著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
GIGAはコロナ対策ではありません!子どもたちの創造力を育てるためのツールです!
北海道札幌市公立小学校教頭朝倉 一民
2021/6/18 掲載

朝倉 一民あさくら かずひと

北海道札幌市公立小学校教頭。
月刊誌『社会科教育』で、「1人1台端末も有効活用!板書&資料でよくわかる授業づくりの教科書」を連載中。
主な著書に、『主体的・対話的で深い学びを実現する! 社会科授業ワーク大全』シリーズ(明治図書、2020年)、『板書&展開例でよくわかる 社会科授業づくりの教科書』シリーズ(明治図書、2018年)などがある。
【所属・資格】北海道社会科教育連盟、北海道雪プロジェクト、北海道NIE研究会、IntelMasterTeacher、NIEアドバイザー、文科省ICT活用教育アドバイザー

―2020年初頭から感染が拡大した新型コロナウイルスの影響などによって、ICT活用やGIGAスクール構想への取り組みの意識が高まり、1人1台端末の支給も前倒しとなりました。これから1人1台端末時代の授業づくりに取り組むにあたって、本書の書名にもある「はじめの一歩」となるのは、どのようなことでしょうか?

 良くも悪くも、コロナ禍のために1人1台端末が一気に整備されたことは事実であり、当初の計画のように段階的に配備ということではここまで機運は高まっていなかったでしょう。その反面、1人1台端末が「コロナ禍」のための、緊急時に備えてどう使うかということに重きが置かれているような気がします。
 僕としては、子どもたちが自分たちで学びを深めていくような学習フィールドを教師が提供し、プロジェクト型学習やSTEAM教育といった新しい授業デザインを創造していくための、先生たちのICTを活用した授業の日常化が第一歩だと考えています。

―本書の第3章では、「GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代のICT環境づくり」として、実物投影機、大型スクリーン、OAラック、クラウド共有フォルダ、デジタル教科書、電子黒板ユニット、授業支援ソフト、ホワイトボードなど、必要な環境、準備しておくとよいものについて、詳しく解説いただいています。環境構築については、うまくいかずに困っている学校もあるとうかがっていますが、スムースに進めるポイントがあれば、教えて下さい。

 環境を整えるということはお金がかかります。学校にはお金がないとよく言いますが、ないわけはありません。ただ、予算の執行が前例主義になっていることが多いです。
 カリキュラム・マネジメントは、教科横断的な視点、PDCA評価の視点と人的物的リソースの視点です。つまり学校の課題解決のためにどこにお金を使うかということを、学校長を中心に実働部隊が積極的に予算計画を提案する「行動力」が大切だと思います。

―第4章では、「子どもと教員が身につけるべきICTスキル」について、まとめていただいています。本書の中で朝倉先生も触れられていらっしゃいますが、実際に授業を始める時に、子どもたちのICTスキルには差があり、困ることがあるようです。この点については、どのように支援・指導していくことが大切でしょうか。

 当然児童には差があります。しかし、GIGAの個別最適化の理念から考えるとICTスキルの差は、日常的に使うことで改善していくと思います。
 大切なことは学校できちんと情報教育カリキュラムやスキルチェック表を作成し、1年生から指導を系統的に進めることです。また、家庭とも共有することで、自宅でもPCやキーボードやマウス、タブレット端末等を使う機会が増えていくようにしたいものです。

―本書の第5章では、先生方が特に気にされている「評価」について、解説いただいています。学習指導要領解説では、「指導と評価の一体化」というキーワードも挙げられていますが、先生方の関心の高い「評価」について、ポイントを、教えて下さい。

 学校現場はほとんど「総括的評価」にしばられています。特に小学校は通知表作成のために、保護者のクレームを予防するために評価材料をたくさんそろえて、採点等に時間を奪われています。しかし、大切なのは「形成的評価」です。
 毎時間、指導の視点(評価の視点)をもっていれば、子どもに掛ける言葉が明確になります。ルーブリック評価を使えば、子どもとも共有して、指導効果を高めることができます。ミニテストなどは1人1台端末で配付も採点もできますし、蓄積も確実です。
 通知表の材料ではなく、子どもたちに力をつけるための評価になるように、ICTを活用した評価を積極的に行ってほしいです。

―最後に読者の先生方へ、メッセージをお願い致します。

 現在、教頭職となり、担任をもって毎日授業することもなくなりました。コロナ禍でも多様な子どもたちを指導する担任の先生のご苦労はとてもよくわかります。
ただ一方で、1人1台端末の実現で毎日、これまでできなかった授業ができるようになることが、うらやましくも思います。使っても使わなくてもいいとか、アナログ派とかそういうことではなく、これは教育の進化です。社会というOSのアップデートなので、ソフトであるわたしたち教員もまたアップデート(学ぶ)しなくてはならないのです。それはわたしたち「学びのプロ」である教員の使命です。
 いつまでもアイコンバッジを表示させていないで、自分自身のアップデートをどんどん進めていきましょう。学ぶ姿を見せることが最大の指導効果です。

(構成:及川)

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