QA解説 「特別の教科 道徳」の授業づくり
教科化時代が来た! 新しい道徳授業の創り方を解説します。
QA解説 「特別の教科 道徳」の授業づくり(6)
問題解決的な道徳授業 実践講座
筑波大学附属小学校教諭加藤 宣行
2015/11/30 掲載
  • 「特別の教科 道徳」の授業づくり
  • 道徳

B先生

 これからの道徳の授業には、問題解決的な学習を取り入れる必要があるということでした。これまでの授業から変えていくための改革案としての趣旨は一応理解しましたが、具体的にどのように展開していけばよいのかがはっきりしません。実際に導入はどうしたらよいのか、展開部分で留意することは何なのかなど、授業レベルで教えていただけるとありがたいです。

加藤先生からのアドバイス

 問題解決すべき「問題」は本来子ども自身の「問い」であるべきです。
 しかし、最初から問題意識をもって学習に臨む子どもはまれでしょう。ですから、はじめの刺激や問題提起は教師がしても構いません。
 子どもに主導権を任せきりになるのもよくありませんし、かといって、教師が強引に引っ張りすぎるのも考えものですね。
 というわけで、次のようなステップを踏んだらどうでしょうか。

【問題意識を醸成し、解決に向かって有意義な話し合いを展開するための3ステップ】
@本時のテーマとなるような「問題」を教師の方から提示する。
A問題を解決するための予想を立て、それをもとに教材を読み、照らし合わせる。
B照らし合わせることによって生じた新たな疑問や問題点を洗い出し、話し合いを進める。
(必要に応じて教師の方が新たな観点を提示したり、子どもたちに深く考えさせるための問い返しをしたりする)

解説

 このような問題提起・問題意識から授業を始める場合、その後を従来の展開で流してしまうと意味がありません。例えば、「よい友達って、何をしてくれる人のことだろう」という「問題」が生まれたとします。それを受けた発問は「この教材の中に『よい友達』のヒントになる友達関係はあるだろうか、自分たちの力で見つけよう」ということになります。
 そのような問題意識から教材(資料)を読むからこそ、「あ、わかった」「見つけた!」となるわけです。そして、「あれ?もしかしたら『何かをしてくれる』ということではなさそうだぞ」とか、「何かをしてくれないことも『よい友達』の条件に入るのかもしれない」などというように、はじめの「問題意識」は授業の中で次第に醸成され、変化していくはずです。その一つ一つに丁寧に向き合い、必要な問い返しをしながら子どもたちの考えを練り上げていき、一つの結論に導いていくことが教師の指導でしょう。
 だからこそ、前述したように、これまでのような心情を追うだけの展開や、ただ単に教師が提示した共通課題を全員で話し合い、発表し合うだけの展開では限界があると思うのです。
 次に、@の問題提起の仕方、バリエーションについて述べたいと思います。

【子ども自身の道徳的な「問い」を生むための3パターン】
@教師提案型…既習事項に対する揺さぶり
 「あれ!?知っているつもりだったけど、わからなくなってしまった!」
A児童主体型…「アンケート」や「日記」などで拾い上げ、子どもの意識を喚起する
 「友達と仲直りしたい。どうしたらいいのかな…」
B児童主導型…子どもの日常体験を充実させ、そこから生まれてくる問題を取り上げる
 「先生、これはどういうことなのかな?今度話し合いをしてください」
 「先生の考えを聞かせてください」

 このように、最初は教師主導で子どもたちの問題意識を刺激することからはじめて、次第に子どもたち自身の主体的な活動にシフトさせていくようにします。どれを使うかは、学習内容によって必要に応じて使い分けるということになるでしょう。低学年だから必ず@で行わなければならないということもありません。
 例えば、1年生でも次のような問題意識で教師に問いかけてくることがあります。

 「ないていたおんなのこ」
 あさ、クラスはちがうけれど同じ1年生の女の子がちゅうおうげんかんでないていました。ちこくしちゃったみたいです。こんなときって、ずっとやさしくして(あげて)いるのと、(だまって)みていくのとどっちがいいのですか?こめんとをふたつかいてください。(A子)

 A子さんは、あまり親しくはないけれど同じ学校の友達である女の子に対して、自分はどういう対応をしてあげることが、一番よかったのか、友達としてふさわしいことは何なのか、人に優しくするとはどういうことなのかということについてはたと悩み、考えようとしているわけです。このA子さんの問題意識にどう向き合い、道徳の授業としてできることは何でしょうか。それを考えるのが、私たち教師の問題意識であり、それを子どもたちと授業で話し合っていこうとすることが、問題解決的学習の入り口ではないでしょうか。

●子どもとともに「問い」を作る
初めは教師主導で。授業の中で子どもたちの問題意識を引き出し、共通課題として醸成する。
●「問い」に対する気づき、わかりを子どもの言葉でまとめる
共通課題として創り上げた「問い」に関して、一つの見解を見出し、それを子ども自身の言葉でまとめさせる。板書を効果的に使うこともポイント。

 問題解決的な道徳授業、これからの「深く考え、議論する」道徳授業とはどういうものか、そのような授業を行う上での効果的な板書や、道徳ノートの使い方に関しては、次号で触れたいと思います。

加藤 宣行かとう のぶゆき

東京生まれ。
神奈川県津久井地区公立小学校教諭を経て、現在、筑波大学附属小学校(道徳部)教諭。
筑波大学・淑徳大学講師。

(構成:茅野)
特集 「特別の教科 道徳」
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