堀江式 国語授業のワザ
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堀江式 国語授業のワザ(15)
夏休みの宿題が生きる!おススメ言語活動
―学習成果を生かしたスピーチ学習で思考力・判断力・表現力を鍛える―
兵庫教育大学大学院教授堀江 祐爾
2013/8/5 掲載

【夏休みの宿題を生かす言語活動】

夏休みに出した宿題は、一部を掲示したり、コンテストに出したりする以外は、検印を押して返すだけになっています。夏休みの宿題を生かす言語活動について教えてください。

ココがポイント!

貴重な学習成果を生かした思考力・判断力・表現力を鍛える言語活動を展開したい

例 夏休みには、小さなものを含めると、十数種類の宿題が出されることがあります。その貴重な学習成果を生かした意義のある言語活動を行いたいものです。
 「夏休み課題じまんスピーチをしよう」という言語活動例を示しましょう。兵庫県たつの市立小宅小学校の三木惠子先生による4年生での実践です。
 始業日に画像のような「夏休み課題ふり返りカード」が配布されます。「夏休み課題一らん」には、16種類もの宿題が記載されています。そして、次のような指示が与えられます。

@自分にとって「ねうちがある」、「がんばった」とおもうとりくみに◎、ふつう○、おしかった△ を(  )につけましょう。

Aこの中で「いっしょうけんめいとりくんだ」「ねうちがある」など、自分でまんぞくしている取り組みを一つ選びましょう。その取り組みに赤○をつけましょう。

Bじまんベスト1は、【   】です。その理由は、(枠に記入)

 この学習者は、【新聞記事から「私のハッピーニュース」3まい】を選択し、その理由として、「新聞から記事をきりぬいてハッピーニュースをみたのは、はじめてだからです。」ということを書いています。この理由が少し甘いため、教師から「どんな学びがあったの」という問いかけがなされています。
 自分の宿題の全体を見渡して考え(思考力)、自分にとって意味のあるものを選び(判断力)、それを選んだ理由を書く(表現力)と、思考力・判断力・表現力を鍛える言語活動となっています。

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ワザ1 文章構成メモの作成でステップを踏んだ学習活動を

 良質の言語活動にするためには、必要に応じたステップを踏んだ学習活動を準備することが重要です。「夏休みの課題じまんスピーチをしよう!No.2」プリント(文章構成メモ)には、次のような指示が書かれており、学習者がその指示にそって、思考力・判断力・表現力を発揮しながら、書き込んでいきます。

☆あなたが選んだ「課題のよさ」を説明するスピーチ原こうを書きます。
文章の構成を考えて、メモを作りましょう。

〈はじめ〉わたしが取り組んだ課題(宿題)の中で、まんぞくしているのは、
〔              〕

 ・それを選んだ理由
〔              〕

〈中〉☆作品のよさ【苦労したこと・工夫したことなど】を目に見えるように書きましょう。
・中1〔           〕
・中2〔           〕

〈終わり〉
〔              〕

例 まず、スピーチ原稿の〈はじめ〉として、「わたしが取り組んだ課題(宿題)の中で、まんぞくしているのは、」のように、どの課題(宿題)を取り上げるかを書かせ、「それを選んだ理由」も改めて書かせています。最初のプリントに書いたことが、スピーチ原稿の〈はじめ〉となるという工夫です。
 〈中〉のところが「中1」「中2」となっています。「詳しく書きなさい」と言うよりも、こうした工夫によって、自然にスピーチの内容が豊かなものになっていきます。
 また、画像にありますように、この学習者が、「お母さんはしごとだったから。」のように「理由」という項目を自分で書き加えているところも注目したいところです。〈はじめ〉において理由を書かせた効果と言うことができます。
 〈終わり〉としては、「新聞記事をきりぬいてまたやってみたいです。」と感想を書き添えています。
 さらに、原稿を書き終えて終わりではなく、

☆その課題の「よさ」を説明して、友だちからほめてもらいましょう。

と、友だちとの「伝え合い学習活動」を行わせています。友だちにほめてもらうことにより、自分のスピーチ原稿のよさを再認識することができ、自信をもってスピーチを行うことができるに違いありません。

ワザ2 ワザや工夫を書かせて学びのある言語活動に

 文章構成メモプリントをもとに、次のような指示のもと、スピーチ原稿を書き、班や全員の前で発表します。字数を指定した条件作文です。2日間、3時間ほどの扱いでのごく短い言語活動です。

☆自分がまんぞくしている課題について、スピーチ原稿を書きます。友達に「ねうちがあった」「うまくできた」「いっしょうけんめい取り組んだ」ことが伝わるように「スピーチのワザ」を工夫して書きましょう。(時間 1分間 300字ていど)

☆友達に伝えるために、どんなワザを工夫しましたか? 二つ以上書きましょう。

☆書けたらグループで伝え合いましょう。あなたのスピーチを友だちにほめてもらいましょう。

例

 注目したいのは、スピーチ原稿を書いてスピーチして終わりではないところです。画像にある通り、自分がどのような「工夫(ワザ)」を用いたのかを書かせています。「理由をきちんと書けた。」「1つ目、2つ目という表現を工夫した。」と、この言語活動を通して「身につけた言葉の力」をしっかりと振り返らせていると言えましょう。
 スピーチ原稿を書いて、スピーチをして終わりではない「活動もあり、学びもある」言語活動となっていることが重要なのです。

堀江 祐爾ほりえ ゆうじ

兵庫教育大学大学院教授、元中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会国語専門部会委員、平成20年版中学校学習指導要領(国語)作成協力者、「国語教育の実践と研究をつなぐ会」世話役代表。
主な著書に『「国語力」向上の授業改革1 国語科授業再生のための5つのポイント』『小学校新国語科 言語活動の展開がよくわかるシリーズ1 書く力がぐんぐん伸びる!「言葉のワザ」活用ワーク』、などがある。最新刊『小学校国語科授業アシスト 実物資料でよくわかる!教材別ノートモデル40』が好評発売中!

(構成:林)
コメントの一覧
15件あります。
    • 1
    • さっこ
    • 2013/8/6 19:46:01
    夏休みの宿題や作品は保護者の協力も少なからずあり、様々な工夫を凝らして作成してきます。夏休みの思い出として発表させたり作品展に展示したりしますが、それをスピーチに生かせば、再度「頑張った感」が自分にも見えて良いなあと思います。どんなワザを使ったかを書くことで、友達によりわかりやすく話そうとする意識をもつこともできます。スピーチは順番がきたから話す、ではもったいないですものね。聴き方はもちろん大切でよく指導されていることですが、相手にわかりやすく、興味をもってもらうような話し方でないと、聴いている人はつらいものです。聴き手を引きつける話しぶりは大人でも難しいものですが、子どもの頃から意識するのとしないのとでは絶対違ってくることでしょう。
    • 2
    • 国語ラボラトリー
    • 2013/8/10 9:10:34
    話す課題を選び、それを選んだ理由や作品のよさを振り返ることによって、夏休み課題による学びをメタ認知させています。グループ学習が基本となっていますので、限られた時間のなかで、すべての子どもの学びを保障することができます。さらに、「スピーチのワザ」を意識させることによって、国語科としての言葉の学びを確かなものにしています。夏休み明けに自由研究発表会などをおこなうことは多いかと思いますが、それを一つの言語活動の場としてとらえ、国語授業のワザを組み込むことによって、楽しく豊かな学習を展開することができるのですね。
    • 3
    • HIROYN
    • 2013/8/13 11:37:41
     夏休みの宿題は、子どもたちにとって力をつけるチャンスです。一生懸命取り組んだことがその後に生かされないのはもったいないことです。一か月以上ある長い期間で、時間をかけて取り組んだ宿題を意義あるものにすることは、子どもたちの力を確かなものにするとともに、学ぶ意欲を育むことにもつながり、とても重要なことだと考えます。夏休みに取り組んだことの全体を振り返り、それ対して◎や○、△をつけて自分なりに評価すること、一番頑張ったことを選び、その理由を書くことなどは、堀江先生がおっしゃるように、思考力・判断力・表現力を鍛える言語活動として効果があると思います。言語活動を工夫し、実践するチャンスは様々な処にヒントがあるということがわかりました。現場の先生方の優れた実践を参考にし、自分なりの言語活動を作っていけるようになりたいと思いました。
    • 4
    • カッパさん
    • 2013/8/14 20:28:59
    夏休みの宿題で思い出すのは、薄いけど少々面倒なワークブックです。最初は順調にやっていても半分で挫折してしまうそんな記憶があります。夏休み明けの国語では宿題の内容のテストだけでその他は解説があったりというのはありませんでした。適切なフィードバックがないとなぜ宿題をやったのか理解ができません。今回この記事を見てあえて課題を自分自身で振り返らせ、それを発表させるやり方に関心を持ちました。自分のやってきたことを思い返し、そして他の人がやったことに耳を傾けることで少なくとも2回夏休みの宿題について考えることが自然にできます。ただやらされてる宿題ではなく自分でやったんだという発想の転換ができるのでこの言語活動は非常に効果的だと感じました。
    • 5
    • タマ
    • 2013/8/15 22:29:37
    夏休みの宿題の多くは、子どもたちの頑張りに対して正当な評価の場が設けられてこなかったというのが実際だろう。「読書感想文」や「自由研究」といった活動に評価が伴うものもあるが、これらが、子どもたちが評価を望むものと合致しているとは限らないのである。よって、子どもたち自身に評価してもらいたいと思う宿題を挙げさせる「夏休み課題じまんスピーチをしよう」という活動の意義は大きい。この活動では、「夏休み課題ふり返りカード」によって、「まんぞくしている取り組みを一つ選ぶ」、そして、「理由を述べる」ことが求められており、取り組んだ宿題全てにおいて自己評価もあった。当然、評価するためには、自身の取り組みを振り返る必要があり、挙げられている通り「思考力・判断力・表現力」を鍛えることにつながるだろう。また、この活動においては同級生との褒め合いの場が設けられていたが、これによって「次も頑張ろう」と意欲の向上につながることも重要である。せっかくなので、子どもたちの頑張りを評価したいと思いながらも、その難しさを感じていたので、子どもたちの活動を通して、宿題を活かしていく今回の実践はとても参考になりました。
    • 6
    • かにっ子
    • 2013/8/19 16:27:46
    夏休みが終わると、赤ペンのインクがみるみる減っていく毎日が始まります。子どもたちが一生懸命取り組んだのだから・・・と思って、こちらも必死で丸つけをしていました。けれど、三木実践のように、まずは自分でふり返り、友達からもほめほめをもらい、そして教師からも・・・というふうにすれば、子どもたちの頑張りに見合う評価ができるのだと思います。私も、例えば読書感想文は、グループで読み合ってコメントを書き、グループの中から一人を選んでみんなの前で読んで伝え合いをするようにしています。感想文を全体の場で発表する前にグループの友達から推薦の理由を言ってもらいます。そして、自分のクラスの「感想文技」を生み出しました。一人で取り組むにはとてもしんどい内容が多い夏休みの宿題に、子どもたちが意欲的に取り組むための大切なポイントを学べました。
    • 7
    • まねっこさん
    • 2013/8/27 7:34:13
    23日の登校日に早速「まねっこ」してみました。「夏休み課題自慢スピーチ大会」をひらこうと呼びかけたのです。さっそく、原稿書きに取り組みました。子ども達の夏休み気分は、あっという間に一新。学習モードに変身となりました。これを使って、始業式の後、素日スピーチ大会をグループで行います。そのあと、グループ代表者が全体スピーチをします。
    好い授業開きになりそうです。
    • 8
    • けん
    • 2013/9/11 19:33:13
    自分が選んだことがらについて、必ず理由を書かせるというのjはとても意味のあることだと思います。理由をかくことを毎回することで習慣化して、あまり苦痛ではなくなるのではないかとおもいます。また、目に見える形という言葉が印象に残りました。国語教育だけではなく、他の教科においてもキーワードとしていつも頭のすみにおいておきたいものです。
    • 9
    • ロン
    • 2013/9/11 19:58:35
    つねに、思考力だけでなく、判断力、表現力をもつけることができるような課題になfっているのが素晴らしいと思います。また、ともだちに褒めてもらうというのがいいですね。一人ではなく、クラスで学んでいる意味があるとおもいます。自尊感情が育つことでしょう。こういう積み重ねが子どもを育くむのでしょうね。
    • 10
    • 島唄
    • 2013/9/22 22:09:44
    子ども達の「夏休みの宿題、がんばったな」という思いを昇華できるすばらしい方法だと思います。夏休みに子ども達が一生懸命に取り組んだ宿題を、教師だけが評価するのではなく、子ども自ら振り返ってしっかりと意味づけをし、さらに友だちからもほめほめコメントがもらえるところがいいです。実際に取り組んでみて、子ども達はスピーチ原稿を書く際に文章構成も考えやすそうでした。子ども達に自然に「ことばの力」をつけられるので、そういう点でも毎年取り組みたい実践です。
    • 11
    • 基洋宏
    • 2013/9/23 9:36:43
    夏休みの宿題は、ともすれば「担任が○付けをして終わり」「返却してもらったら終わり」ということになってしまいがちです。しかし、このような学習活動を展開することによって、子どもたち自身にも「やってよかった」という実感が生まれるでしょうし、次の家庭学習への意欲付けにもなると思います。普段の宿題にも、子どもたちがどれほど自覚して取り組んでいるのかという、教師への警鐘とも思われました。
    • 12
    • かこまこけい
    • 2013/9/25 22:29:12
    この実践の価値と凄さを表しているのは、ワークシートの日付!1枚目は9月1日、2・3枚目は9月2日。9月1日は2学期の始業式。この日に、価値ある学びを行っていることの凄さが理解できると、各学期の始業式・終業式に自ずと工夫された言語活動を行うことができることでしょう。でも、ほとんどの学級では連絡事項を伝えたり手紙や宿題を配ったりして、教師の訓示めいた有難いお話で締めくくる、又はゲームやお楽しみ会などして、学びの力をつけずに終わってはいないだろうか?もったいない!夏季休業を1週間ぐらい早く終えている自治体が多いと聞くが、この6日間を無駄に過ごさないようにすれば、そんな短縮をしないで済むと思う。子どもたちに年間を通して言葉の力をつけようとすると、様々な言語活動が浮かんでくるはず!
    • 13
    • がま
    • 2013/10/30 22:58:43
    夏休みの宿題ひとつとっても、国語の授業として学習ができるんだなと感じました。夏休みの課題のスピーチ原稿を書いたり、発表したりすることで、単なる事務処理的な夏休みの課題の扱いを、劇的に言葉の力を付けさせることのできる教材になることを知りました。
    素晴らしい工夫です。
    • 14
    • nekoneko
    • 2013/12/30 20:49:51
    いつも夏休みの宿題の処理には悩んでいました。自分の自慢できる宿題作品を選ばせるだけでも、判断力や分析力など、これから必要な生きていく力を育てることができるんですね。またそれは自分自身を大切にする自尊感情を育てることになり、ひいては相手をも大切にすることにつながることでしょう。そして、また2学期にこのような課題に対する互いの評価をする時間があるということがわかっていれば、課題に対しても真剣に取り組むことができると思います。
    • 15
    • u12025k
    • 2014/2/18 23:56:29
    自分の宿題の全体を見渡して考え(思考力)、自分にとって意味のあるものを選び(判断力)、それを選んだ理由を書く(表現力)という活動の機会を設定することで、先生からの承認だけでなく自分自身からの承認を得ることにもつながると思いました。
    またそこから発展させてスピーチ活動を行うことで、思考力・判断力・表現力の向上を目指すと共に、最初に書いたワークシートの内容を自分自身と対話しながらさらに掘り下げることができるという利点もあると感じました。私は、スピーチ活動を通して、クラスメートに対してどのように自分の言葉で表現していくかを試行錯誤する過程が生まれるという点に注目したいと思いました。この過程は、話し手の自己認識を深め、他者を意識しながら表現方法を探る機会になると思ったからです。
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