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「はてな?」を追究していく中で人の熱き思いや知恵に出会えることが、社会科の醍醐味でもあり、私が大好きなところです。
3年「古い道具と昔のくらし」の学習で「湯たんぽ」を取り上げました。それは「呼吸する湯たんぽ」という宣伝広告を目にしたのがきっかけです。「湯たんぽが呼吸する? なぜ? どうして? 生産者に会ってみたい! 追究してみたい!」。私は、さっそく名古屋市にあるT会社を訪ねました。そして、働く方々の熱き思いや知恵に心動かされ、教材化がスタートしたのです。この一連の物語があるからこそ、社会科が大好きなのです。
「はてな?」には、“知っているつもり”から生まれるものと、“はじめて知ったこと”から生まれるものがあります。つまり、既知と未知からの「はてな?」です。
既知からの場合、子どもはよく「知ってる!」と言います。しかしそれは、「知っている」だけで「分かっている」わけではないのです。そこで、認識のズレに気づかせるはたらきかけから「はてな?」を生み出しましょう。
一方、未知からの場合は、「あっ!」と驚く事象提示から「えっ、どうして?」を引き出すはたらきかけがポイントになります。例えば「ビール一杯30万円」の看板を提示し「あっ!」と言わせます。「どこにあるのかな?」というはたらきかけから、交通事故がいちばん多い交差点に目を向けさせます。「看板が立つ交差点にはなぜ交通事故が多いのか?」「交差点に交通事故を防ぐ工夫はあるのか?」といった追究が生まれるでしょう。
新聞づくりを成功させるコツは「型」を教えることです。私の場合は、新聞社の定石に基づいた「型」を教えます。具体的には次のように指導します。
@新聞社の定石に基づいたレイアウト(割り付け)用紙を用いて、「型」を学ぶ。
A手本となる社会科新聞を読んで、文字や内容の「読みやすさ」「おもしろさ」を学ぶ。
B手本をまねて書いてみる。
「型」が身につけば、新聞づくりの回を重ねるごとにオリジナリティが生まれてきます。新聞づくりの定石という「型」が身について、その子なりの「型破り」な新聞ができるのです。
福島大学附属小学校勤務時に、多くの教育実習生とかかわりました。その実習生の授業指導をきっかけに板書案から指導案をつくるようになりました。
実習生は多くの時間をかけて指導案をつくります。実習授業では、目の前の子どもの見方や考え方よりも指導案優先になりがちです。いわゆる教師主導型の授業です。教師主導型から子ども主体のアクティブな授業へ転換するにはどうしたらよいか。実習生と共に悩みました。その答えが「板書案から授業案へ」でした。
授業構想時に学級の子ども一人ひとりを思い浮かべながら「あの子だったらこう考えるだろう」「ここではこれを押さえた」といったことを黒板に書いては消し、書いては消し…の作業を繰り返します。最終の板書案には、ねらいに迫る道筋が「子どもの見方や考え方」で紡がれ、黒板一枚が「学びの物語」となって表されます。板書案ができれば、あとは指導案として文字に起こすだけです。
本書執筆時に教職28年目を迎えました。幸せなことに、学級担任を28回連続でさせていただいています。28回の出会いで、教え子たちからは星の数以上のことを学ばせてもらいました。まだまだ、子どもたちとの学び合いは続きます。
本書は、大好きな子どもたちと大好きな社会科を柱に学級担任を続ける中で拾い集めた宝物を書き表したものです。本書を「子ども大好き!」「社会科大好き!」と笑顔いっぱいで子どもたちに対峙する先生方の傍に置いていただければうれしいです。