堀江式 国語授業のワザ
国語授業のお悩みをズバッと解決!“ワザの堀江”先生が指南する、堀江式の大ワザ&小ワザが満載!
堀江式 国語授業のワザ(13)
「ノート・チェンジ」で授業を変えよう!
―子ども同士の伝え合いが要のノートチェックのワザ―
兵庫教育大学大学院教授堀江 祐爾
2013/6/5 掲載

【ノートチェックの改善】

ほぼ毎日、全員の国語ノートを集め、花マルをつけたり、言葉を添えたりしていますが、子どもたちの力を伸ばすことにつながっているのか不安です。ノートチェックの改善アイディアを教えて下さい。

ココがポイント!

ノートチェックは日本の教師の伝統ワザ

 毎日、国語ノートをチェックしているということ。立派だと思います。
 ノートをチェックするというのは、日本の教師の伝統ワザと言ってもよいものです。特に、いわゆる「綴(つづ)り方教師」たちは、こうしたノートチェックを大切にしました。
 次に示すノートは、兵庫県のある小学校教師のものです。
例 兵庫県は「綴り方教育」が盛んだったところですので、作文指導、日記指導、ノート指導が伝統的に熱心に行われています。
 ただ、残念なのは、このノートに添えられた花マルも傍線も、すべて教師が書き込んだものというところです。丹念にノートを読んでいるということは子どもに伝わりますが、線が多すぎて教師がどこをほめてあげようとしているのかが、子どもに伝わりにくくなっています。

効果抜群! 堀江式 大ワザ&小ワザ

ワザ1 子ども同士でノートを共有・伝え合う「ノート・チェンジ」

 ある研究会において、前述の教師がノートを示した時、ベテラン教師たちが上に書いたようなノートチェックの問題点を指摘し、そして改善方法も伝えました。
 それは「私も以前は同じようにしていたわ。だけど、今は教師だけがかかえこまないで、子ども同士に伝え合いをさせるようにしているの。そうすればもっと豊かなノートになるわよ」というものでした。
 そうしたアドバイスをもらったこの教師はすぐに実行に移しました。「ノート・チェンジ(ノート交換)」という数分ほどの伝え合いの時間を国語の授業の中で何度も行うことにしたのです。
 下に示したのが、教材『海の命』の「ノート・チェンジ」の成果です。右ページ右上には「自分のちえ」「すごいなあ」「太一の気持ちを考えてしっかりかけている。すごい」という伝え合った友だちの書き込みが見られます。「太一の思いを考えられていてすごい。太一のそのときに思ったことを深く考えているのがすごい」が右ページの左側の記述。「すごいな」「このような表をかくことで太一の気持ちがよく分かる。すごい」は左ページの最初の書き込み。「太一はクエをおとうと重ね合わせた。だから、もっとそのクエと一緒にいたい。おとうのところにいきたいと思ったんじゃないかと思いました。失敗をしないように/じまんしなかったおとうを見習う→夢をかなえる」は、左ページ下段の真ん中の記述。「クエの気持ち太一の気持ちを書けていてクエの気持ち太一の気持ちがすごく分かりやすいです。文の中から自分の意見をきっちり表せている」、これは最後の「ノート・チェンジ」での書き込みです。「ノート・チェンジ」をすることで、子ども同士の意見交流も活発になり、なにより教師が一人でノートをかかえこむという状況がなくなります。

例

ワザ2 伝え合いによって子どもたちの発言を高めていく

 実は、右ページ冒頭の花マルと傍線、左ページ右端の「すばらしい。よく考えていますね」は、「ノート・チェンジ」を行う前に教師によって書き込まれていました。この教師は子どもたちの意見のすばらしさに驚き、それを活用して、「〇〇さんが書いているように、先生も……のところがすばらしいと思います」のように教師としての書き込みを行うようになりました。もちろん、授業中の「ノート・チェンジ」も続けています。何より、授業が変わりました。子どもたちがこのような伝え合いによって、互いに何を考えているかを理解し、子どもたちの発言がつながり、発言の質がどんどん高まっていったのです。
 このようにノートチェックを変えることが、授業改善にもつながっていくのですね。

堀江 祐爾ほりえ ゆうじ

兵庫教育大学大学院教授、元中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会国語専門部会委員、平成20年版中学校学習指導要領(国語)作成協力者、「国語教育の実践と研究をつなぐ会」世話役代表。
主な著書に『「国語力」向上の授業改革1 国語科授業再生のための5つのポイント』『小学校新国語科 言語活動の展開がよくわかるシリーズ1 書く力がぐんぐん伸びる!「言葉のワザ」活用ワーク』、などがある。最新刊『小学校国語科授業アシスト 実物資料でよくわかる!教材別ノートモデル40』が好評発売中!

(構成:林)
コメントの一覧
18件あります。
    • 1
    • がま
    • 2013/6/6 23:29:18
    ノートチェンジは、最初はかなり勇気がいることだと感じます。しかし、いざやってみると、子どもたちは喜んで友だちのノートを見ていることに気が付きます。そして、内容面もしっかり読んで、ノートの記述に対するコメントを残しています。複数人の目を通して褒めて認めてもらうことで、子どもたちはさらに意欲的に頑張りを見せます。子どもたち自身が、ノートチェンジにより他者の考えを知ることができるのは、学習がしんどい子にとっても有効であると思います。
    • 2
    • 基 洋宏
    • 2013/6/7 0:05:10
    ノートを通した伝え合いは、友達が考えていることを、じっくりと自分の考えと重ね合わせながら考えることができますね。堀江先生が示してくださっている児童もは、何度も友達のノートを読み返して返信していることがうかがえます。こうしたことを積み重ねることは、学級づくりにもつながるように思います。ありがとうございました。
    • 3
    • かこまこけい
    • 2013/6/8 0:14:33
    年度末のそれも6年生の3学期、それまでの指導方法をがらりと「チェンジ」した先生とついていった子どもたちに大きな拍手を送ります。それまでに積み重ねてこられた指導があるからこそ「チェンジ」できたことだと思います。しかし、長年行ってきた指導方法を変えることは
    なかなかできることではありません。他の先生方のアドバイスを受け止め柔軟に答えられた姿勢こそ尊いなと思います。教師は、人の意見や考えを聞こうとしないと言われますから。友だちのノート内容を真剣に読み、コメントを書き込みながら伝え合いを重ねていく子どもたちには、思考力・判断力・表現力がつき多くの学びの力を身につけていくことでしょう。日々の日記ノートにもコメントを書き伝え合いをしていくことも大切ですね。日記も、教師と子どもとの往復書簡にしないで、学びの日記に高めていく言語活動を行う必要性を痛感します。
    • 4
    • 国語ラボラトリー
    • 2013/6/8 19:44:54
    友だちのノートからの学びをフィードバックする力が重要なのでしょうね。
    その力を育む場としてのノートチェンジでもあると思います。
    • 5
    • 国語大好き
    • 2013/6/9 19:26:35
    「ノートチェンジ」簡単にできる伝え合いですね。友達の考えをしっかりと読み、考えを書くことは、「教科書を読む」以上にたくさんの文字言語に触れることになりますね。「読むこと」「書くこと」に加えて、即、その場で考えを書く判断力もつけることができますね。
    「書くこと」とセットで常に指導していくようにすれば、いいかもしれません。
    ベテラン教師でありながら、自分の指導法を「チェンジ」された先生に大きな拍手を送ります。柔軟な教師でありたいですね。
    • 6
    • 島唄
    • 2013/6/9 22:42:01
    教師一人だけでなく、多くの友だちにも読んでもらえるのなら、書きたいという気持ちもさらに高まると思います。また、身近にいる友だちの書いた文章に触れ、参考にし、コメントを書くことにより、「読む力」「書く力」も高まっていきます。「伝え合い」は「話す、聞く」だけではないということが、今回の「ノート・チェンジ」の実践からよく分かり、勉強になりました。
    • 7
    • 名無しさん
    • 2013/6/10 2:23:02
    私は音楽専科です。国語ではありませんが、鑑賞の時間に「ノートチェンジ」をしてみたいと思います。
    • 8
    • 幸子
    • 2013/7/23 18:50:11
    授業を聞きながらノートを取りますが、ノートをテェックされたことは一度もなかったです。日本では「ほぼ毎日、全員の国語ノートを集め、花マルをつけたり、言葉を添えたりしている」ことは初めて知りました。しかも「子ども同士でノートを共有・伝え合う「ノート・チェンジ」」と言う技まで工夫なさって、本当に敬服の極まりです。自分が取ったノートを多くの友だちに読んでもらえるのだから、きれいに書きたいと思いますね。この技はノートを取るいい動機づけになると思います。クラスメートのノートを真面目に読み、コメントを書き込むことを通して伝え合う力、思考力・判断力・表現力を身につけることもできますので、この技は一石多鳥な指導術だと思います。
    • 9
    • 703
    • 2013/7/24 20:07:40
    数年前、一人一人の考えや疑問が授業に生かせるように、一人学びのノートを毎時間チェックして、線を引き、花丸をつけ、振り返りにはコメントを書き・・・それが各教科分ありノート地獄に日々が数年続けていました。子どもはノートが返ってくるのを楽しみにしていました。しかし、よく見ていると、自分の書いたことに対して先生がどれぐらい花丸を付けてくれたかチッェックして、内容にあまり目を向けていない様子でした。そんな時、授業と同じようにノートも子ども同士が繋がり合えたらいいんじゃないかと私もノート交換を授業の中で取り入れました。この方法は、驚くほど効果的でした。友だちのコメントに対して子ども達は真剣に考え、触発され、新たな考えを生み出していく子もいました。書くことが嫌いだった子も、友だちのノートを見てこんな風に書いたらいいんだとイメージでき、書き手も友だちの考えに対して自分の考えを書くよいきっかけになったようでした。一番嬉しかったのは、休み時間に「私の考えどう思う?」と自発的にノート交流を子ども達が始めたことでした。この「ノート・チェンジ」は子どもだけでなく、教師の視点も変わるとても良い技であると思います。
    • 10
    • さっこ
    • 2013/7/24 21:50:01
    ノートに一人学びをさせ、私がチェックし、それをもとに全体の学びの時間に生かせるよう、取り組んできました。一人学びの発表会にならないよう、一人学びは主に自分の考えをまとめる、整理するために使ってきました。一人で教材に向き合い、それを全体の場に広め、そして友達の意見を聴いて自分の考えを深められるよう取り組んできましたが、なかなか全体では意見が言えない子、その場ですぐに思いつかない子もいます。グループでそのノートをもとに話し合い、その後、その話し合いについての感想や考えを書いてはいましたが、友達とのノート交換は友達の考えも残り、後からも読み直すことができ、もう一度自分の考えをまとめ直すこともできます。低学年では時間配分など難しいところもありますが、どの学年でも是非チャレンジしていきたいと思います。
    • 11
    • D.T
    • 2013/7/25 0:57:54
    教師によるノートチェックにおいて、花丸や傍線の数・コメントの質が子どもたちにとっての評価基準であり、学習意欲の向上につながるものであると考えていました。しかし、教師からの一方向的な評価では、子どもたちはその評価基準に一喜一憂するに留まる可能性も考えられます。「ノート・チェンジ」という技法により、子どもたち同士による相互評価が可能となるだけでなく、相手がどこをどのように評価してくれているのかを理解し、次回以降の課題への取り組みに反映させることができると思います。さらに、評価した子どもは、相手のノートに書かれている優れた表現や多様な視点に触れる事で、自身の表現に還元することができます。そして、この相互評価は、子どもたちが自身の思考力や表現力をより豊かなものへと向上させることにもつながります。このような点で、「ノート・チェンジ」は国語科の授業において画期的かつ効率的な技法であると思います。
    • 12
    • ホリ
    • 2013/7/27 21:57:43
     ノート・チェックに問題を抱えていた教師の1人である。・・・抱えている問題が非常に多い。話はそれますが、堀江先生の紹介するワザは、私の問題や悩みを軽くしてくれる。
     それでは、話を戻す。私の場合、毎日ではないが、ノート・チェックをしていた。目的は、児童が授業で何を感じたか、考えたか。授業のねらいが達成できたかなどを確認するためである。方法は、今回の例のように花丸を添えたり、傍線を引いたり、コメント書いたりした。しかし、児童は傍線やコメントを意識していたのかは疑問である。
     そう考えた時、私にとって今回の方法は興味深いものであった。児童は友達に見せるのも好き、書いてもらうのも好きな子が多い。さらに、友達の考えを知り、自分の考えを深めることもできる。しかし、注意すべき点もある。自分の考えを書くのが苦手な児童もいることだ。その児童への配慮、全員が書くことのできるような支援が必要になる。その点を考慮し、機会を見つけ、ノート・チェンジを試したいと思う。
    • 13
    • k.s
    • 2013/8/1 11:26:40
    ノートは45分間という短い授業時間に教師が把握できなかった子供たちの考えや思いや理解度等を教師がしっかりとつかみ次の学習に生かすためのものだと思います。しかし、教師に時間的な余裕がないためにしっかりとコメントを書くことができなかったり○や赤線のみになってしまったりするために子供たちの学習意欲を高めることが十分にできないことがあります。また、教師が点検したノートを何日もたってから返すことになってしまいノートを返却した頃には学習内容を忘れてしまっているということもあります。しかし、子供たち同士でノートを交換してコメントを書くことは教師とは違った視点でその子供への評価をすることになり教師の気づかなかったその子供の良さや考えを見つけることができるためよいアイデアだと思いました。また、何日もたってからノートを返されるよりも短時間で評価を目にすることができるため子供たちの意欲・関心を高めたり子供自身が間違えにすぐに気づいたりすることができるのでよい方法だと思いました。しかし、中にはノートを他の子供に見られることを嫌がる児童、生徒もいますので配慮も必要であると感じました。
    • 14
    • ハイライト
    • 2013/8/4 21:59:15
    ノートを書かした後のチェックは、いつも線ひっぱり丸をつけるという形をとっていましたが、ここに書かれているように「線が多すぎて教師がどこをほめてあげようとしているのかが、子どもに伝わりにくくなっている。」とあるような点は、まさしくその通りだなあと自分自身にも置き換えて考えてみることが出来ました。そこで、ここにある「ノート・チェンジ(ノートの交換)」という方法は使えると思いました。まず何でも教師が点検するだけではなく、子ども同士でノートを見合うという方法から、友だちの文章を子ども自身が読むことで自分にはなかった考え方、とらえ方を目の当たりにできること。その友達の書きっぷりの良さをちゃんとどこが良かったかを評価した書き方をする。これらのことが発表時にも役立つというのはなるほどと思った。
    • 15
    • flaba
    • 2013/8/9 16:17:36
    ノートチェックそのものが日本の教師の伝統ワザであったこと、兵庫県で綴り方教育が盛んだったことを私は知りませんでした。兵庫県の教員を志望している自分にとって、ノートチェックがいかに大切なものかを知ることができて良かったです。
     「ノート・チェンジ」について私が関心をおぼえたのは、その場だけでなく、中・長期的に続いていく子どもたち同士、あるいは子どもと教師の関係を上手く利用したワザであるという点です。4月には気付くことができなかった友人の良い点を3月には気付けるようになる、教師1人では見付けることができないであろう子どもの良い点を他の子どものコメントのおかげで見付けることができる。年間を通して関係を深めていく、共に成長していくきっかけとして、とてもいいワザだと思います。写真のノート例からも、あたたかい学級の雰囲気が伝わってくるような気がします。
    • 16
    • タマ
    • 2013/8/14 22:55:38
    従来のノートチェックでは、チェックする教師の負担の大きさだけが際立っており、生徒自身が振り返り、課題を見つけ、成長するといった適切な効果が十分には得られなかったことが実際だろう。「ノートチェンジ」の実践はノートチェックにおける問題を解決してくれる。教師とは異なり、同級生という自らと同じ立場にあるものからの意見は、自らの意見の価値を裏付け、また自らが気付かなかった意見や考えに気づくきっかけになることだろう。チェックする生徒にとっても同様の効果が考えられ、気づかなかったことに気づき成長につながっていく。「ノートチェンジ」は子ども同士の相互的な高め合いを可能にした優れた実践なのである。この活動による利点は子どもの間だけのものではない。子どもの視点による気づきは、教師だけでは気づくことが出来なかった子どもの良い点に気づくことにつながり、教師が行う評価にも活きてくるのである。「ノートチェンジ」という発想は私自身の中になかったが、多くの利点がみられる活動だと思うので、子どもたちの成長を促すうえでも行っていかなければいけないと感じた。
    • 17
    • カッパさん
    • 2013/8/14 23:17:01
    ノート提出の意味を考えたとき思ったことは教師が子どもたちはちゃんと授業を聞いているかな、集中しているかなをはかるためだと思っていました。しかしそれは先生と生徒の二者関係だけで終わってしまうことです。案外他の生徒のノートを見る機会はなく、どのように書いているのかは書いた本人とチェックした先生にしかわからないのは非常にもったいないことであります。今回この記事にはノートチェンジというやり方を見ておもしろそうだと感じました。他の生徒が先生のコメントを見て、自分とは違うところを見つけることは非常に大切なことです。自分の考えを声に出して伝えるだけでなく、自分の文字を見てもらうことで丁寧に書こうという気持ちも起きるのではないかとも思いました。
    • 18
    • ねこねこ
    • 2013/9/11 20:16:03
    教師が労力をかければいいというものでもないのですね。授業中のノートチェンジというのは意外でした。こんな手があったのですね。目からウロコです。自分でも知らないうちに〜しなければならないというような思い込みに陥っていたように思います。もっと柔軟に考えていきたいものです。子どもが互いに認め合うことのできるクラスをめざしたいと思います。保護者にもコメントを書いてうただけるように工夫してみます。
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