著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「すきま」に目を向け、意図的な学級経営を!
これからの教室のために大切な「すきまスキル」とは
北海道公立小学校大野 睦仁
2017/9/4 掲載
 今回は大野 睦仁先生に、新刊『小学校高学年 学級経営すきまスキル70』について伺いました。

大野 睦仁おおの むつひと

1966年北海道札幌市生まれ。北海道教育大学岩見沢校卒業。「死」も扱う「いのちの授業」や、学習者主体の教室づくりを模索中。2004年より「教師力BRUSH-UPセミナー」事務局。
主な共著に、『小学校高学年 生活指導すきまスキル72』『THE 学級経営』(明治図書)などがある。

―本書は、「すきまスキル」シリーズの学級経営編として、小学校低学年、高学年、中学校の3冊構成でご提案いただいています。大野先生には「小学校高学年編」をおまとめいただいておりますが、本書のねらいと読み方について、教えて下さい。

 本書の大きな特徴は2つあります。
 一つは、学級経営の「すきま」と言えるような場面も抽出し、そこで必要とされるスキルを整理したことです。もう一つは、一つの指導場面における必要なスキルを「ハード編/ソフト編」の2つのアプローチで整理したことです。
 学級経営は、多くは小さなことの積み重ねを通して行われます。その小さなことに目を向け、大切にして、意図的に学級経営していくことの必要性を、本書を通して提案したいと考えています。
 また、子どもたちの多様性に応えながら向き合っていくためのヒントとして、一つの指導場面での「ハード編/ソフト編」という2つのアプローチを知ることは、とても有効だと考えています。

―小学校高学年は、「高学年女子の指導は難しい」とよく言われるように、子どもが思春期を迎える多感な時期でもあり、この時期ならではの難しい部分があるようです。もちろん個人差はあり,まだまだ幼くてかわいらしい子もいれば、男の子でやんちゃな子もいると思いますが、高学年担任として、まず押さえておきたいポイントはどのようなものでしょうか。

 ポイントは、2つあります。
 一つは、「受け止める」ということです。
 もちろん良くないことは、良くないことであるという指導が必要です。しかし、そういう行動をとってしまう理由/背景を聞き、受け止めていくことが必要です。ただ、その理由/背景を自分の言葉で伝えることができる子もいますが、できない(しようとしない)子もいます。教師側からその理由/背景を知ろうとすることも、時には必要です。「受け止める」ことで、子どもたちへの指導が通りやすくなるのが高学年の特徴です。
 もう一つは、「考えさせる」ということです。
 「受け止める」の後は、つい指導を入れたくなりますが、「あの時、どうすべきだったと思う?」「これからどうすればいいと思っている?」というように、まずは、子どもたちに考えさせることが大切です。子どもたちの思いや考えを尊重し、その後に、担任として、大人として、伝えたいことがあれば伝えるようにします。
 子どもの実態には個人差がありますが、どの子にもこのように接していくことで、高学年としての精神的な成長を促す場にもなっていきます。

―高学年は、自我が芽生える時期でもあり、「プライド」「主体性」が出てきて、それを育て磨く時期でもあるとも言えると思います。「主体性」は学習指導要領でも改めて注目されている言葉ですが、主体性を大事に、育てていくにはどのようなことが大切でしょうか。本書でご紹介いただいているスキルにも触れながらご紹介をお願い致します。

 本書に、朝の挨拶・返事の場面を取り上げています。
 挨拶や返事の価値を改めて確認・共有する手立て。その手立てをとっても、挨拶や返事ができない場合の受け止め方や、具体的な手立てを紹介しています。
 主体性の第一歩は、子どもたちがその活動がやらされているものだと思わずに、その意味や価値を「納得」、あるいは「理解」してやっているものであると、実感することが大切です。
 前述した朝の挨拶・返事の場面では、自分で選択する挨拶のバリエーションを紹介しています。みんなが同じことをするという状態から、一人一人が自分の思いや考えで「選択」するということも、主体性の第一歩になります。
 主体性を大事にし、育むためには様々なアプローチがありますが、本書で提案している場面とスキルには、子どもたちの主体性につながる「納得」や「理解」、「選択」がたくさん盛り込まれています。

―学級づくりにおいては、うまくいかなかった際に「立て直し」「リスタート」が必要な場面もありますが、そのような「うまくいかなかった状態」からの立て直しにおいて、大事なことは何でしょうか。

 立て直しなのですから、大事にすべきことはたくさんあります。その中で、一つあげるとするならば、「これまでを捨てる覚悟をもつ」ということです。
 どうしても、私たちは、今までのやり方にこだわってしまい、「どうして上手くいかないんだ!」という思いに囚われてしまうことがあります。これまでは上手くいっていたとしても、子どもたちが違っていれば、当然、機能度も変わってくることがあるのです。
 上手くいかなかった原因をしっかり分析し、時には、子どもたちにもその原因を尋ねながら、クラスで共有していくのです。これまでのものを捨てる必要があれば捨てて、もしくは改善して、新たな気持ちでクラスづくりを始めていくのです。そして、ここに至るまでのことをきちんと子どもたちに伝えていくことが大事なことです。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 本書のあとがきに、「これからの教室のために」という言葉を添えさせていただきました。
 読み進めていくと、「これからの教室」でも、変わらず大切にしていかなければならない場面、そして、「これからの教室」のために、新たに意識していかなければならないアプローチの多様性が見えてくると思います。
 本書が、みなさんの「今」「これから」に、出会う子どもたちや教室のために、きっと役立つはずです。

(構成:及川)
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