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計算には、暗算でできることが求められる20までの加減・かけ算九九・それを使った逆九九わり算と、これらを組み合わせてする筆算があります。暗算でのつまずきは、覚えられない、正答は出せるが遅い、早いが間違いが多いなどです。筆算でのつまずきは、計算手順を覚えられない、計算式を筆算で書く場所や途中計算の答えを書く場所がずれる、計算する数がずれるなどです。筆算ではつまずきのタイプが多様です。答えの正誤だけを見るのではなく、どこで間違えたのかを見極める目が必要になってきます。
本書では、「計算」学習のスタートである「20までの加減」に焦点をあてています。計算の学習の前に計算に使う数そのものについての認識が大切になります。読み書きのスタートでは「文字」⇔「読み」の対応ができるようになることから始まります。数では「数字(文字)」⇔「数詞(読み)」に加えて「数量」の対応も大切です。「200円」を見て「にひゃくえん」と読むだけでなく、「○○のお菓子が買える」「△△のお菓子は買えない」「□□のお菓子は3個ほど買えそう」というような量のイメージも同時にしてほしいのです。計算でつまずきやすい子は、このイメージができにくい子が多いようです。
かけ算九九でつまずく子の中には、読み書きでつまずく子がいます。文字の読みでつまずくように、「8×4」を「はっし」と読めないため「はちいちがはち、はちにじゅうろく……」と最初から九九を唱えるのです。その子たちには、九九の読みを式に書き換える練習も効果があります。また、視覚が得意な場合は従来の九九を唱える聴覚を使う練習よりも、計算カードを見て覚えるなど認知特性に合わせた支援も効果があります。筆算では、手順を箇条書きにする、筆順を色分けして覚えるように数字に色や矢印をつけるなど手順を視覚化する支援が効果的です。
計算のスタートでつまずく子の支援のポイントは大きく二つあります。
一つ目は、数の量的イメージを持たせることです。「7はうさぎさん」と言っている子がいました。5の塊の顔から二本の耳が出てきたイメージです。このようなメルヘンチックなイメージも良いのですが、後々の大きな数でも対応できるように本書では数の量的イメージとしてブロック図を使いました。
20までの加減程度の計算であれば数え足し、数え引きでもできますが、ここでは数操作によって計算できるようにします。数操作手順を教えるときに子どもの認知特性に合わせるという支援が子どもの計算力を伸ばす上では大切です。
火星までロケットを飛ばすとき、どっちの方向にどれぐらいの速さで打ち上げるのか。ロケット本体のそれぞれの部品のサイズはなどなど膨大な計算が必要です。この膨大な計算ができるのも「火星にロケットを飛ばす」という目的があるからです。モクモクと計算をするよりも「計算をして暗号を解く」というような計算の目的があるものや色塗りなどの活動があるプリントに人気がありますね。また、答え合わせをして初めて正誤がわかるよりも、自分で間違いに気づくようなプリントもいいですね。
まず、子どもを見てください。どこをどのようにつまずいているのかを知り、その原因を見極めます。それからその子に合ったワークを選んでください。子どもを見るときに「これぐらいならわかるだろう」と過大評価をしないでください。思いがけないところでつまずくことがあります。「わかる」ではなく「確実にできる」になるまで繰り返しゆっくり進めてください。子どものレベルに合ったワークを選ぶことは子どもの自尊感情を高めることにもなります。「急がば回れ」です。
苦手さのある子の周りの子は、先生以上にその子が困っていることに気づいています。先生の配慮しながら指導に取り組んでいる姿を見て周りの子も多くのことを学ぶことでしょう。
今の学校は大変忙しいです。自分一人ですべて抱え込まないで、本書などのリソースを上手に使って効率的・効果的な支援をしてください。先生の心身の健康が大切です。無理をしないでくださいね。
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