著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
これから10年以上働く教師が守るべき「子どもとの立ち位置」
上越教育大学教職大学院教授西川 純
2016/1/27 掲載

―本書は、大好評をいただいている『アクティブ・ラーニング入門』 の実践編として、「アクティブ・ラーニング時代における教室のルールと規律づくり」がテーマです。まず、本書のねらいと読み方について、教えて下さい。

 私の教師としての原体験は、暴走族(及びOB)が多くを占めるクラスで物理を教える経験です。そこで、教師の権力は事実上無いことを理解しました。命令ではなく納得が大事であることを知りました。それをより多くの人にわかって欲しいと思います。

―本書の1章では、「学級崩壊の構造」について触れられています。学級崩壊をするクラスは増えたとも言われ、以前より問題が顕在化しているようにも思いますが、その原因は何でしょうか?また、どのように取り組むべきでしょうか。

 民主主義が定着し、子どもも保護者も変わったからです。
 教室を専制政治、啓蒙的君主で動かせなくなりました。今後は民主主義で教室を動かすべきなのです。ただし、ポピュリズム(人気取り)ではありません。正しいこと、動かせないこと、これは説明し、納得してもらわなければなりません。
 民主主義は大変です。しかし、専制政治、啓蒙的君主国家に民主主義国家はあらゆる面で勝ちました。なぜなら、みんなの力が期待できるからです。

―「教室ルールづくり」について、西川先生は「生徒指導もアクティブ・ラーニングでなければならない」と述べられています。生徒指導と教科指導は違うのでは?という反応もあると思いますが、この点について教えて下さい。

 陳腐な議論ですが、昔から「生徒指導の出来ない教師に教科指導は出来ない」と言われました。逆に「教科指導の出来ない教師に生徒指導は出来ない」とも言われました。ではなぜでしょうか?
 理由は生徒指導も、教科指導も、子どもが何とか改善しようと思わない限り出口はありません。そして、子どもが何とかしようとするかしないかは、教師の人を見ているのです。二つを分けるのは無意味です。

―本書の3章では、アクティブ・ラーニング時代における「教師の立ち位置」について、「劇的に変える必要がある」と述べられています。本書で詳しく解説されていますが、どのような変化が必要でしょうか。

 子どもとの関係を、校長とあなたとの関係に置き換えて下さい。
 たしかに、子どもと大人は違います。でも、我々の仕事は子どもを大人にすることです。大人にするためには、大人として扱うべきなのです。
 良き管理職は、ゴチャゴチャいいません。しかし、あなたを守る仲間を作っているのは、管理職です。だって、校長が替わるとどうなるか、知っていますでしょ?

― 本書の副題には「子どもが主体となる理想のクラスづくり」とあります。これからまさに求められるものと言えますが、アクティブ・ラーニング時代のクラス経営の秘訣は、ズバリ何でしょうか。

 愛、尊敬です。
 おそらく、子どもを愛することは、多くの教師はしていました。しかし、子どもであることを喜ぶ教師の愛では、子どもはいつまでも子どもです。子どもが大人になることを喜ぶ教師の愛が、これからの子どもを動かせる教師の必須要件です。
 子どもは一人一人は愚かと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、集団としては尊敬すべき存在です。集団に敬意を払う人が、集団からの敬意を得られます。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 目の前にいる子どもは、愚かな存在でも、あなたの命令を受けるべき存在でもありません。あなたが子どもに信頼をもてるならば、子ども「たち」はあなたが予想もつかないほどのことを与えてくれます。 

(構成:及川)

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