著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
自分らしく自分で考えながらをスタートに
北海道公立学校教諭宇野 弘恵 ほか
2023/2/3 掲載
  • 著者インタビュー
  • 教師力・仕事術
 今回は新刊『教職の愉しみ方 授業の愉しみ方』について、著者でいらっしゃる宇野弘恵先生、堀 裕嗣先生に伺いました。

宇野 弘恵うの ひろえ

 1969年、北海道生まれ。北海道公立小学校教諭。2000年頃より、民間教育サークル等の学習会に参加。登壇を重ねている。思想信条にとらわれず、今日的課題や現場に必要なこと、教師人生を豊かにすることを学んできた。
 主な著書に、『伝え方で180度変わる!未来志向の「ことばがけ」』『タイプ別でよくわかる! 高学年女子 困った時の指導法60』『学級を最高のチームにする! 365日の集団づくり 2年』『スペシャリスト直伝! 小1担任の指導の極意』(以上、明治図書)などがある。

堀 裕嗣ほり ひろつぐ

 1966年、北海道湧別町生まれ。北海道教育大学札幌校・岩見沢校修士課程国語教育専修修了。1991年札幌市中学校教員として採用。1992年「研究集団ことのは」設立。
 主な著書に、『個別最適な学びを実現するAL授業10の原理・100の原則』『ミドルリーダーが身につけたい教師の先輩力10の原理・100の原則』『必ず成功する「学級開き」 魔法の90日間システム』『教師力ピラミッド 毎日の仕事を劇的に変える40の鉄則』(以上、明治図書)などがある。

―今回は宇野先生と堀先生の共著により、「教師という仕事の魅力」についておまとめいただいております。教職の在り方に悩む若手の先生に、教職を志望する学生の皆さんに、先生がまず伝えたいことは何でしょうか。

(宇野)若いときの感覚や思いを大事にしてください。失敗や評価ばかりを恐れず、変な自信を持たず、素で感じる感動や興味・関心を大事にしてください。そして、その感情の正体は何だろう?と、ベクトルを自分の内側に向けてください。そうした営みの連続が、「自分らしい教師」「自分にしかできない実践」につながると思います。

(堀)いきなり若い皆さんを萎えさせてしまうかもしれませんが、残念ながら教職を滞りなくこなしていくための「手っ取り早い方法」などない、ということでしょうか(笑)。何事もそうですが、経験と思考を積み重ねていく以外にないということですね。

―先生にとって、教師という仕事で充実感を感じられるのはどのような時ですか。

(宇野)心身共に成長の著しい子どもの人生の一時期に関われることが、この仕事の一番の魅力だと思っています。一人の人間の人生に関わるからこそ、慎重に、まじめに、よりよく、全力でと思います。同時に、楽しく、笑顔で、大胆にとも思います。

(堀)子どもたちの中には、その後、長い付き合いになっていく子たちが少なからず現れるということですね。しかも、彼ら彼女らはさまざまな仕事に就き、さまざまな経験をしますから、僕らにとっても学ぶべきことが多く出てきます。また、そうした卒業生に話を聞いていると、彼らを受け持っていたころの自分を反省させられることもしばしばです。人間にとって一番の幸せは「自らの成長実感」を感じ続けられることですから、教職は間違いなくそのサイクルをもっていますね。

―教職を愉しむポイントの一つとして、まず「肩の力を抜く」ことの大切さについて、述べられています。「教師・教室の余裕」とも言いかえられていますが、特に新任の先生、若い先生方には難しい部分もあるのかもしれません。若い先生方やこれから教職を目指される方に、アドバイスがありましたらお願い致します。

(宇野)「うまくやろう」「失敗しないようにしよう」という守りの姿勢ではなく、興味関心を抱いたことはどんどんやってみることだと思います。やってみてうまくいかなくてまたやってみて……ということを経験していくうちに、実践のコツや自分の方向性が見えてきます。そうすると、少しずつ肩の力は抜けていくものです。

(堀)教職に就いてから、仕事に追われるのではなく、仕事を追いかけるスタンスにいかに早く入れるか、ということがポイントだと感じています。もちろん教職だけでなく、すべての仕事がそうなのでしょうが。

―「授業づくりを愉しむ」の章では、「仕事志向」ではなく「実践志向」に、と述べられています。大好きな教材の授業に情熱をかけ、それがライフワークに近くなることについて触れられていますが、その姿勢はどのように生まれ、他の教材の授業にどのように活かされるでしょうか

(宇野)本にも書きましたが、私は本当にダメな新人でしたから、家庭訪問の際に教師である保護者に「もっと勉強しなきゃ」と教えられたのがきっかけです。以来、校内のいろんな先生方に授業を見せてもらい、教えてもらいに行きました。また、先輩の先生方に「教わるだけではなく自らの実践を問われなければ成長しない」と言われ、年に数回自主的に校内で授業公開していました。どの教科についても「これでよし」とせず「これでよいか」と自分に問い続ける姿勢でいるのは、初任校での経験が大きいと思います。

(堀)なんでもそうですが、夢中になれるものをもっている人は、夢中になれないものに対してもそれなりの対応法というものを身につけられるものです。逆に、夢中になれるものをもっていない人はすべてにおいて「こなす」という姿勢になります。好きな教材に夢中になる経験をもつと、その勘所と言いますか、その感覚が身につきます。良いサイクルが生まれるわけですね。

―「教材研究を愉しむ」においては、それぞれのこだわりや経験をもとに、自分流にしていくことについて述べられています。先生ご自身の教材研究について、その方法を教えて下さい。。

(宇野)「答えは自分で見つけ出す」というスタンスでいることです。 間違いたくないという気持ちや誰かに認められたいという思いがあると、自分で考えることをせず「正解」を探してしまいます。先行実践を寄せ集めて形を整えれば見栄えもよく、大きな間違いはないのかもしれません。しかしそれは借り物の授業であって、自分自身の授業ではありません。自分が自分として自分らしく在ることが、授業をする上でも最も自由で最も喜びを感じるのだと思います。

(堀)僕はかなり時間も労力もかけていますから、なかなか皆さんの参考になるようなことはないかもしれません。ただ、一つだけ強調しておきたいのは、「自分の頭で考えること」をスタートにすることですね。安易に他の情報に頼るのでなく、自分の頭で考えたものがある程度固まってから初めて他者の情報にあたる。そのスタンスさえもてば、成長のスピードが上がります。一見遠回りのように見えて、実はこれが一番効率的です。

―最後に読者の先生方へ、メッセージをお願い致します。

(宇野)「若さ」は武器にも枷にもなります。若いからと遠慮せず、自分の意見をもって仕事ができる環境に自らを置くことが必要。若さ故の無鉄砲さで突き進まず、周りの先輩たちに教えを乞う謙虚さも必要。「自分で考える」「自分だけで考えない」の両方をもつことを意識してみてはいかがでしょうか。

(堀)自分の得意なことは何なのか、自分の苦手なことは何なのか、それを早めに自覚する。そして得意なことは楽しみながら伸ばす。苦手なことは効率的に取り組む。その先に「教職を愉しむ」というスタンスがやってきます。まずは自己分析からスタートですね。

(構成:及川)

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