著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
ICTの活用で、英語への好奇心と意欲を引き出そう!
関西大学初等部東口 貴彰
2020/8/4 掲載

東口 貴彰とぐち たかあき

1986年生まれ。
関西大学初等部教諭。元大阪教育大学附属平野小学校教諭。
世界に2,447人いるApple Distinguished Educatorの1人。
主著に、『未来を「そうぞう」する子どもを育てる授業づくりとカリキュラム・マネジメント』(共著、明治図書出版、2019年)『iPadを使った小学校プログラミング実践事例集』(共著、Apple Books、2018)等がある。

―「英語」と「ICT」を組み合わせることの良さとはどんなところにあるのでしょうか。

 ICTを活用することで、今までの教室内における授業では決して味わうことのできなかった様々なことを子どもたちは体験することができます。例えば、教室の中にいながら世界にいる様々な人と繋がることができたり、昔の人物を蘇らせたり、自分とは違う別の人になりきってお話をしたり、世界の国々を旅行できたり… 教室内で紙と鉛筆だけを使った今までの形式の授業ではできなかった、より子どもたちが創造性を発揮できる活動や場面を設定することができます。また、子どもたちだけでなく、授業づくりの点においては教師自身も創造性を発揮しないといけません。ICTを活用することで、授業づくりの視野が広がり、それが結果として子どもたちの知的好奇心を大きくくすぐることにつながるのです。

―本書で述べられている「ICTはコミュニケーションを豊かにする1つのツールである」とはどういうことでしょうか。

 本書で紹介するICTの活用方法は、「友だちとの対話をなくし、子どもがひたすらICTデバイスを活用しながら英語のスキルを習得する」というものではありません。子どもたちに一旦好奇心が生まれると、自分たちで進んで調べたり、考えたり、アドバイスをしあったりしながら、学びを広げ、深めていきます。ICTありきで授業を進めたり、ICTを積極的に活用して特定のスキルを高めたりという発想ではなく、ICTを活用した活動の中でも、子どもたち同士がいつもと変わらないようにコミュニケーションをしようとする… つまり、ICTを使って新しい創造的な活動はできますが、そういった場面においても子どもたち同士のコミュニケーションは今まで通りであるということです。「さぁ、話し合いをしましょう」などこちらから言わなくても、必要感があれば子どもたちは自らコミュニケーションしようとします。その必要感を子どもたちに抱かせるための一つのツールとして、ICTはとても有効な手段なのです。

―先生は一貫して子どもが「楽しい!」と感じられることを重視されています。先生がICTを活用した授業を行う際に、考えていることや気を付けていることを教えてください。

 もちろん「楽しい」というだけでは「学び」とは言えません。ここでいう「楽しい」とは、子どもが出会った事象に「好奇心」を抱くということです。子どもたちに好奇心が芽生えれば、やがて目的意識をもって自ら課題を見つけ、それに対して「これは英語でなんていうのかな?」「もっとこうすれば伝わるんじゃないかな?」と探究的に活動に参加するようになります。そうなると子どもたちは友だち同士で英語表現を調べたり、練習したり、さらにはアドバイスを出し合ったりするのです。つまり、「楽しい」と子どもたちが感じさえすれば、子どもたちは自ら学びを創り続けられるようになるということです。
 それを踏まえた上で、私がICTを活用した授業を行う際に考えていることは、いかに子どもたちが自己を表現する方法を楽しみながら広げられるかということです。もちろんドリル的な活動においてゲーム的にICTを活用することもありますが、やはり自分の思いや考えなど、自分のことを伝える言語活動の中でこそ、ICTを使う意義があると考えています。子どもたちが自分のことを「伝えたい!」と思える活動や場をいかに設定できるかが大切です。そのような活動や場を設定があれば、先述の通り、子どもは自ら学びを創り続けていくのです。また、これはもはやICTを使うかどうかということではなく、普段の英語の授業においても同じことが言えるのではないでしょうか。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いします。

本書では、上記の通り、ICTありきの英語の授業ではなく、コミュニケーションが豊かになり、そして何より「楽しい!」と思える英語の実践事例をたくさん紹介させていただいております。子どもたちももちろんですが、まずは先生方が実際に本書に記載している事例を試していただき、楽しいなと思えるものが1つでもあれば、それをぜひ子どもたちにも体験させてあげてください。先生が楽しいと思う実践は、きっと子どもたちも楽しいと思うはずです。本書が皆様のお役に少しでも立てることを願っております。

(構成:新井)

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