- まえがき
- 1章 「知識の構造図」は何を目指しているか
- ―社会科の役割を果たしたい―
- 1 素朴な疑問に答える
- 2 調べさせること,考えさせることを明らかにする
- 3 だれもが質の高い授業を目指す
- 4 多様な知識の関連性を見える化する
- 5 「知識の構造図」の実際
- 6 「知識の構造図」の特色は何か
- 7 社会科の役割(社会がわかること)を果たす
- 2章 「知識の構造図」を授業にどう生かすか
- ―「絵に描いた餅」にしないために―
- 1 「知識偏重」の授業を克服する
- (1) ポイントは「知識」を主体的に習得・獲得させること
- (2) 「知識」の習得・獲得過程を重視する
- 2 「知識」の習得・獲得と能力・態度の関係性
- 3 「知識の構造図」と「指導計画」との関連モデル
- 3章 問題解決的な学習の定型と授業構成
- ―社会科授業づくりの基本を踏まえる―
- 1 なぜ,問題解決的な学習なのか
- 2 問題解決的な学習の基本形
- 3 問題解決の各場面の新しい課題
- (1) 「学習問題に気づく」場面の課題
- (2) 「学習問題に対して予想する」場面の課題
- (3) 「学習計画を立てる」場面の課題
- (4) 「学習問題を調べる」場面の課題
- (5) 「まとめる」場面の課題
- (6) 「学習成果をいかす」場面の課題
- 4 問題解決的な学習の一般的課題
- 4章 問題解決的な学習を支える“発問&板書”の構成
- ―押さえておきたい考え方―
- 1 教師の主要な言語活動としての“発問&板書”
- (1) 教師の言語活動
- (2) 教師の発問・指示とは
- (3) 板書のもつ教育的な機能
- 2 「知識の構造図」と「問い」の構造
- (1) 各知識と「指導計画」との関連
- (2) 具体的知識と各時間の関連性
- (3) 中心概念と「まとめる時間」の関係性
- (4) 習得させる知識がない場面
- 3 「知識の構造図」を生かした“発問&板書”の構成モデル
- (1) 「学習問題に気づく」場面の“発問&板書”の構成
- (2) 「予想し学習計画を立てる」場面の“発問&板書”の構成
- (3) 「調べる」場面の“発問&板書”の構成
- (4) 「まとめる」場面の“発問&板書”の構成
- (5) 「いかす」場面の“発問&板書”の構成
- 5章 「知識の構造図」を生かした“発問&板書”の実際
- ―問題解決の場面に応じた“発問&板書”を―
- 1 3年「スーパーマーケットではたらく人」の“発問&板書”
- (1) 小単元の計画(11時間扱い)
- (2) 「学習問題に気づく」場面の“発問&板書”
- (3) 「予想し学習計画を立てる」場面の“発問&板書”
- (4) 「調べる」場面の“発問&板書”
- (5) 「まとめる」場面の“発問&板書”
- (6) 「いかす」場面の“発問&板書”
- 2 4年「特色ある地域―小笠原村」の“発問&板書”
- (1) 小単元の計画(7時間扱い)
- (2) 「学習問題に気づく」場面の“発問&板書”
- (3) 「予想し学習計画を立てる」場面の“発問&板書”
- (4) 「調べる」場面の“発問&板書”
- (5) 「まとめる」場面の“発問&板書”
- (6) 「いかす」場面の“発問&板書”
- 3 5年「自然災害を防ぐ」の“発問&板書”
- (1) 小単元の計画(6時間扱い)
- (2) 「学習問題に気づき,予想し学習計画を立てる」場面の“発問&板書”
- (3) 「調べる@」場面の“発問&板書”
- (4) 「調べるA」場面の“発問&板書”
- (5) 「まとめる」場面の“発問&板書”
- (6) 「いかす」場面の“発問&板書”
- 4 6年「戦後の日本―オリンピックを通して」の“発問&板書”
- (1) 小単元の計画(7時間扱い)
- (2) 「学習問題に気づき,予想し学習計画を立てる」場面の“発問&板書”
- (3) 「調べる@」場面の“発問&板書”
- (4) 「調べるA」場面の“発問&板書”
- (5) 「まとめる」場面の“発問&板書”
- (6) 「いかす」場面の“発問&板書”
- あとがき
まえがき
社会科にかぎらず,授業は三つの基本要素から構成される。まず「何のために」指導するのかという目標,次にそのために「何を」指導するのかという内容,そして「いかに」指導するのかという方法の三つである。
日々の社会科授業において,あるいは研究授業などにおいて,特に小学校では,「いかに」指導するのかという指導方法に関心が向きがちである。教材をいかに開発するか。資料をどう作成し提示するか。発問や指示をどう構成するか。さらには問題解決的な学習をどのように展開するかなど,指導方法の研究や検討に多くのエネルギーが費やされている。
そこでは「何を」指導するのかが必ずしも明確にされていない実態が見られる。指導方法の工夫・改善は重要な教材研究ではあるが,そこで「何を」指導するのかが明確にされないと,社会科としての役割が十分に果たせなくなるおそれがある。なぜならば社会科は内容教科であるからだ。
指導方法研究に傾斜している社会科授業の課題を解決したいと願い,世に問うたのが,拙著『社会科学力をつくる“知識の構造図”―“何が本質か”が見えてくる教材研究のヒント―』(明治図書)である。本書では「何を」指導するのかを明らかにするために,単元や小単元ごとに「知識の構造図」を作成することを提案した。
「知識の構造図」を作成することは,多様な知識を階層的に構造化するためだけではない。「知識の構造図」をもとに,問題解決的に構想された「指導計画」が作成され,実践されてはじめて「知識の構造図」が意味をもつ。そのためには,「知識の構造図」に示された,具体的知識や中心概念など個々の知識を子どもたちにどのように習得・獲得させるのかを明確にする必要がある。すなわち,「何を」を明確にした「知識の構造図」と問題解決的な学習が構想された「指導計画」とを関連づけることである。授業において両者をつなげるのは教師―具体的には,教師の発問や指示であり,板書である。
「知識の構造図」の知識内容を発問構成や板書計画というかたちで「見える化」することによって,社会科として実効性のある授業が展開できる。「何を」と「いかに」の観点から社会科の授業が充実すると,より確かな社会認識を深めることができるようになる。
こうした趣旨と願いにもとづいてとりまとめられたのが,本書『“知識の構造図”を生かす問題解決的な授業づくり―社会科指導の見える化=発問・板書の事例研究』である。本書のコンセプトは,社会科の授業において「知識の構造図」を見える化するための“発問&板書”の構成の仕方とプランを提案することにある。
1章では,「知識の構造図」が子どもたちの社会認識を深め,社会科の役割を果たすためのものであることを論述した。2章では,「知識の構造図」を絵に描いた餅にしないために,「知識の構造図」と「指導計画」の関連性について解説した。3章では,日々の社会科授業の「指導計画」が問題解決的な学習を基本に作成されることから,問題解決的な学習の基本形を示し,問題解決過程の各場面における実践上の課題を提示した。
そして4章では,問題解決的な学習を支える重要な役割を果たすものとして「発問と板書」に焦点を当て,「知識の構造図」といかに関連づけるかを具体的に解説した。問題解決過程の各場面ごとに「発問と板書」の構成モデルを示した。5章では,各学年ごとに一つの小単元を取り上げて,「知識の構造図」と関連づけ,問題解決過程の場面ごとに本時レベルの「発問と板書」の具体例を紹介した。
本書が社会科の授業改善に生かされ,「知識の構造図」と「指導計画」が一体化された学習指導案が作成されることを心から願っている。このことが社会科の一層の充実と活性化につながると確信しているからである。
終わりに,本書の刊行に当たっては,明治図書出版の樋口雅子編集長から貴重なご助言を多方面からいただいた。この場を借りて,心から感謝の意を表したい。
2015年2月 /北 俊夫
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- 明治図書
- 教材分析の仕方、知識の構造化による指導の焦点化など、勉強になる。社会的事象を科学的に理論立ててとらえ、指導することを大切にしたい。2019/10/2030代・中学校教員