著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
学びたい題材から深い学びへ
〜アニメ、蛇口から首里城復興まで〜
立命館大学非常勤講師河原和之
2020/8/5 掲載

河原 和之かわはら かずゆき

1952年京都府木津町(現木津川市)生まれ。関西学院大学社会学部卒。東大阪市の中学校に三十数年勤務。東大阪市教育センター指導主事を経て、東大阪市立縄手中学校退職。現在、立命館大学、近畿大学他、6校の非常勤講師。授業のネタ研究会常任理事。経済教育学会理事。NHKわくわく授業「コンビニから社会をみる」出演。
月刊誌『社会科教育』で、「100万人が受けたい! 大人もハマる社会科授業最新ネタ」を連載中。
主な著書・編著書に、『100万人が受けたい! 見方・考え方を鍛える「中学社会」 大人もハマる授業ネタ』シリーズ(地理・歴史・公民)『続・100万人が受けたい「中学社会」ウソ・ホント?授業』シリーズ(地理・歴史・公民)『スペシャリスト直伝!中学校社会科授業成功の極意』『100万人が受けたい「中学社会」ウソ・ホント?授業』シリーズ(地理・歴史・公民)(以上、明治図書)などがある。

―本書は、大好評をいただいております「100万人が受けたい!」シリーズの第5弾として、全国の先生方から、身近なことを取り上げたワクワクする最新授業ネタをご紹介いただいています。本書の読み方・おすすめポイントについて、教えて下さい。

 教師が教えたい内容を子どもが学びたいものにするための工夫が満載です。また、子どもたちに疑問、葛藤、対立や矛盾を生じさせ「思考・判断」を揺さぶり「見方・考え方」が身につく事例が多数紹介されています。すべて追試可能な題材です。授業づくりのノウハウを読み取ってください。

―現状ではコロナ禍により、「主体的・対話的で深い学びを実現する〜」といった際に、ペア学習やグループ学習など、制限せざるを得ない状況もありますが、そのような中でも、河原先生は、「ペストがもたらしたルネサンス」「コロナ禍に関する株式売買ゲーム」など、子どもたちが驚く授業を生み出されています。その発想や授業づくりの原動力は何でしょうか?

 「予測困難」な社会に対する考えや、行動が問われています。「コロナ」学習は「正解のない学び」であり、「活用力」「探求力」を鍛えます。また、授業づくりには「切実性」「当事者性」が不可欠です。コロナ禍では、すべての児童・生徒が、ニュースや新聞を読み解き「体験・思考」する日々を過ごしています。コロナを「切り口」とした学習は、「社会科教育」そのものです。「コロナをチャンスに!」

―今回の学習指導要領においては、高等学校において新科目「公共」が設置されるなど、18歳選挙権や18歳成人にともなう主権者教育についても重視されています。模擬選挙の実践が代表的なものですが、それ以外で、河原先生おすすめの実践がありましたら、教えて下さい。

 明治図書「教育ZINE」に掲載した「『コアラのマーチ』から考える地球温暖化とCSR」は、「コアラ」の減少を、都市化、森林火災から考える授業です。地球温暖化をはじめ、オーストラリアの地理的条件(乾燥帯)が森林火災の背景にあります。そして、ロッテの「コアラ基金」というCSRに触れ、私たちの行動を問い、“消費は投票”であることを学ぶ授業です。「チョコレート」「紅茶」「衣服」「街の本屋」など身近なことが社会のしくみと繋がっていること、私たちの行動が社会を変えることを体感すること「主権者教育」には不可欠です。

―本書の各項目では、最新授業ネタに加えて、さらに掘り下げる「プラスαの展開例」も紹介いただいており、図書室に「戦国時代コーナー」を設置するなどのアイデアも紹介されています。子ども達に「もっと知りたい」「調べたい」という意欲を喚起するには、どのような工夫が必要でしょうか。

 本書には、多様な「プラスαの展開例」が紹介されています。世界の自然を、映画「アナと雪の女王」などを切り口に授業をしたり、ジェンダーについて既存の曲の「歌詞を変える」取り組みなど、意欲を喚起するヒントが満載です。また「インタビュー」により多様な価値を獲得する方法、「思考ツール」を使い「移住キャンペーンを作成しよう」など発信型授業も提案しています。

―最後に、このシリーズを手にとっていただいた読者の先生方へ、メッセージをお願い致します。

 本書は私が大学で教えた卒業生をはじめ、研究会などで知り合った20〜30代の先生方を中心に執筆されたものです。授業の発想はもちろん、動画、パワポ、思考ツールなど、様々な教育機器や授業方法に“若い”息吹を感じます。確実に進行している「学力格差」。教育社会学からの問題提起は行われていますが、授業論からは皆無です。「だれ一人取り残さない」授業が広まることを願うばかりです。

(構成:及川)

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