著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
学習指導要領の趣旨を踏まえた「社会科授業づくり」の必読書
総合初等教育研究所北 俊夫
2018/5/31 掲載
 今回は北 俊夫先生に、新刊『社会科授業サポートBOOKS 小学校社会科「重点単元」授業モデル』について伺いました。

北 俊夫きた としお

福井県に生まれる。
東京都公立小学校教員、東京都教育委員会指導主事、文部省(現文部科学省)初等中等教育局教科調査官、岐阜大学教授、国士舘大学教授を経て、現在、総合初等教育研究所参与。
主な著書に、『「思考力・判断力・表現力」を鍛える新社会科の指導と評価』
『“知識の構造図”を生かす問題解決的な授業づくり』『社会科学力をつくる“知識の構造図”』(明治図書)などがある。
シリーズ書籍『小学校社会科「新内容・新教材」指導アイデア』も好評発売中。

―本書は、3月刊行の『小学校社会科「新内容・新教材」指導アイデア』の姉妹本として、平成29年版学習指導要領「社会」で示された「重点単元」の授業モデルをおまとめいただいた書籍ですが、まずこの書籍の読み方について教えてください。

 本書は、平成29年版学習指導要領(社会科)の内容を解説したもので、二つの章から構成されています。1章では、社会科の新しい学習指導要領について理解するために25の課題を設定して解説しています。2章では、各学年に新設された単元や教材に焦点を当てて、小単元の指導計画や本時の学習指導案を一つのモデルとして紹介しています。まずは1章に目をとおし、次に2章の関心のある学年の指導計画などを読む方法が考えられます。また、姉妹書である『小学校社会科「新内容・新教材」指導アイデア』と合わせてご活用いただきたいと思います。

―1章では、「学習指導要領を読み解くQ&A」と題して、「市の様子に重点を置くのはなぜか」「政治に関する内容の順序が変わったのはなぜか」「社会的な見方・考え方を授業でどのように扱うか」など、現場の先生方からの疑問にお答えいただいています。公表されている学習指導要領の『解説』は繰り返さない、と書かれているように、一味違う、かなり具体的な解説になっていますが、改訂を読み解き、生かすポイントは何でしょうか。

 1章の「学習指導要領を読み解くQ&A」では、実践に当たって押さえておきたい事項を「Q&A」の形式で解説しています。ここでは、文部科学省の『解説』では触れられていない、改訂の背景や指導方法などにも触れながら、実践に当たって押さえておきたい事項を中心に述べています。『解説』と併用して読み解くことを想定しています。

―2章では、各学年の「重点単元」について、「見方・考え方」「主体的・対話的で深い学び」の視点からの指導計画と板書例を含めた具体的な授業モデルについて詳しく解説されています。子どもたちに確かな知識をつけていくには、どのような取り組みが求められてくるでしょうか。

 学習指導要領に関する社会科の解説本で、単元ごとに「知識の構造図」を紹介しているのは本書だけだと思います。社会科は内容教科であり、授業者は常に「何を」指導するのかどのような知識を身につけるのかを確認する必要があります。習得・獲得させる知識(指導内容)を明確にして、はじめて「主体的・対話的で深い学び」や「見方・考え方」を働かせた授業が生きたものになります。

―授業づくり・授業計画で課題となることの一つに、「授業時間の不足」があります。社会科においては問題解決的な学習の充実が求められており、全ての単元で、としてしまうと予定されている指導内容が年度内に終わらない、なども出てきそうです。どのような工夫が必要でしょうか。

 ここに、今回の学習指導要領の最大の問題点があります。年間授業時数は増えないままに、指導内容や教材が増えています。この問題を解決するには、年間を見通して、指導内容や教材の指導時間に軽重をつけたり重点化を図ったりするなどの工夫が必要になります。まさに、各学校のカリキュラム・マネジメント力が問われていると言えるでしょう。単元末に実施するペーパーテスト問題との関連を考慮する必要もあります。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 本書が新しい社会科の授業づくりにお役に立つことを心から願っています。本書では、学年ごとに「重点単元」の授業モデルを紹介しました。今後、全国各地で実施された優れた授業実践の成果が交流されることを期待しています。実践の模様についてお届けいただければありがたいです。

(構成:及川)

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