教育オピニオン
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多忙化が進む教員の方へ!タスク管理で仕事に追われない先生になろう
ヒミツキチ森学園 グループリーダー青山 雄太
2022/12/1 掲載

「仕事に追われ、今日も夜まで職員室…」
若手の先生の話を聞くと、多忙で、仕事に追われる実情が見えてきます。事実、ボクの娘の学校の職員室も、夜遅くまでライトが灯っています。

先生が仕事に追われてしまうのはなぜでしょうか。
どうすれば追われなくなるのでしょうか。

ボクは「タスク管理」という方法こそ、先生の仕事には効くと思っています。

先生が仕事に追われがちな理由


仕事に追われがちな要因は、大きく2つあると思っています。
1つは、自由裁量権がないこと。先生の仕事は授業の時間がほとんどで、授業が終わってから自由に時間を作れる時間が圧倒的に少ない。その残り時間に会議が入ることもあるでしょうから、本当に自由に扱える時間が少ないのです。

もう1つは、自分の仕事を把握できていない先生が多いのではないでしょうか。
ボクが以前、公立の小学校で「先生の時短」で講師をした時のこと、今日お話しするタスク管理の中のルーティングタスクを扱いました。「毎日、毎週、毎月、自分が最低限やらなくちゃいけないこと、やっていること」を、付箋で洗い出してもらいました。

すると、把握できていない先生がすごく多かったんです。
「あれ、俺、なんで忙しいんだろう。」
「やんなくちゃいけないことがないのに、何やってたんだ。」
やったことを思い出せないんです。
自分の仕事を、実際に書き出してからやる先生が少ないのかもしれません。しかし、自分の仕事を把握できないと、改善点が見出せないんです。
  
先生方が最大限の努力をしているのはわかっています。
ただ、「こう働きたいな」に対する現在地がぼんやりしてしまっていると、改善が生まれず、仕事に追われてしまう。
   
ボクも過去に陥っていた、とりあえず職場(職員室)にいる自分でごまかしてしまうことになってしまいがちです。

多忙化する教員の働き方に効く「タスク管理」とは?


『人生は手帳で変わる 改訂版』(キングベアー出版)には、「新たなタイムマネジメントの出発点は、時間は管理できない。管理できるのは自分自身の行動だ」とあります。そうです、スケジュールの調整だけでは、自分自身の行動管理はできません。管理するのは行動で、その自身の行動を示したものがタスクです。タスク管理とは、自分自身がやる行動(タスク)を管理するということです。

ボクは常々、学校で捨てられるものにこそ価値があると話してきました。
例えば、子どもたちの特徴を書き記した先生のノート。次の学年に引き継ぐ内容はどちらかといえばトラブル事例が多く、その子の良さやどんな時に活躍したかは引き継がれることはありません。
他には、運動会前日に書いた当日に準備する内容の一覧。振り返り、一覧にするなどすれば次年度に役立つのですが、個人で使った後はシュレッダーという場合がほとんどではないでしょうか。
    
同じように、自分がその日に何をしたかという記録は、ゴミ箱に行きがちです。
付箋で管理している人は、その仕事を終えた後の付箋は、大抵捨てられるか、貼りっぱなしで忘れられてしまいます。
まずは、自分がやったことを把握するところから始めましょう。
   
タスク管理、最初からツール(アプリなど)に頼ると続きません。まずは自分が今、取り組んでいるツールを生かしてください。
手帳に書いているなら手帳のままで。
付箋に書いているなら付箋のままで。
小さく始めましょう。

始めるにあたって考えて欲しいのは、次の2点です。

■この仕事に何分かかったのかの記録をとる
■毎日、毎週、毎月繰り返す仕事は何かに注目する

ログとルーティンがあなたの働き方改革に!


この仕事に何分かかったのかという記録を「ログ」と言います。ログを取ることで、自分が1つのことにどのくらいの時間をかけているのかがわかります

え、時間なんて気になんてしてられないって?
そうです、気にしたことがない方がほとんどです。でも仕事にかかった時間が把握できていないから、追われる感覚が拭えないんじゃないでしょうか。ある程度時間に見通しがついていれば、今日の仕事は18時ぐらいまでに終われそうだ!といった手応えがあるはずです。

もう1つは、繰り返すタスク=ルーティンに注目することです。
ルーティンタスクと言われる繰り返しタスクの良さは、実行のハードルが低いこと。そう1回経験しているものについては、人間の脳の性質からも簡単に実行できるんです。拒否反応を起こさずできるわけです。
だから、まだやったことのない仕事の間にルーティンを挟んだり、ルーティンをやってから大きな仕事に取り組んだりなどの工夫ができます。

さて実際にタスク管理をするとどんなことが起きるか、実例とともに見てみましょう。
ボクが教員をしていた自治体では、「週案」という翌週の計画を管理職に提出することになっていました。週案を書くというのは、毎週必ず行うルーティンタスクだったわけです。

最初のうちは金曜日の放課後にしていたんですが、どうもこうも疲労困憊で、終わらせるのに40分ほどかかっていました。あるとき、金曜日の朝にしてみたら、15分で終わったんですね。朝に取り組むのと夕方に取り組むのとでは、これほどまでに違うのかと驚きました。さらには、水曜日の教室で、ちょっとした時間でメモ程度に書いておくと、金曜日の朝に10分で終わるようになりました。
毎週こなすタスクが大きく改善できたんです。
         
また、放課後に疲れていてもできることはなんだろうと思うと、コミュニケーションだなぁと思ったんです。「どんな時でも放課後15分は同僚と話す」、そういうルーティンタスクを作ってみると、疲れも取れ、気持ちも楽になるのを感じました。雑談や単純作業などが放課後には適していて、思考を伴うものは全部朝にするようになりました。

こうやって自分のやった時間と内容を把握しているからこそ、改善点が見つかるんです。
みなさんもタスク管理、始めてみませんか??

仕事に追われないアイディアは手で考える


これらのタスク管理は、本来ならデジタルツールが強いところ。ルーティンなども設定しておけば、表示なども自由自在です。
しかし、いきなりデジタルツールはハードルが高いので、前述しましたが、まずは自分の慣れたものでやってみましょう。
    
ひとつおすすめを紹介させてください。
それが明治図書さんの手帳たちです。明治図書さんの手帳は、週のアイディアを各ページの横に、方眼のメモが置かれているなど、タスク管理がしやすい仕様になっています。
まずは手書きのメモを記録するのをおすすめします。手帳について取材して書いた記事もぜひ参考にしてみてください。
明治図書の教員手帳インタビュー記事
教員手帳比較

ボクは未来のことを考えるのは手帳に、そして今の思考を作るのはノートを使っています。ブログや執筆などはPCを使いますが、肝心なところは手書きの感覚が好きなんですね。きっと皆さんの中にもそういう方いるんじゃないでしょうか。
GIGAスクール構想など、これから子どもたちの中にますますタブレットなどは入ってくる今だからこそ、デジタルツールの得意分野と手書きの得意分野とをしっかりと分けてみると、面白いことが起きそうです。

タスク管理について、12月に出版する書籍でも、1章丸ごとあげて書いています。

こちらもぜひ参考にしていただければ幸いです。
多忙な先生にこそ効く、タスク管理、ぜひぜひ始めてみませんか。
 

青山 雄太あおやま ゆうた

ヒミツキチ森学園 グループリーダー
1981年横浜生まれ横浜育ち
15年間、公立小学校教諭を務めたのち、2020年に神奈川県のオルタナティブスクール、ヒミツキチ森学園(一般社団法人PLAUFUL)にてグループリーダー(担任)に就任。
「自分のどまんなかで生きる」「幸せな働き方を広め、軽やかに先生する人を全国に増やす」「家族、仲間、出会う人の未来と可能性を信じ、win-winをつくる」をビジョンに、幅広く活動中。
月10万回以上読まれているブログ「あお先生の教育らぼ」を運営する他、先生向け講座の講師やファシリテーター、現職の先生やオルタナティブスクールのカリキュラム等のコンサルなど、コミュニティを作り教育関係者の手助けをしている。
ヨガ、手帳、タスク管理など、軽やかな先生の働き方を実践・探究する。
明治図書から書籍「先生が知っておきたい『仕事』のデザイン」を12月発刊予定。

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