GIGAスクール構想で変える!1人1台端末の授業づくり
1人1台端末導入で、授業が確実に変わります。そして、仕事術も確実に変わります。具体的な実践のヒント・授業のノウハウを伝授!
1人1台端末の授業づくり(11)
タブレット端末を使用すると話し合いが減る?
香里ヌヴェール学院小学校樋口 万太郎
2022/4/20 掲載
  • 1人1台端末の授業づくり
  • 授業全般

 みなさんはタブレット端末を使用すると、話し合いが減ったという経験をしたことはないでしょうか。
 そもそも、本当に話し合いは減るのでしょうか。みなさんはどう思われますか?

 「タブレット端末を使用すると教室がシーンとする?」
 「タブレット端末を使用すると話し合いが減る」
といったことをよく相談されます。
 結論を先に言えば、
タブレット端末を使用すると話し合いが減ることはありません。
むしろもっと活性化します。
 実は私もこの相談事に悩んできました。「本当にこれでよいのか」と不安に思っていた時期がありました。しかし、子どもたちが活性化をしている様子という事実をみたとき、その不安は払拭されました。

1 見方を変えてみよう

 「タブレット端末を使用すると教室がシーンとする?」
 「タブレット端末を使用すると話し合いが減る」
といったことを、見方を変えて考えてみましょう。
 「タブレット端末を使用すると教室がシーンとする」の見方を変えると、

タブレット端末を使って、自分の考えをしっかり表現している

と考えることができないでしょうか。
自分の考えをしっかり表現するためにシーンとしているのかもしれません。みんな集中しているという状態です。そんな状態、最高だと思いませんか。
 つまり、見方を変えると「タブレット端末を使用すると教室がシーンとする」ということは決して悪いことではないのです。
 このときの教室は、

  • カタカタというタイピングの音が聞こえてくる
  • どういうことかな…、うーん…などのつぶやきが聞こえてくる
  • 教科書やノートなどをペラペラめくる音が聞こえてくる

といった状態になります。
 このような状態は、自己対話をしているということになり、対話がこれまでに比べ減るということにはなりません。
 もしかしたら、

これまでの授業では自分の考えをしっかり表現する場が少なかった

のかもしれません。
 タブレット端末を使用すると、これまでに比べアウトプットをする量を増やすことができます。そのため、自分の考えをアウトプットしたいと子どもたちはより思うことでしょう。そのように考えると、「声に出すというアウトプットが減る=話し合いが減る」という構図ではなく、自分の考えをアウトプットする量が増えるという構図で捉える必要があります。
 このように見方を変えることでこの相談事が解決することもあれば、解決しないということもあります。解決しない原因、それは「課題が悪い」ということです。

2 課題が悪い

 今から紹介する課題を、アプリの協働編集などを使いながら取り組んでいくとします。
 例えば、

好きな色を書きましょう

という課題があったとします。
 この課題では話し合う必要がありません。それぞれが好きな色を書けばすむのです。だから、タブレット端末を使ったときに、話し合いなど起こりません。
 では、

グループで色を書きましょう

という課題だったらどうでしょうか。「何色にする?」「色が被らないようにしよう」などの声が先ほどの課題に比べると出てくることでしょう。でも、この課題では、まだ「タブレット端末を使用すると教室がシーンとする」ことが多いでしょう。
 では、

グループで知っている色をできる限り多く書きましょう

という課題だったらどうでしょうか。できる限り多く集めるという目的が子どもたちにはあります。「グループで色を書きましょう」よりも子どもたちの声が聞こえてくるようになることでしょう。
 この課題を数クラスで行ったことがあります。そのときは、

  • タブレット端末を使わずに話し合うグループ
  • それぞれがタブレット端末でタイピングするグループ
  • 誰かがタイピングをして、残りの子たちは話し合うグループ(この方法は大体誰がタイピングをするのかを決定することに時間をかけがち)
  • 話し合いながらそれぞれがタイピングをするグループ

などに分かれました。
 このとき、1番多く集めるのは「話し合いながらそれぞれがタイピングをするグループ」になることが多いです。誰が暖色系、寒色系の色を担当するのかをタイピングしながら決めたり、お互いにアドバイスをしたりしながら、取り組みます。
 つまり、「課題が悪い」のかもしれません。
「タブレット端末を使用すると教室がシーンとする」「タブレット端末を使用すると話し合いが減る」ような課題を提示してしまっている可能性がある
ということです。

子どもに目的意識のある課題を設定する必要がある

ということです。
 教室がシーンとした事実を嘆くのではなく、そもそもの根本である課題を検討し直す必要があります。

3 もう1度取り組ませる

 私はよくこの課題を子どもたちとするときに、「話し合いながらそれぞれがタイピングをするグループ」で取り組んだ方法を子どもたちに紹介します。
 そして、「グループで知っている野菜をできる限り多く書きましょう」という別の課題を与え、もう1度取り組ませるようにします。
 方法を紹介しただけでは、この方法は身につきません。だから、
その方法を使ってみる場を設けるようにしています。

樋口 万太郎ひぐち まんたろう

1983年大阪府生まれ。大阪府公立小学校、大阪教育大学附属池田小学校を経て、2016年より京都教育大学附属桃山小学校教諭。「子どもが楽しむ・教師も楽しむ」「子どもに力がつくならなんでもいい!」をモットーに日々の算数授業を行っている。著書に、『子どもたちの学びが深まるシン課題づくり』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の算数授業づくり』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の授業づくり』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の授業づくり2』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の国語授業づくり 物語文編』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の国語授業づくり 説明文編』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の学級づくり』(明治図書出版)などがある。

(構成:及川)

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