました。学習計画や目標として決まった事はきちんと可視化して、いつでも確認できる場所に貼っておくことも教師ができることの一つだと思います。授業のブラックボックス化を避けるためにもこのような展開の仕方は非常に実践的で有効だと感じました。
    • 14
    • 名無しさん
    • 2014/9/4 23:54:52
    くっだらない。
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