- 著者インタビュー
- 授業全般
本校では、「教育」を「教師」と「子ども」と「教材」の三者が織りなす関係概念と捉えて研究を積み重ねてきました。現代にあった教育活動を創造する、すなわち、三者の関係性を編み直すことをめざしています。「教師」が授業をデザインしコーディネートする中で「子ども」が「文化(教材)」に積極的にかかわる「教育」をめざしてきたわけです。
平成25年度の研究のテーマとしては、『「子ども―文化―教師」をつなぐ(1年次)』として教材から教育を問い直し、教材の中にはどのような指導すべき内容があり、子どもにとって適した目標は何で、その目標を達成するためにはどのような場の設定や方法があるのかを追究しました。
私の国語科の実践に関して書かせてもらいます。国語科に関しては文学研究や言語研究などの親学問としての「文化」があり、その中に「教材」があります。昔ほど絶対視されていないものの、「文化」は先人たちが合意形成してきたとても価値のあるものです。だからといって、今、その「文化」にかかわっている子どもたちに「時期・内容ともに適したものか」ということは別の話になってしまいます。教材の価値を十分引き出しながらも、子どもに適した内容を査定すること、すなわちちょうどいいバランス(中庸)を意識して実践しました。
最近、「好きな場面の絵をかいて話し合おう(光村図書2年下『わたしはおねえさん』いしいむつみ作)」の実践をしました。子どもが描いた好きな場面の絵を用いて学習しました。「すみれちゃんが〜したところが好きです。……………だからです」などと紹介の発表自体が「あらすじ」をつかむ学習です。「あらすじ」の板書の中で、主語に注目した子どもがいて「すみれちゃん=主人公」という学習もできました。私が担任しているクラスではないのですが,担任の先生と子どもたちのいい関係性も感じられ、有意義な時間を過ごせました。
この実践につながる研究の一端を、江里口の実践「ぽんぽこ日記をつくろう」、私の実践「自分の物語をつくろう」で紹介しています。
国語科のことばかり書いてきましたが、「TPR?」「名曲探偵??」「牛乳とペットボトル??」「粘土で話す????」「8の字コートでサッカー?????」など、一つ一つの素材を追究し、デザインした実践が載っています。私は大学を卒業したすぐのころに「憧れの先輩の授業と同じ単元構成、同じワークシートでやってもうまくいかないのはなぜ?」とよく悩んでいました。その時に出会っておけばよかったなぁと思うヒントが、この本にあるような気がします。授業づくりを話題に、最近あまり語られなくなってきた教材研究のことを先輩と後輩が語る、そのきっかけとなるような本になればと思います。