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【単元を貫く言語活動の展開】
単元の展開のポイント
―実際の展開を、具体的な授業例をもとに教えてください。
前回(その1)のまとめ
「単元を貫く核となる言語活動」と呼ぶことを提唱
「年間指導計画的な観点(単元つなぎ・学期つなぎ・学年つなぎ)を重視する」ことをポイントとして掲げ、さらに次のようなワザの重要性について考察しました。
ワザ1 核となる言語活動を決めるために、これまで身につけた力の振り返りとこの単元において身につけたい力の見通しを子どもとともに行う
ワザ2 どのような言語活動を行うのかを子どもと共有し、学習計画を子どもとともに作る
今回は「単元の展開」に焦点を当て、引き続き塩江理栄子先生(赤穂市立原小学校)の「ごんぎつね」(4年)の授業実践を通して、「単元を貫く核となる言語活動」のポイントについて考察します。
ココがポイント!
授業改善=常に文章全体と関係づけながら場面と場面とを関係づけていく
「ごんぎつね」の読み取りの指導にあたり、塩江先生は、【学習指導要領に、「場面ごとに読み取らせる」という指導事項はない】ということに気づきました。〔第3学年及び第4学年〕における「C 読むこと」領域の指導事項ウ「場面の移り変わりに注意しながら、登場人物の性格や気持ちの変化、情景などについて、叙述を基に想像して読むこと」のように、「場面の移り変わり」という文言はあります。したがって、「従来の場面ごとの読み取り」ではなく場面と場面とを関係づけていくことが、より重要であると考えました。言い換えると、常に文章全体と関係づけながら、場面の読み取りを行うことがポイントとなります。
「単元を貫く核となる言語活動」を重視する目的は授業改善です。従来の「場面ごとの読み取り」ではない展開を、塩江先生はさぐっていきました。
第3時目には、上の様に挿絵を活用しながら、場面分けをしました。「1」〜「6」の数字が場面番号です。黒板の右上には「場面分け」の際の観点として、1.時間 2.登場人物 3.場所が示されています。
後に詳述しますが、単なる「場面分け」ではなく、「設定―展開―山場―結末」という物語の構造をつかむ枠組が使われています。
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ワザ3 最初の時間から最後の時間まで核となる言語活動を意識し続ける
例えば第7時目の板書には、「きつね、作者、テーマつながりブックトークをしよう」という【大目あて(単元めあて)】が書かれています。年間を貫く「ブックトーク言語活動」を示したものです。塩江実践においては、(読み取りが始まった)最初の時間から最後の時間まで、この【大目あて】が示されます。
そして、板書の目あてのところに書かれている「『ごん日記』から、ごんと兵十の気持ちの変化をとらえよう」は、本時の目あて(【小目あて】)です。
この2つの役割を整理すると次のようになります。
★【大目あて】=「単元を貫く核となる言語活動」を示したもの
→単元を通して示される
★【小目あて】=本時の目あて
→「単元を貫く核となる言語活動」を実現する学習活動を示す
「最初の時間から最後の時間まで核となる言語活動を意識し続ける」ということは、「単元を貫く核となる言語活動」を実現するための基本です。
★ステップ1 特別な配慮が必要な子どもへの心配りを含む【大目あて】となるように工夫する
ブックトークは本来「テーマ」によって複数の本(作品)をつないでいくものですが、「テーマ」によってつなぐことが難しい子どもは「きつね」つながり、「作者」つながりという方法を用いてもよいという、特別な配慮が必要な子どもへきめ細かな心配りがなされています。
★ステップ2 常に文章全体と関係づけながら、場面と場面とを関係づけていくように工夫する
先に述べたように、「常に文章全体と関係づけながら、場面と場面とを関係づけていく」ことを行うために、挿絵を示したり、次のような「設定―展開―山場―結末」という物語の構造をつかむ枠組を使ったりしています。さらに、板書には「ひとり言・行動・情景描写」という「ごんぎつね」という教材にふさわしい着眼点が示されています。
設定=物語にかかわる「時」「場」「人物」「5W1H」などについて説明している部分
展開=出来事が山場に向かって展開していく部分
山場=大きな変化が起こる物語の中で最も重要な部分。中心人物の気持ちや考え方の変化するところ
結末=「山場」で大きな変化が起こった後のことがえがかれている部分
ただ読むだけでなく、どのような観点によって読めばよいのかということを明示するという工夫がみごとと言えましょう。
紙幅の都合のため、全時間の展開を示すことができないのが残念ですが、「常に文章全体と関係づけながら、場面と場面を関係づけていく」ことのヒントになれば幸いです。
ワザ4 【大目あて】の言語活動と【小目あて】の言語活動をしっかり関係づける
【「ごん日記」から、ごんと兵十の気持ちの変化をとらえよう】という【小目あて】には、この単元において用いられる「ごん日記」という言語活動が示されています。さらに注目したいのは、何のために「ごん日記」を書くのかという意味がわかるように工夫されているところです。「ごんと兵十の気持ちの変化をとらえる」ために、ごんになりきって「ごん日記」を書くということです。
「ごん日記」の例を示しましょう。上は第1場面についての「ごん日記」です。本文にある「もずの声がキンキンひびいている。(本文では「ひびいていました。」)」の後に、「ひさしぶりの晴れの日だ。」という本文にはない記述をつけ加えています。
本文にある「川べりのすすきやはぎのかぶは、黄色くにごった水にもまれていた。(本文そのままではない)」の後に、「二、三日の雨のせいだと、私にはすぐ分かった。」とごんの気持ちを表す表現がつけ加えられています。
こうした「ごん日記」は、「単元をつないで年間を貫く核となる言語活動」であるブックトーク言語活動を行う際に必要となる、伝えたいことの根拠となる叙述をしっかりと「引用」する力を鍛えていることになると言えましょう。
最後の場面の「ごん日記」には、「兵十は、ぼくがくりや松たけをもっていったことを気づいてくれた。よかったぁ。/やっぱりつぐないをつづけてよかった…」と、自分なりのテーマを含む記述がみられます。
★ステップ1 一人一人の読みを重視するオープンエンドの活用
塩江先生は、第11時目には、「はじめのテーマと今日のテーマとをくらべよう」という【小目あて】を掲げました。(この連載のその1に示した)初日において板書にまとめた「はじめのテーマ」と11時目の日のテーマとを比較させます。
注目したいのは、「気づいてくれて、本当にうれしかった」という肯定的なテーマを読み取っている子どもが多い一方で、中には「つぐないをしているのに、分かっているのか、分かっていないのか分からない」という異なった読みを出している子どももいるところです。
塩江先生は、伝え合いの時間を十分に取り、どちらの立場もあり得ることを確認しました。
一つに集約するのではなく、一人一人の読みを重視する、いわゆるオープンエンドの状態によって、単元をいったん終えたのです。
★ステップ2 年間を貫く核となる言語活動の展開―単元「ごんぎつね」は終わらない―
ここで「ごんぎつね」の単元はいったん終わりますが、実際には学習は終わりません。「もぐる」という感じでしょうか。やがて、3月に「年間を貫く核となる言語活動」である「ブックトーク」言語活動として「復活」します。さあ、どういうふうに「復活」するのでしょうか。
3回連続特集の第3回目では、「単元おさめ」のポイントについて考察していきます。お楽しみに!
※教科書は平成24年版・光村図書『国語 四下 はばたき』を使用しています。
さらに、各単元の文章を読んで感じ取ることや考えることは子ども一人ひとり異なることを十分に理解し、それぞれの読みを重視するためにオープンエンドの状態で単元を終えるという方法も視野に入れておく必要があると感じました。
まだ、ありませんか?ありましたら、教えてください。
いま、ごんぎつねのこと、書いています。
また、よろしくお願いします。
長すぎて、わかんないです。