堀江式 国語授業のワザ
国語授業のお悩みをズバッと解決!“ワザの堀江”先生が指南する、堀江式の大ワザ&小ワザが満載!
堀江式国語授業のワザ(9)
子どもによるミニブックトーク
―多読を生かし、より豊かに読む―
兵庫教育大学大学院教授堀江 祐爾
2013/2/5 掲載

【ブックトーク】

これまで以上に「読書指導」「多読の指導」が重視されるようになりました。「本の紹介カード」以外に、多読を生かした学習指導の方法はありますか?

ココがポイント!

ブックトークで言語活動の活性化!

 『平成20年版学習指導要領解説(国語)』に、「ブックトーク」が言語活動の一例として明示されています。

読書の範囲を広げるために、学校図書館などの施設の利用方法を学び、図書を紹介するブックトークなどの活動や読書案内、新刊紹介などを積極的に利用する態度を養うことが必要になる。

〔第3学年及び第4学年〕の「C読むこと」領域の解説((2)内容@指導事項の「カ 目的に応じた読書に関する指導事項」)より

 子どもが「ミニブックトーク」を行う学習指導も可能だということです。言語活動の活性化を図るためにも挑戦してみて下さい。

効果抜群! 堀江式 大ワザ&小ワザ

ワザ1 より豊かに読むために「子どもによるミニブックトーク」学習活動を行う

【3冊目】 最後に紹介するのは、「モチモチの木」です。登場人物は、豆太とじさまと医者さまです。
 豆太がまごで、じさまが、おじいちゃんなので、主に豆太とじさまが、出てきます。始めの豆太は、とってもおくびょうで泣きむしでした。でも、じさまがはらいたになって死んでしまうと思った時に豆太がキセキをおこします。クライマックスは豆太が変わります。じさまが真夜中にはらいたになりました。でも、まだ、豆太はおくびょうです。そして、ここから勇気を出して豆太が医者さまをよびに行きます。そして、じさまは、元気になります。でもまた、豆太はおくびょうになり、泣きむしになってしまいます。
 ここから、「心が変わる。」というテーマが分かります。テーマが、分かる本文は(教科書18ページを読む)の所です。理由は、豆太がその時に気持ちが変わって医者さまをよびにいき、じさまのはらいたを治す、手伝いをしたからです。(中略)
 ごんは、がまん強いと思います。理由は、兵十に分かってもらえるまで、くりや松たけを持っていったからです。人の心は、自分を大事にしてくれる人と出会った時に、いい方に変わることが分かりました。「ごんぎつね」で分かってもらえなくてもあきらめないで、知ってもらえるまでがんばることが分かりました。これで、心が変わるというテーマのミニブックトークを終わります。

 これは4年生による「ごんぎつね3冊つなぎミニブックトーク」原稿の一部です(兵庫県たつの市立小宅小学校三木惠子教諭の指導によるもの)。この子どもは教材「ごんぎつね」と絵本「100万回生きたねこ」、そして既習教材「モチモチの木」をつなぎ、「心が変わる」というテーマのミニブックトーク原稿を書き、発表しました。「人の心は、自分を大事にしてくれる人と出会った時に、いい方に変わることが分かりました。」という表現がみごとです。ミニブックトークによって中心教材「ごんぎつね」をより豊かに読んでいることがよく分かります。

ワザ2 単元をつなぎながら【簡易→練習→本格】とステップを踏んで展開する

 三木教諭は、1学期の「白いぼうし」では【簡易ブックトーク(1作品紹介)】を行い、夏休みをはさみ、2学期には【練習ミニブックトーク1】として「白いぼうし+1作品紹介ミニブックトーク」に取り組ませました。また、「一つの花」については、「テーマのもとで2作品をつなぐ」【練習ミニブックトーク2】を実施。そして、「ごんぎつね」について、「テーマのもとで3作品以上をつなぐ」【本格ミニブックトーク】へと展開しました。こうした単元をつないだステップを踏むことにより、豊かなミニブックトーク学習活動を行うことができます。

堀江 祐爾ほりえ ゆうじ

兵庫教育大学大学院教授、元中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会国語専門部会委員、平成20年版中学校学習指導要領(国語)作成協力者、「国語教育の実践と研究をつなぐ会」世話役代表。
主な著書に『「国語力」向上の授業改革1 国語科授業再生のための5つのポイント』『小学校新国語科 言語活動の展開がよくわかるシリーズ1 書く力がぐんぐん伸びる!「言葉のワザ」活用ワーク』、などがある。最新刊『小学校国語科授業アシスト 実物資料でよくわかる!教材別ノートモデル40』が好評発売中!

(構成:林)
コメントの一覧
10件あります。
    • 1
    • がま
    • 2013/2/5 23:57:10
    この教育実践から、ブックトークを行うことで子どもたちが読みを深めている様子がわかった。
    ブックトークが言語活動の一例で示されているということは、多読指導をより力を入れて取り組まないといけない表れだろう。ブックトークを年間通じて取り組んでおられる一端を見た。ブックトークを行うに当たって、原稿を書かせないといけない。ブックトーク原稿にはほんと本をつなぐテーマを盛り込みたいが、教科書教材を入れるとき、読みとり段階でテーマを見つけるように指導していく必要がある。ということは、教師のはっきりとした計画性と教材研究が大事だ。その上で、言語活動に必要な手立てを講じて行くとよいと感じた。
    • 2
    • 島唄
    • 2013/2/8 0:20:53
    ブックトークは、多くの点ですばらしさがあると思います。1作品の紹介から始まって徐々に他の作品をつないでいくので、段階的に難易度を上げられる点。話す、聞く、書く、読むの全ての領域で子どもを育てられる点。テーマを読みとったり、5W1Hをおさえながらあらすじを書いたりするので、子どもにしっかりと力をつけられる点。多読につながる点。どの学年でも取り組める点。三木先生のブックトークは、本当にすごい言語活動だと思います。
    • 3
    • keichan
    • 2013/2/9 17:34:39
    ブックトークは,図書館司書がするものと思っておられる方が多いのではないでしょうか。1年生でもブックトーク(正しくは、お話紹介活動)は、できると思います。1学期から読み聞かせを行い、朝の学習時間に読んだ(見た?)本について、自由帳を使って好きな挿絵や文章、言葉などを書くようにしていきます。それをスピーチさせ、「本のおもしろさをよむためのコツ」としてまとめていくのです。二学期には、たくさんのコツが生まれています。それを使いながら、本の紹介スピーチを繰り返します。三学期は、「たぬきの糸車」で読み取ったテーマで三冊つなぎの「昔話のおもしろさをつたえあおう」ブックトークへと進めていきます。年間を見通した「言語活動」として、ブックトークは、子どもにすべての力をつけることができる言語活動だと思います。みなさん、取り組んでみませんか。
    • 4
    • このはずく
    • 2013/2/12 11:16:20
    ブックトークというと、教材文の他にも本を何冊も読まなければできない言語活動であると思っていた。とことが、三木実践においては、既習教材である「モチモチの木」をつなぎ、ブックトークを行っている。子どもたちへの負担を考慮した工夫であると感じた。また、既習教材のテーマについて改めて考えることにつながり、既習教材をも豊かに読むことができる言語活動となっている。
    • 5
    • かすみまる子
    • 2013/2/17 15:27:01
    三木実践のブックトークがすばらしいのは、ただたくさん本を紹介するだけでなく、同じテーマの本を紹介することで、「ごんぎつね」をより深く読めていることだと思います。また、3年生で学習した「モチモチの木」についても、再読し、3年生の時より、一歩読みを深めていると思います。
    私のクラスでは、「大造じいさんとガン」でブックトークをしました。他の動物物語を読む中で、もう一度「大造じいさんとガン」に返り、「あきらめない心」としていたテーマを「ライバルの大切さ」というテーマに変えた子がいました。多読、比べながら読むということの大切さを改めて感じました。
    • 6
    • 幸子
    • 2013/7/23 22:06:33
    ブックトークは、子どもの「表現力」、「伝え合う力」、「思考力」「、評価力」「想像力」「創造力」などいろいろな力を身につけることができる言語活動だと思います。残念ながら、私の学生時代はブックトークの体験はなかったです。三木先生のブックトークの活動は子供に多読の習慣を付けさせると同時に日本の伝統的な言語文化と国語の特質への理解も深めることができると思います。ブックトークの活動を通して、中心教材「ごんぎつね」をより豊かに読んでいるだけではなく、子供の学校生活がよりよく豊かになり、子供たちの間の交流も深まりますし、読書の楽しさも味わうことができ、読書の意欲も高めます。これからの教育ではブックトークの活動を積極的に取り組んでいくべきだと思います。
    • 7
    • 703
    • 2013/7/24 21:54:39
    三木先生の「テーマのもとで3作品以上をつなぐ」の3作品以上というところがすごいと思いました。同じテーマに焦点をあてながら、本をたくさん読む機会を与えるとこともでき、複数のストーリーの中にある同じようなテーマを探る中で、本から生きていく中でのものの見方、考え方も学ぶこともできるよい学習の場だと思いました。きっと読み手によって、受け止めが違いテーマも変わったと思います。それを聞き手も「そういう見方もあるな」と自分とは違う価値観や考え方にも触れることができるよい学びの場だとも思います。そして、それが「ごんぎつね」をより多面的に、より豊かに読むことに繋がっていくというのは一石二鳥以上の効果があると思いました。
    • 8
    • D.T
    • 2013/7/25 3:52:47
    「ブックトーク」の活動において、子どもたちは複数の本を比較して読み、共通したテーマに絞って文章を構成することが求められていると思います。その際、子ども達は何についてどのように表現するかを念頭に置きながら学習活動に取り組まなければなりません。多読とは量ではなく質であり、何も一度に多くの文章を読むことに特化したものではなく、一つの作品を十分に吟味し、内容理解を行ったうえで他の作品と関連付ける活動であると考えます。さらに、「ブックトーク」を行うにあたり、文章を推敲し、読み手を意識してわかりやすく伝える工夫を子ども達自身で行う必要があります。また、活動をやりっ放しで片付けるのではなく、教師は子どもが相互評価を行い、課題意識を持たせるなどの機会を設ける必要があると思います。
    • 9
    • 2013/8/1 15:27:13
    多読を生かした学習指導の方法として、ブックトークという言語活動が有意義だと思います。「子どもによるミニブックトーク」学習活動を通し、内容や要旨をとらえながら読む能力を身に付けさせるとともに、読書を通して考えを広げたり深めたりしようとする態度を育てることにつながるのでしょう。この過程のなかで、子どもの言語感覚や思考力、想像力を養うことができます。
    三木先生は「本格ミニブックトーク」という言語活動を行うために、【簡易→練習→本格】とステップを踏んで展開することはこれからの指導活動において本当にいいヒントになります。いきなりブックトークを行うことではなく、簡単な言語活動から難しさをアップしていくことはより効果的な指導がなされるでしょう。
    • 10
    • カッパさん
    • 2013/8/15 0:24:06
    読書指導に興味があります。ただ多読を勧めるだけでは限界があると思っていました。とにかく読めというのは無理がありますし、それで読んだ本はただの強制でしかありません。強制で読んだ本はただ読んだだけであり、内容も深くは覚えていないものです。そこで本のつながりを考えて違う本を読んでみようと思わせることは多読を促すのに非常に効果的な方法だと思いました。自ら読んだ本のつながりを紹介し合うことでもしかしたら自分の読んだ本と他の生徒が読んだ本がつながるかもしれません。そこから新たなつながりも見えてきます。派生して派生して考える力は国語で養っていくべき力だと感じました。国語を基盤にすることで他教科の教育につながると思いますし、国語の力は大きいなと感じています。
コメントの受付は終了しました。