- 著者インタビュー
「敬意」をもって人と接することです。これは「教師―子ども」「子ども―子ども」でも同じです。相手に対する「敬意」があれば、しっかりと相手の話を聴き、お互いを尊重し合うことができます。「敬意」なき所に豊かな関係も生まれません。一人の人間として誠実につき合うこと。当たり前のことかもしれませんが、常に自分に問いかけ、大切にしている心です。
多くありますが、一つ挙げるとすれば「子ども理解」の部分においてです。ICTのもつ「保存性」によって、教師による子どもの記録や子どもの表現したものの記録が本当にやりやすくなったと感じています。
子どもと同様、私自身常に端末(iPadmini)を持ち歩き、子どもの様子をメモしたり写真を撮ったり、ことあるごとに子どもの記録をとるようにしています。また、学習支援アプリ(本校ではロイロノート・スクール)内には、毎日綴る子どもの言葉が蓄積されていきます。蓄積された子どもの言葉を味わいながら読み返すことも容易になりました。
長岡文雄(1975)は『子どもをとらえる構え』の中で「子どもをさぐる」という表現を使っています。正に、子どもをさぐることがしやすくなったと感じています。
「『つまずき』を生かす視点」「共に歩み続ける視点」が重要です。
例えば、導入期における子どもの「つまずき」は、そもそも「使い方が分からない」というスキル的なつまずきが挙げられます。この「つまずき」を解消するには、とにかく端末を使ってあれこれと試してみる時間を十分にとることが必要です。その時に、次の2つのことを徹底します。
●困ったら人に訊く
●困っている人がいたら助ける
基本、教師は教えません。困っている子がいれば子ども同士で教え合います。必ず起こるスキル的な「つまずき」は、関わり合いを通して、自分たちで解決できるようにします。
また、使用になれてくると生徒指導上の問題が必ず出てきます。例えば、ゲームアプリで遊ぶ、学習に関係のないYouTube動画をこっそり見る等、様々です。ここですぐに禁止や抑制に走るかどうかで、「つまずき」を今後に活かせるかどうかが大きく変わります。まずは、「想定内」と捉え、余裕をもって対応することが重要です。問題が起こったときに、子どもたちにその問題を返し、一つ一つ考える機会にします。
このような経験を繰り返すことで、子どもたちの規範意識やメディアリテラシーを育てることにもつながります。トラブルに対する対処法も学んでいきます。子どもが本当に大切なことは何かを学びとる大切な時間にしたいものです。「ピンチはチャンス!」の心をもつことが重要です。
教師が今までの授業の「当たり前」を問い直すことです。例えば「板書」、「ノート」、「発問」など…。1人1台端末の実現によって授業の「あり方」が大きく変わります。「本当にこれは必要なのか」「この意味は何なのか」など、今までやってきたことを再確認することが重要です。そうすることで、そのものの本質が見え、授業の中で本当にICTを使う必要があるのか、どこでどう使うべきなのかが見えてくるようになります。「ICTを使うこと」が目的ではありません。ICTを使って、いかに授業を豊かにし、いかにその教科の本質に向かえるかどうかが大切です。
中でも特に、子どもの考えを端末上で瞬時に提示できる「共有化」と、子どもの学びの履歴を積み上げられる「保存化」が、子ども達の学習を支えるポイントとなるでしょう。
私は「人にとって豊かさとは何か?」という「問い」を常にもちながら教育活動を行っています。ですから、学級づくりにおいては、「共に豊かにくらす」ということをテーマにしています。これは教室内のことだけでなく、子ども達の日々の生活、さらには子どもたちのこれからの人生においても同じです。豊かな人生を切り開いていくために必要な力を子ども達が身につけてほしいと願っています。
本書の「はじめに」の冒頭でも述べていますが、学級経営について語ることの難しさを感じています。学級経営はどうしても経験則によるものが多くなり、客観性が乏しくなる分野だと感じているからです。何年教師をしていても、毎年もがき、悩み、立ち往生を続けています。
学級経営の実践は、そもそも「挑戦」だと考えています。ここにきて、よりよい教育効果を促す「GIGA」が急速に進んできました。今「挑戦」せずしていつするのか、と思います。
若手の方々は、ぜひ色々と「挑戦」して実践してみてください。実践して火傷することもあります。私は大火傷を何度もくり返してきました。もちろん今も同じです。ただ、「やらなければわかならいこと」「やらなければ得られないこと」が多々あることも事実です。「まずはやってみる」。そこからがスタートだと感じています。
反省的実践を繰り返し、共に子どもたちとのくらしを豊かにしていきましょう!