堀江式 国語授業のワザ
国語授業のお悩みをズバッと解決!“ワザの堀江”先生が指南する、堀江式の大ワザ&小ワザが満載!
堀江式 国語授業のワザ(12)
「つけた力」と「つけたい力」を見通そう!
―初めて本格的物語教材を扱う際のワザ―
兵庫教育大学大学院教授堀江 祐爾
2013/5/5 掲載

【見通しをもつ】

初めて本格的物語教材を扱う際、この単元の中で「身につけたい力」を見通させるためには、具体的にどのようにすればよいでしょうか。

ココがポイント!

「つけた力」と「つけたい力」の見える化で、言語活動をぶれずに展開できる

 5月になると「授業びらき」の時期が終わり、本格的な授業実践が始まります。
 その年度において、初めて本格的物語教材を扱う際に、「それまでに身につけた力」と「この単元の言語活動を通して身につけたい力」を確認しましょう。そして、その力をつけるのにふさわしい言語活動を選び、本格的な読み取りの授業に入っていくことになります。「つけた力」と「つけたい力」をしっかりと目に見える形にすることによって、「活動も学びもある」言語活動をぶれずに展開できるに違いありません。

効果抜群! 堀江式 大ワザ&小ワザ

ワザ1 既習教材の題名を示してこれまでに「身につけた力」を明確にさせる

 次に示すのは、昨年度5月に行われた授業実践のプリント例です。國京雅人先生(高砂市立伊保南(現米田)小学校)による「世界でいちばんやかましい音」(東京書籍5年上)の実践です。
例

 「今までの物語文の学習でどんな力をつけたと思いますか。ついた力を下に書いて上と結びましょう。」という指示が出され、1年生から4年生までの主な物語文の題名が示されています(この地区では一昨年度までは光村図書の教科書が採択されていました)。
 「オノマトペから登場人物の気持ちを考える力」「登場人物の行動や言葉に着目して読み深める力」「読みとった登場人物の気持ちを劇や朗読にいかす力」など、これまでに多様な力を身につけてきていることがわかります。これをいかに授業において活かすかが教師の腕の見せどころになります。

ワザ2 手引きなどを参考に、この単元で「身につけたい力」を見通させる

 さらに、次のステップでは、「この学習でどんな言葉の力をつけたいですか。手引きを見て考えましょう。」と、「世界でいちばんやかましい音」という物語教材の言語活動を通してどのような「言葉の力」を身につけたいかを書かせました。注目したいのは、「手引きを見て」というところです。
 手引きには、その単元においてつけたい力が示されていることが多いからです。

 ・物語の構成をとらえるときに考える力
 ・「いつ」「だれが」「どのようにして」「どうなったか」を探す力
 ・「設定」「展開」「山場」「結末」の部分を確かめるときに考える力

 國京先生が「授業びらき」において、「思考力・判断力・表現力」の重要性を子どもたちに伝えたことがうかがえる記述です。
 最後に書かれている【物語の構成(四つの部分)・設定→展開→山場→結末】も、東京書籍の教科書の手引きに、この単元でのポイントとして明示されています。

堀江 祐爾ほりえ ゆうじ

兵庫教育大学大学院教授、元中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会国語専門部会委員、平成20年版中学校学習指導要領(国語)作成協力者、「国語教育の実践と研究をつなぐ会」世話役代表。
主な著書に『「国語力」向上の授業改革1 国語科授業再生のための5つのポイント』『小学校新国語科 言語活動の展開がよくわかるシリーズ1 書く力がぐんぐん伸びる!「言葉のワザ」活用ワーク』、などがある。最新刊『小学校国語科授業アシスト 実物資料でよくわかる!教材別ノートモデル40』が好評発売中!

(構成:林)
コメントの一覧
10件あります。
    • 1
    • ここぱぱ
    • 2013/5/11 1:35:30
    算数は、「割り算ができた」「分数の掛け算ができた」などと子どもたち自身がどんな力がついたかが実感しやすい教科だと思います。しかし国語は算数と比べて、子どもたち自身がどんな力がついたか実感しにくい部分が大きいと思います。だからこそ、國京先生の実践にあるように「言葉の力」の欄を活用して、見通しをもたせることで、学びがぶれずに成果が目に見える形に表れるんですね。そして、子どもたちが、どんな力が身についたかが実感できるのですね。物語教材に入るので、ぜひ実践してみます!
    • 2
    • カニっ子
    • 2013/5/24 18:03:16
    私の勤務する学校では、2年生以上はどの学年も「国語教室開き」をして、前の学年でどんな学習をして、どんなことばの力をつけたかをふり返ることから始めます。けれども、國京先生のように、今まで学習した物語教材を全部示して、つけてきた力をふり返らせるところまではできていませんでした。でも、こうすることによって、今までつけてきた力を使いながら、さらに言葉の力を積み上げていくことを児童自身が自覚できるのですね。単元を貫く言語活動をしていく上でも、とても大切だと思います。
    • 3
    • 国語大好き
    • 2013/6/1 15:17:19
    物語で身につけた力一覧をあげて、大まかに振り返りをさせる。大事なことですね。これらの力を使いながら、新たに「身につけたい力」を意識させるだけでも十分主体的な取り組みを期待することができます。「つけたい力」を実現する言語活動を仕組み、単元計画やワークシートを工夫していくところが、教師の腕のみせどころですね。6月の物語単元では、「前物語単元までに身につけた言葉の力」を振り返らせたいと思います。そして、単元最後にもう一度
    ゜身につけた言葉の力」を振り返らせるのですが、ここでもはじめに書いた「身につけたい力」を使いたいと思います。
    • 4
    • 基 洋宏
    • 2013/6/5 23:24:20
    「単元を貫く言語活動」とは、実際にどのように授業を展開していくことなのかというヒントをいただいたように思います。そして、「単元を貫く言語活動」は、指導者がきちんと6学年を見通していなければ適切に身に付けさせることができないということも実感しました。ありがとうございました。
    • 5
    • 703
    • 2013/7/24 21:00:09
    おもしろい取り組みだと思いました。今までの学年での学び、つけた力を振り返らせるということは多くの先生が意識して取り組まれている事だと思いますが、今まで学習した物語を全て書き出して、一つ一つつけた力が何か書かせるという発想はなかったです。というより、教師がこのような特徴のある教材で、こんな力をつけることができるとしっかり分析するだけでなく、子ども達が「この教材(単元)でついた力はこれ」とメタ認知して書けるような指導をしてこないとなかなできることではありません。子ども達にとって、学んだことをもう一度整理し考える場があり、それを繰り返す取り組みは、今までどんな力をつけてきたか、これからどんな力をつけたいか意識するようになるものだと思いました。
    • 6
    • ホリ
    • 2013/7/27 21:58:52
     児童に「国語で身に付けた力は何だろう」と問いかけた場合、既習教材と結び付け、学んだことを考えさせるのは難しい。恥ずかしながら、「私の場合は」である。
     國京先生の授業では、既習事項をふり返り、児童が自ら身につけた力を考える。そして、本単元ではどんな力を身につけたいかを一人ひとり意識させる。國京先生は、国語をぶつ切りの授業としてではなく、つながりのある授業として考えているのである。どちらかと言えば、今まで私はぶつ切り的な授業をしてしまっていたように思う。これからは、児童の学ぶ目的を明確にし、国語科においても、スパイラル学習を意識して授業づくりを行いたい。そして、いっそう児童の学びを深めていきたいと思う。
    • 7
    • ハイライト
    • 2013/7/31 23:33:18
    国語の中で、常に意識したいことに教師が与えたことだけを学ぶのではなく、児童主体の学びを充実させたいと考えている。そのため、自分自身が国語の学習を通して学んだことが何か、何を学びたいかを児童自身がおさえるようにさせたい。そこで、ここでは「つけた力」と「つけたい力」を見通すということを国語で取り上げているのに強い関心を持った。今までの物語文をとりあげて自分自身がどんな力をつけたかを振り返っている。何年もかけて、ただ国語を学んで終わりではなく、幅広い領域で国語を学んでいるのが子ども自身実感できていると思われる。そこに、今後の自分がつけたい力を考える見通しを持つ部分があることで、つけた力の積み重ねにさらなる力が期待できるのを子ども自らで感じ、意欲を持って学習にのぞめると思われる。
    • 8
    • 2013/8/1 16:24:07
    子ども本人はいままで自分どんな力を身に付けたか明確に知らない場合も多いでしょう。自分も同じ経験がありました。先生が子どもに「それまでに身につけた力」を確認させ、自分はどのような「言葉の力」を身に付けたかについて目に見える形で、子どもの達成感を感じさせます。この達成感を子どもに感じさせることによって、これからの勉強にやる気が出ますから、積極的に勉強に取り組むことがきだいできます。それに「この単元の言語活動を通して身につけたい力」を子どもに問うと、学習の目的と目標を共有します。子どもが明確な目標を知る上で学びの自覚化をうながすことにつながります。國京先生が「授業びらき」において、「思考力・判断力・表現力」の重要性を子どもたちに伝えて、子どもの勉強意欲と関心を喚起し、みずから進んで「思考力・判断力・表現力」を身に付けようと考えるようになるでしょう。
    • 9
    • HIROYN
    • 2013/8/12 13:07:32
     「何が」「どのように」書かれているかを読みとるために、「はじめ」「中」「おわり」という組み立てを学習したり、「とくべつな言葉に着目する」ことで、重要な場面や人物の心情を読み取ったりというように、説明文や物語文を通して、学んできたことが確かにあるはずです。やってきたはずですが、それが実感としてあるかと言われるとなかなかYESとは言えないのではないかと思います。国語の授業では、学んだことが螺旋的に繰り返し用いられ、発展していくものです。やりっぱなしにせず、学んだことを使える力として身に付けさせるためには、何を学んだかを目に見える形で確認し、さらに、それをもとに付けたい力を考えることが重要であると思いました。
    • 10
    • がま
    • 2013/10/30 23:10:45
    「つけた力」と「つけたい力」という視点ですら、現場の教師たちは意識できているのかわかりません。この実践では、子どもたちに、これらの「力」を問うていることも素晴らしいと感じます。ぜひ、この「ついた力」と「つけたい力」を尋ねていく繰り返しで、「力」のつく国語の授業を実践していきたいですね。
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