教育オピニオン
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学級経営に効き目抜群! 「毎日1分音読」のススメ
兵庫県尼崎市立小学校佐藤 隆史
2018/3/15 掲載

1 音読指導の学級経営への効用

 音読活動を国語の授業に取り入れて、子どもたちの表現する力や、話す聞く力を育てることは、皆さんも普通にされていることだと思います。
 しかし、音読を国語の授業だけにとどめておくのはもったいない! 音読活動を広く「声を出して、表現する活動」ととらえ、日々の教室で毎日少しずつ取り組んでいくことで、学級経営に大きな効果がもたらされるのです。

 朝のスタートの時間や、一日の終わりの時間、もちろん授業の中でも、ほんの1分か2分ぐらいでいいのです。継続して積み重ねると、まず目に見えて変化が現れるのが「声」です。まとまり揃ってくると「張り」のある声が教室に響きます。言葉にリズムが生まれ、子どもたちの情動の高まりが感じられます。

 声の力は学級の力に比例します。一人ひとりの子どもたちが活き活きと活動できる学級集団は「声」がちがいます。「声」に学級の力が現れてくるのです。音読活動を積み重ねることで、子どもたちにどのような力がついてくるのかを、私は「VOCE」(ヴォーチェ=「声」)の4文字にあてて次のように考えて取り組んできました。

V=Voice(声の力)
O=Open mind(心開く力)
C=Communication(伝え合う力)
E=Encourage(勇気づけの力)

 学級全員で教室に響く声が、少しずつですが変わっていくのを是非とも味わってほしいと思います。
 でも、学級集団としての「声」は、そんなに急には変わってきません。いつか必ず効果が現れるはず…と、信じて毎日積み重ねる。このことが実はとても難しいことなのです。我々教師は、すぐに子どもたちを「変えたい」と思ってしまうのです。効果が現れないとすぐに止めてしまうのです。どんな「力」(これは学力と言い換えてもいいかもしれません)も、継続すること、積み重ねることで身につきます。あきらめずに粘り強く、小さな工夫を加えながら積み重ねることが何よりも大切なことです。

2 学級経営に効く!「毎日1分音読」のアイデア

◆「もっと読みたい!」と思わせる音読指導
 一番大切にしたいことは「継続する」ことなので、児童に「もっと読みたい!」と思わせる仕掛けが必要です。そのために、

・声をガラリと変えて読む
動作をつけて読む
・節をつけて「歌」にする
・一気に「超高速」で読む

といった読み方をまず教師がやって見せるのです。児童はみんな嬉々として真似しようとします。

 教師がこれまで出したことのない「声色」で…例えば男性教師なら、思いっきり高い裏声を使って「上品なマダム」になって。また、若い女性教師なら、低く、ドスの効いた「親分」風に。うまくできなくても全然構わないのです。演じる教師が頭の中であるキャラクターをイメージして、思いっきりやってしまうといいと思います。頭の中でイメージした人物に似ていなくても全く問題ないのです。子どもたちは喜んで真似をしてきます。早口の得意な先生は思いっきり早口で、また、得意でない教師が、つっかえつっかえ読むのも笑いが生まれ、とても温かな雰囲気に包まれます。

◆「子どもたちをつなげる」音読指導

 全員で「揃えて」音読というのも気持ちの良い音読ですが、「テンポをずらして」とか、「一行ずつ後から追いかけて」とか、「男女で掛け合いで」とか、「ペアで」「グループで」「○月生まれの人だけで」とか、「自由に立ち歩いて、相手を見つけて」とか、いろんな協働学習的手法や、レクリエーション的手法を取り入れて、声を出す活動で「かかわる」ことの経験を積ませることで子どもたちがつながる土台をつくることができます。いつも席に座って音読・あいさつをするだけでなく、大胆に身体を動かしたり、形態を変化させて「遊び」の要素を取り入れると学級の子どもたちが「つながる」音読に発展していきます。

◆「やる気スイッチON!音読」の指導
 毎日の「あいさつ」や、「返事」も音読活動に位置づけ、毎朝1分間意識して取り組むことで、鋭く切れのよい返事や、温かな柔らかい声でのあいさつができるようになっていきます。「やる気のスイッチを皆でオン!」と、当番が声をかけて、一日をスタートさせることができます。

 ・返事「はい!」をいろんな言い方でしてみよう。
  (声を高低、長短、いろいろと変えながら)

 ・「おはようございます」
  「おーはようごーざいます」
  「おーはーよーーごーざーいーまーすー」
  「おっはよう、ごっざいっまっすっ!」

 (とにかく、いろんな言い方をまずは「教師から」言ってみる)

 こういうことをやると、教師は理屈をいいたくなりますが、とにかくたくさん子どもたちに「はい!」とか、あいさつの言葉を声に出させることです。そして、50秒言わせた最後に、一言「一番自分が出せるきれいな声で!」と、しめくくるのです。これを1ヶ月やりつづけてみるとどうなるか…それは、やり続けた人だけが味わえます。

◆大切なこと…「ほめる」
 学級経営に音読活動を使うのですから、音読が上手になることが目的ではありません。いつもいい声を出すために鍛えるのでもないのです。「返事」「あいさつ」「音読」(これに「歌」が入ると最強なのですが)で、子どもたちの心が開かれて、自分の声はもちろん、学級のみんなの声が教室に響くのを味わい(全員が教室の真ん中に身体を向けて立つのもいいですよ)、勇気づけられる気持ちが高まるために、教師はただただ「ほめる」。子どもたちの出す声を「認める」。「いい声が出てるね〜」というありきたりの評価でなく、

 「みんなの声が、先生の心を○○○○にしてくれる」
 「今日も、みんなの声がこうして聴けて、さあ、一日やるぞ! っていう気持ちになりました」

 …というような、子どもたちに熱いメッセージが送れると、また子どもたちの声が変化していきます。あまり指導しよう!と思いすぎない方がいいのです。

 ベースは子どもたちと「楽しむ」こと。子どもたちの表現や声を「面白がる」「嬉しがる」ことが大事です。そして、いったん始めたなら、何が何でも続けることです。子どもたちは先生が面白がっていると、楽しんでいると、同じ事でも飽きないでやります。飽きてくるのは教師の方なのです。

 新たなスタートをきる4月。ぜひ、継続して音読活動を学級経営のアイテムとして取り入れてみて下さい。

佐藤 隆史さとう たかし

1961年、大阪府生まれ。神戸大学教育学部卒業。
兵庫県尼崎市(国語)マイスター教員。
「教室音読の復権」を合言葉に、近隣の小学校・幼稚園で年に十数回講演や出前授業を実施。教師サークル「朴(ほお)」主宰。授業力向上を目指し、月1回程度、定例会を開催。

コメントの一覧
6件あります。
    • 1
    • 井関瑞季
    • 2018/3/20 21:02:42
    一気に読みました。「教師はすぐに効果を求める」というところに共感しました。大切なのは継続すること。その時その時に全力で打ち込めば、力がついてくることを感じました。もうすぐ新学期が始まりますが、紹介して頂いた音読の実践を少しずつ取り入れて、より良い学級づくりに繋げていきたいです。
    • 2
    • 6年目
    • 2018/3/21 15:41:28
    教壇にたって6年たちますが、これぞまさに、私が目指している教育だと、感動しました!
    振り返ってみると、自分は「指導」が先走ってしまい、子どもたちのうちから出てくる声を聞くこと、それをほめることが十分にできていなかったように思います。4月からは、まずは自分が楽しむ!そしてほめる!を心がけ、子どもたちの様々な声を聞いていきたいと思いました。早く実践してみたいです‼
    • 3
    • 10年目
    • 2018/3/21 15:44:29
    佐藤先生の音読を実践してみたくなりました!
    • 4
    • 名無しさん
    • 2018/3/21 22:00:23
    音読で声を出すことに慣れたクラスは、授業中の子ども達の発表が活発になることを実感することができました。次の学年でも、読んだことを実践していきたいです
    • 5
    • 12年目
    • 2018/3/22 14:26:38
    楽しそうな子どもたちの姿が想像できました。来年度是非やってみたいです。
    • 6
    • ますーだ
    • 2018/3/29 9:16:33
    以前、佐藤先生から音読の効果を聞いて、一昨年と昨年度、朝の会で音読をしてみました。どちらも1年生。読みやすくて楽しくなる、リズム感のある詩を選びました。
    子どもたちが、「次は何ー!」と楽しみにしていたのと、朝の目覚め、一体感、言葉の獲得に効果があったと感じます。
    今年は、朝の会に他のコンテンツも入れていて長引くので、1学期でやめてしまいました。しかし、授業に音読はつきもの。音読が楽しいと、授業が楽しくなることを実感しました。
    この記事にある
    すぐに結果を求めないことと、
    佐藤先生がほめる時の熱いメッセージ。
    真似して楽しみたいです!
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