堀江式 国語授業のワザ
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堀江式 国語授業のワザ(6)
説明文教材の基本的な扱い方をマスターしよう
―「筆者」という概念を活用する―
兵庫教育大学大学院教授堀江 祐爾
2012/11/5 掲載

【説明文教材】

 説明文教材を教える際、例えば「すがたをかえる大豆」(光村3下)であれば、“大豆”のひみつを読み取らせるのか、それとも段落構成図作成や要約をさせるのか、いつも迷ってしまいます。

ココがポイント!

〈内容・題材〉か〈形式・構成〉かという問題

 説明文の学習指導には、〈内容・題材〉か〈形式・構成〉かという問題が常につきまといます。“大豆”などの〈内容・題材〉は子どもたちの「興味・関心・驚き・思い」を引き出します。ただし、学習指導が〈内容・題材〉だけにかたよった場合、理科や社会科の授業になってしまうでしょう。国語科の学習指導であるからには、〈形式・構成〉の指導が不可欠です。ただし〈形式・構成〉だけの学習指導にかたよった場合、段落分けや要約などの形式的操作に終始してしまい、子どもたちの興味や関心を無視したものになってしまいます。

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ワザ1 子どもたち自身が〈筆者〉になったつもりで読む

 この問題を解決するために、〈筆者〉という概念を導入して説明文を読んでいこうというのが、今の説明文の学習指導の基本となっています。筆者がどのように〈内容・題材〉を選び、それにふさわしい〈形式・構成〉を用いたかを考えさせていくのです。ワークシート例(豊岡市立高橋小学校の西垣惠子学級において生み出されたもの)をご覧下さい。【あなたが、せつ明文を書くために、文章のこう成と、表現(ひょうげん)のくふうを次の表に整理(せいり)してみましょう。】というめあてが示されています。二段目に注目しましょう。「問い→答え」「魚の説明」のように、教材から学んだ書き方の工夫を、自分で書き込んでいます。こうした工夫を意識して、〈筆者〉として「すがたをかえる魚」を書いています。〈筆者〉になって読み、〈筆者〉になって書くということの一例です。

例

ワザ2 さらに、〈筆者〉になって書く言語活動へ

 このように〈筆者〉という概念を持ち込むことによって、子どもたち自身が〈筆者〉になるという言語活動が展開できます。「すがたをかえる大豆」の後に、「食べ物のひみつを教えます」という教材が置かれているのは、子どもが〈筆者〉になるという意味をもった言語活動を提示したととらえることができます。

堀江 祐爾ほりえ ゆうじ

兵庫教育大学大学院教授、元中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会国語専門部会委員、平成20年版中学校学習指導要領(国語)作成協力者、「国語教育の実践と研究をつなぐ会」世話役代表。
主な著書に『「国語力」向上の授業改革1 国語科授業再生のための5つのポイント』『小学校新国語科 言語活動の展開がよくわかるシリーズ1 書く力がぐんぐん伸びる!「言葉のワザ」活用ワーク』、などがある。最新刊『小学校国語科授業アシスト 実物資料でよくわかる!教材別ノートモデル40』が好評発売中!

(構成:林)
コメントの一覧
9件あります。
    • 1
    • 島唄
    • 2012/11/5 23:58:34
    〈筆者〉という概念を導入することにより、内容・題材と形式・構成のどちらにも目くばせをしながら説明文を学習できることがなるほどと思いました。子どもたちが興味・関心・驚き・思いを失わずに文章構成や表現の工夫を学ぶためには、ただ読み取りをするだけではなく、〈筆者になる〉という言語活動が必要になる。そのことが、西垣惠子先生の「姿をかえる魚」のワークシート例を見るとよくわかりました。
    • 2
    • 筒井筒
    • 2012/11/6 14:35:27
    〈筆者〉を想定し、筆者が用いた文章構成と表現の工夫に着目させることによって、筆者の論理を読み取る学習です。西垣惠子先生の問いは、「あなたが、せつ明文を書くために」と、次の「食べ物のひみつを教えます」という言語活動をとのつながりが示されたものとなっており、言語活動が単元を貫いていることが分かります。また、活用を図る学習活動が、習得を図る学習活動を内包した実践でもあります。
    • 3
    • はまっち
    • 2012/11/7 17:51:55
    子どもたちは、「〜になったつもり」という活動が大好きです。ここで、「筆者になったつもり」という活動を取り入れることで、子どもたちが興味関心をもち、主体的に学習に取り組めると感じました。子どもたちが筆者になったつもりで「読む」中で見つけた文章の表現や構成の工夫を、自分が「書く」中で使っており、まさに習得→活用が自然とできていると思いました。ぜひ授業に取り入れてみたいです。
    • 4
    • けいちゃんまん
    • 2012/11/10 10:49:03
    文学は、「読者論」で読む。説明文は、「筆者になって書く(読む)」とういうことですね。筆者の書きぶりの工夫を読み取り、それを使って書くわけですから、「筆者になって書く」活動にすればいいのですね。子どもは、自が主役になったとき、生き生きと目を輝かせ、取り組みます。一年生は、今「じどう車ずかん」を作っていますが、筆者になって、ぐんぐん書いています。書けた図鑑のページを振り返って、「しごと」「つくり」の順序やその関係を表す「そのために」を正しく使えているか筆者になって校正する予定です。
    • 5
    • 国語ラボラトリー
    • 2012/11/24 11:35:18
    筆者になったつもりで読むことの意義は、その説明文を相対化することであろう。大豆についての説明といっても、さまざまな表現が可能であり、「すがたをかえる大豆」も、その筆者によってなされた一つの説明である。説明文を相対化することによって、表現のくふうや言葉の使い方を意識するところに、国語科の学びが存在する。
    • 6
    • カニっ子
    • 2012/12/5 17:48:29
    光村図書における2学期の説明文教材は、全て「書くこと」につなげられるように設定されていますね。説明文の内容を読み取るためにだけ読むのではなく、自分が筆者になって「説明文を書く」ために読むのですね。私も、昨年度「すがたをかえる食べ物図鑑を作ろう」という言語活動に取り組みました。「筆者の使っている技を見つけて、それを使って書けばいいよ。」というと、子どもたちは、気持ちも楽になり、とても楽しく学習していました。「世界に一つしかない図鑑」ができました。
    • 7
    • ホリ
    • 2013/7/30 16:03:14
     説明文は、内容だけでなく、形式•構成も読んでいかなければならない。さらに、子ども興味•関心を忘れてはならない。そのように、堀江先生が言われていて最もだと思いました。昔、「ありの行列」や「すがたをかえる大豆」という単元で、あり博士、大豆博士を作ってはいないかと言われたことも思い出しました。
     それでは、説明文ではどのような指導をすればいいのか。今回はその答えを教えてもらったような気がします。「筆者」という概念を取り入れ、内容•題材、形式•構成を考えていく。まずは、筆者を外から見て考える。そして、内に入る作業、つまり、筆者になる。この流れも自然で、児童の意欲も増すのではないでしょうか。これからは、「内容•題材」、「形式•構成」がいいあんばいでの説明文の授業になるよう努めたいと思います。
    • 8
    • a violet
    • 2013/9/28 12:42:15
    「単元を貫く言語活動」の学習指導例を示していただいていて、ありがたいです。ワークシートも、カラーで掲載してくださっているので、自分の授業づくりのイメージをもつことができます。「堀江式国語授業のワザ」では、いつも現場の教師がなすべきことを、具体的に教えてくださっているので、毎回楽しみに拝読しております。「堀江式」のファンで、バックナンバーも、何度も読み返しています。
    • 9
    • がま
    • 2013/10/30 23:28:20
    なるほど〜、と思います。<筆者>の概念は、やや抽象的ですが、書かれていることの空を見つけて、その工夫を自分の文章にいかすことなんだなと、ワークシートからわかります。教材文にどっぷり入り込むのではなく、やや外から教材文をながめるようにして読むということでしょうか。説明文教材の基本的な扱い方が分かりました。
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