「単元を貫く言語活動」ここが知りたいQ&A
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「単元を貫く言語活動」Q&A(22)
学習意欲を高め、主体的な活動を生み出す「教師モデル」
大阪市立丸山小学校教頭山下 敦子
2016/1/14 掲載

教材文を読み終わったあとに、「じゃあ、次の時間から読書郵便をかくよ」と予告すると、子どもたちから「えー?」という不満の声が上がってしまいました。せっかく物語を読んだのですから、教科書に載っている物語だけではなく、もっとたくさんの物語を読んでほしいと思っています。そのために「読書郵便」という言語活動を考えたのですが…。「読書郵便」という言語活動がよくなかったのでしょうか。

せっかく考えた指導計画でも、子どもの意欲が高まらないとがっかりしてしまいますよね。付けたい力にふさわしい言語活動かどうかという検討も必要ですが、もう一つ大切なことは、「教師モデル」をいつ、どこで、どのように提示するかです。

「教師モデル」とはどのようなものですか?

単元を貫く言語活動では、この単元でどのような力が身に付くのか、そしてその力を付けるためにどのような言語活動を行うのかという見通しを、単元の最初にもたせることがとても重要です。教科書の物語を読み終えた後に、「さあ、いろいろな物語を読んで、読書郵便をかこう!」と言っても、子どもたちは、「え、まだ読むの?」という気持ちになってしまいます。単元の導入時に、単元の目的や言語活動の意図をはっきり伝え、「この単元ではこんな力が付くようになるんだ」という見通しをもつことで、学習意欲も向上し、主体的な活動が実現するようになります。
 例えば、単元の冒頭に

 先生に、こんなハガキがきました。
 『1年2組のみなさんへ。ニャーゴのおはなしのおもしろいところを紹介します。ニャーゴというお話は…です。私の一番すきな場面は…です。ぜひ、よんでくださいね。』
 みんなも、物語を読んで、おはなしのおもしろいところやすきな場面をハガキに書いて、友だちに紹介しましょう。そのために、物語のあらすじを書いたり、おもしろいところを見つけながら読んだりする学習をしますよ。

というように、単元の見通しをもたせるのです。こうすれば、「読書郵便を書いてみたい」「書くために読んでみたい」「他の本も紹介したい」という意欲が高まってきます。このような「教師モデル」は、単元の目標をわかりやすく伝えるとともに、学習意欲を高めるツールでもあるのです。

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単元の冒頭に「教師モデル」を提示することが大切なのですね。「教師モデル」が必要なのは、単元の冒頭だけでよいのでしょうか?

「教師モデル」は「単元を貫いて」活用します。単元の展開時にも、「読書郵便で紹介するために、あらすじをつかむ」「読書郵便で紹介するために、おもしろかったところをまとめる」など、目的を持った読みを行うことが大切です。展開時にも、「教師モデル」を想起させながら授業をすすめると効果的です。

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 次は、単元を貫く言語活動を設定した指導計画の一例です。

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 「読み終えてから、表現活動」ではなく、「言語活動を通して、付けたい力を身に付けていく」ことを意識して、指導計画を立案しましょう。そうすれば、「え、まだ読むの?」という子どもの声はなくなり、「やってみたい」という声が多くなるでしょう。教材研究の一環として、先生自身が言語活動をやってみてください。実際に、読書郵便やリーフレットを作ってみると、どのような力が必要なのか、どのような発問をすればいいのかなど授業の具体が見えてきます。そして、その際に「付けたい力に最適な言語活動かどうか」の判断もしておきましょう。言語活動ありきにならないよう指導計画を具体的に立てて、授業にのぞみたいものです。

ここをチェック!授業改善のためのポイント

学習したことを効果的に生かすために、次のポイントに留意しましょう。

  1. 教材研究のときに、言語活動を実際に教師が行ってみていますか?
  2. その言語活動が付けたい力に最適な言語活動か判断していますか?
  3. 単元の冒頭に「教師モデル」を提示して、単元の目的や見通しをもたせていますか?
  4. 単元の展開時にも「教師モデル」を活用していますか?

山下敦子やました あつこAtsuko Yamashita

 大阪府大阪市立丸山小学校教頭。『国語教育』2016年1月号「特集 主体的・協働的に学ぶ力を育てるグループ学習」などへの記事投稿がある。

(構成:木山)
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