なぜ、保護者への寄り添い、関係性が必要なのか
通級指導教室(以下、通級)という短時間の指導の中で、なぜ保護者との関係性が重要になるのか、私も正直実際に担当するまではわかりませんでした。私が通級を担当したのは、3年前。相談できる先生もいない手探りの状態でした。支援級、支援学校の経験はありましたので、その延長線でやればいいのかなと思っていましたが、また違った壁が通級にはありました。それを解消していくきっかけとなったのが、まさに今回の「保護者への寄り添い」でした。保護者への関係性を深めれば深めるほど、みるみる子どもの成長が変わってきたのです。
では、なぜ、保護者との関係性が重要なのか、多面的にみていきましょう。
- 保護者との関係性を深めると、通級や学校に協力的になる
- 家庭でも認める機会が増え、一気に子ども成長が加速する
- その情報を担任に共有することで、さらに好循環が生まれる
理由@保護者との関係性を深めると、通級や学校に協力的になる
通級を初めて受けもった頃は、子どもに対してはもちろんしっかり関わるのですが、保護者に関しては、正直そこまで重要視していませんでした。しかし、ある保護者からの一言で、少し見方が変わりました。
「実は子どもが担任とあまり馬が合わないようで・・・」
「通級では落ち着いて過ごしますが、家だと何にもやらないんです」
このような声を聞いて、あれ?と思ったんです。
「担任の先生とうまくいっていないなんて知らなかった」
「家庭に対して何かサポートできることはないかな」
通級は月に数時間の指導ですので、正直なところ、やることは限られています。単純に通級だけ頑張っていても、その他の場面で辛い思いを抱えていたら、子どもは辛いままです。
「いかに通級の時間で頑張らせるか」よりも、「いかに通級に来ない時間に心地よく過ごすか?」「そのためにはどう大人が関わればいいか?」が重要だとその時に気づきました。
そこから私は、保護者との寄り添いに力を入れるようになっていきました。そうすると、家庭での様子や子どもの学校での話を共有してくれるようになりました。それがきっかけで子どもとも距離感がさらに縮まるようになり、みるみるうちに子どもの成長が見られるようになっていきました。
理由A家庭でも認める機会が増え、一気に子ども成長が加速する
ある日この子が通級に来た時に、とっても嬉しそうな顔をしてきました。
子「昨日はママとサッカーしたんだよ」「宿題も頑張っているよ。先生も見て」
母「先生のアドバイス通り、毎日1度は最後まで話を聞く。好きなことをして共に過ごす、っていうのを実践してから、子どもも落ち着いて自分の気持ちを話してくれるようになりました」
春から何度も保護者とやりとりを交わす中で、子どもにとって家庭がもっと心地よく過ごせる環境となり、子どもの力が発揮できる場になっていきました。また、家庭では認めるだけでなく、「子どもが何に困っているのか?」「親にどんな関わりを望んでいるか?」など、心に寄り添ってもらえるようになっていきました。
理由Bその情報を担任に共有することで、さらに好循環が生まれる
家庭や通級でよかった関わり、逆効果だった関わりは、その子の心を軽くする大切な情報です。これらを担任の先生にも共有し、関わり方の参考にしてもらいました。
当然、簡単に子どもは変わる訳ではありませんが、常に通級・家庭・学校の3者が連携を図り、「子どものために何ができるか?」という視点に立って、お互い情報共有することで確実に子どもに良い影響を与えるようになっていきました。こうして、これまで通級のみで前向きだった子どもは、家庭、学校でも力を発揮して過ごすことができるようになりました。
※時には、保護者が直接担任の先生に伝えにくいことは通級を介して伝える場合もあります。
■関係性を築くことで、最終的に子どもがどうなるのか
保護者と関係性を築くことで、以下のような流れで子どもは成長していきます。
- 家庭、学校、通級全体で子どもの気持ちに寄り添って関わることができる
- 子どもが大人を信頼する
- それぞれの場所が安心できる環境となる
- 子どもの力が大きく発揮できる
- 結果、学力が伸びたり、落ち着いて生活できたりする
■保護者や子どもへの関わるポイント
@保護者への寄り添い、関係性づくりで何をしたらいいのか
■通級開始時
- 入級前の保護者との面談にて、子どもに期待すること、今悩んでいること、将来どうなってほしいかなど、子どもへの思いについて確認。そして、理解を示す。
- 保護者や子どもの思いに対して、通級としてどのような関わりをするつもりかを保護者に説明。
- 常にいつでも聞く姿勢があることを伝える。
■その後
- 通級に来校時に最近困っていることやこの先不安なことを聞く。授業中は子どもを相手にしていたり、子どもに心配をかけてしまったりする場合があるので、用紙に書き込んでもらって後から電話で相談に乗ることも。次の通級までに家庭でできることを2人で話し合う。また、保護者の日々の頑張りはしっかりと価値づける。
- 常に子どもの近い将来、遠い将来のことを考えつつ、今に満足することなく情報交換をし続ける。
A子どもとの関わりで押さえておきたいポイント
- 当然子どもにも思いがあるので、大人だけで考えたことを無理強いしない。子どもにも相談する形でどう家庭や学校で過ごすかを考える。
- できて当然と思わず、しっかりと価値づけする。達成感を感じさせることが次につながる。
■最後に
どのような場面でも子どもにとって大切なのは、安心して過ごせることです。
「通級や家庭では調子よく過ごせるけど、学校は辛い」など、どこかの場面で困り感を抱えてしまうと別の場面でも力が発揮しにくくなっていきます。
また、通級は保護者だけでなく、担任の先生とも関わることができるので、担任と保護者の橋渡し役になれるのも魅力のひとつ。子どもにとって、「どの場面でも頼れる大人がいる」「安心して過ごせる」があるからこそ、ぐんぐんと成長していってくれます。はじめは連携をとるのが大変かもしれませんが、よい循環ができれば子どもだけでなく関わる大人も楽に笑顔になっていきますよ。
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こんな素敵な考え、なるべくたくさんの大人に知ってもらいたいです。
「いかに通級の時間で頑張らせるか」よりも、「いかに通級に来ない時間に心地よく過ごすか?」「そのためにはどう大人が関わればいいか?」が重要、という考え方を知った時、目からウロコでした!
もっともっとそうくる先生の活動が広がって、子どもへの本質的な関わり方を知る人が増えることを願っています(^^)
そうくる先生のような方が増えることを、願っています。
今後もそうくる先生の活動を応援しています。
とても、分かりやすく丁寧に書かれていて、この取り組みの重要性を感じました。
通級で指導する先生にも、また、通ってくる子供さんやそれを見守る親御さんにも、それぞれにメリットのある良い方法だと思いました。
先生のして来られた、このやり方が、もっと、もっと、多くの人に知られて、実践されると素晴らしいなぁ〜と、感じました。
ご縁があって、このような良い物を読ませて頂き、感激しています。
ありがとうございました。
先生のご活躍を応援しております。
そうくる先生の考え方や関わり方、本当に参考になりますし励みになります。ありがとうございます。
これからも参考にさせていただきます。いつもありがとうございます。