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「あ・い・う・え・お」(子どものつぶやき)が聞こえる授業を提唱し始めて10年ほど経ちます。きっかけは、教頭になり自校の先生方の授業を参観し始めたころ、たった一人の「あっ」という何かに気づいた声や、「えっ」という疑問の声に、まわりの子どもたちが触発され、教室全体に能動的な学びが広がる場面を幾度となく目にしたことです。
「あっ」と何かに気づいた子どもは、その「あっ」に続く言葉を何かしらもっています。また、「えっ」という疑問の言葉も、その「えっ」に続く言葉が子どもの胸の内にあります。このつぶやきの後に続く言葉をうまく引き出し、学級全員の問いにするだけで、学び合いが始まるのです。
初任当初から「問題やめあてに対する子どもの反応こそ最高の学習素材だ」と先輩の先生方に教えられてきました。今でもその教えを大事にしています。
授業展開を構想するうえで、どんな問題やめあてを提示するのかを考えることは当然重要ですが、その問題やめあてに対して、子どもたちがどんな反応をし、どんな解法を試みるかを可能な限り予想することも同じぐらい大切なことです。
授業は拡散と収束の繰り返しです。教師は常に拡散と収束を意識し、授業の最後には自然な形で収束に導くことが大切です。
話し合いが拡散し過ぎていると感じたら、まず、今話し合っていることの中心部分について子どもたちに整理させる時間をとります。そのうえでひと呼吸おいて、教師が「じゃあ、ここで一度整理するよ」という言葉とともに、さらなる収束を試みます。状況にもよりますが、このように段階的に収束させるのがおすすめです。
「取り上げ・つなぎ・問い返す」とは、最高の学習素材である子どもの反応を授業の中で最大限に生かすための一連の方法です。
まず、授業のねらいに照らして、子どもの反応の中から何を取り上げるのかを判断します。そして、その反応に他の子どもたちをどうかかわらせ、つなげていくのかを考えながら授業を進めます。さらに、子どもの思考を収束させたり拡散させたりしたいここぞという場面で、教師が問い返しの発問を行います。
画一的で、形だけの学び合い授業に陥らないための方法です。
本書には、授業を始める前の教材研究、板書計画等の下ごしらえから、学力向上に直結するまとめや評価まで、「スタートブック」という書名にふさわしく、算数の学び合い授業を始めるためのあらゆる情報が詰まっています。
読者の先生方が、「これならすぐにできそうだ」と思われるところスタートしてみてください。