著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
子どもの心が育つ「作文教育」をクラスづくりの柱に
追手門学院小学校講師多賀 一郎
2015/2/3 掲載
 今回は多賀一郎先生に、新刊『クラスを育てる「作文教育」 書くことで伸びる学級力』について伺いました。

多賀 一郎たが いちろう

 神戸大学教育学部卒。附属住吉小学校を経て、私立甲南小学校に31年間勤める。現在、私立追手門学院小学校講師。元日本私立小学校連合国語部全国委員長。「親塾」を開催して、保護者の子育て支援を行ったり、若い教師の育成に尽力したりしている。また、公立私立での指導・講演の他、幼稚園やサークルなどで絵本の話をしている。
 著書に、『学級担任のための「伝わる」話し方』『ヒドゥンカリキュラム入門―学級崩壊を防ぐ見えない教育力―』『学級づくり・授業づくりがうまくいく!プロ教師だけが知っている50の秘訣』『はじめての学級担任4 1から学べる!成功する授業づくり』『小学校国語科授業アシスト これであなたもマイスター!国語発問づくり10のルール』(明治図書)、『子どもの心をゆさぶる多賀一郎の国語の授業の作り方』『全員を聞く子どもにする教室の作り方』『今どきの子どもはこう受け止めるんやで!』『一冊の本が学級を変える』『今どきの1年生まるごと引き受けます』(黎明書房)など多数。今春、『学級づくりロケットスタート』(低学年中学年高学年)をチーム・ロケットスタートのコーディネーターとして刊行予定!

―最初に、「作文教育」とはなんでしょうか?

 「作文教育」とは、どのように作文を書かせるのかということだけではありません。子どもが作文を書くことは心の成長と大きく関係があります。作文の持つさまざまな力を通して、心の教育をしていくと考えると、分かりやすいと思います。

―なぜ「作文教育」をすると、学級が育つのですか?

 書くことは心を耕すことです。人は書くことを通して自分の言動や思いを振り返り、深く考え直すことができます。そして、書かれた作文を学級通信にして読み合うことで、学級での出来事、友だちとのトラブルを仲間がどう感じているのか、その思いを知ることができます。書いたものだからこそ、思いをきちんと共有することができるのです。思いを共有する学級が居心地の良い場所になっていくのは、当然のことですね。

―本書では、学年別に「作文教育」のポイントをおまとめいただいていますが、どの学年でも共通して大切なスキルがあれば、ちょっとだけ教えてください。

 大切なのは、「時計が動いている」とか、「鉛筆は役に立つ」とかいうようなことではなく、人間を書くことだと思っています。人を観察し、人の思いを想像していくことを大切にしてほしいです。また、そのために、「誰が(どうした)」と“名前”を書いて綴っていくことは、どの学年においても大切なことです。

―作文を書かせるとなると、どうしてもそのあとの赤ペンが苦手…という先生もいらっしゃるかと思います。単に誤字・脱字を指摘するにとどまらない、成長を促すような赤ペンを入れるためのアドバイスをいただけますか?

 赤ペンとは、子どもの思いを受け止めることです。子どもの背景を考えて、「この子は何が言いたいのかな」と思って赤ペンを書くことが必要です。ただし、赤ペンのコツというものはあります。この本の中に、いくつかのアイデアを盛り込んでいます。

―先生は、「作文教育」と同時に、学級通信もとても大切にされていらっしゃいますね。先生の学級通信についてのお考えをお聞かせください。

 阪神大震災のとき、学級通信の力を確信しました。子どもの作文を載せて配ると、黙って静かに子どもたちは読んでいました。静かな深い時間が流れました。それこそ、仲間の思いを受け止めようとする姿であったと思うのです。
 学級通信は、子ども同士、子どもたちと家庭、教師と子どもと家庭をつなぐ最大のてだてだと信じています。

―最後に、書くことで個の力・学級の力を伸ばしたいとお考えの読者の先生方に向けてメッセージをお願いいたします。

 ただ書けと言っても、なかなか自分の思いを書けるものではありません。ところが、ちょっとした工夫で心の中から言葉が出てくるようなことがあるのです。この本から、そういうエキスをぜひ受け取ってほしいと思います。

(構成:林)

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