著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
学習ツールの活用で、「国語科の本質的な学び」を生み出す!
新潟大学附属新潟小学校中野 裕己
2021/6/29 掲載
 今回は、中野裕己先生に、新刊『教科の学びを進化させる 小学校国語授業アップデート』について伺いました。

中野 裕己なかの ゆうき

新潟大学附属新潟小学校教諭。
1986年新潟県生まれ。新潟市公立小学校教諭を経て、現職。
「“子どもの言葉”で学びを進める」ことを大切に、国語科授業づくりに取り組んでいる。『教育科学国語教育』(明治図書)、『板書&イラストでよくわかる!365日の全授業 小学校国語』(明治図書)などに原稿執筆多数。Google Educator group Niigata cityリーダー。教員サークル「言葉と授業の研究会」代表。教員サークル「新潟音読研究会」所属。

―まずは、本書の内容について、簡単にご紹介をお願いします。

 本書の内容の中核は、「国語科の本質的な学びを生み出す」学習ツールの活用です。国語科の特性を踏まえて、シンキングツールやICT(1人1台端末)といった学習ツールの活用法を提案しています。具体的には、教室の授業、オンライン(遠隔)授業、家庭学習の3つの場面を取り上げています。また、どの場面でも、従来の指導(before)→学習ツールを活用した指導(after)のようにして、対比的に事例を紹介していることが、本書の大きな特徴の1つです。シンキングツールやICT(1人1台端末)を活用することの効果や価値を、実感できる内容になっていると思います。

―本書の書名、キャッチコピーにある、「教科の学びを進化させる…」「教科の本質を捉えた…」とは、具体的にどういうことでしょうか?

 シンキングツールやICT(1人1台端末)は、「慣れさせる」ための使用は広く行われているものの、教科の学びにどう位置付けるかということについて、難しさを感じられている先生方が多いと思います。本書では、「国語科とは、どのような教科か」という国語科の特性を踏まえて、あくまで国語科の学びに有効に働く学習場面で活用することを大切にしています。国語科は、子供が日常的に使用している言葉そのものを学習対象とした教科です。子供一人一人には、それぞれに異なる言語生活があるわけですから、言葉への認識は少しずつ異なっています。そのような違いを「見える化」したり、違いを引き出したり、違いを伝え合ったりするために、シンキングツールやICT(1人1台端末)を活用するのです。

―本書では、ICT(1人1台端末)を活用した事例が豊富に紹介されています。GIGAスクール元年といわれる今年度、1人1台端末環境での授業にまだ慣れない先生方も多いと思いますが、そのような先生方に、本書をどのように活用してほしいですか?

 ICT(1人1台端末)を授業に取り入れるためには、まず使ってみることが大切です。そして、どの学習場面でどのように活用すればよいか、ということを考えていきます。そのためには、ICT(1人1台端末)の機能を解釈することが必要になります。本書では、ICT(1人1台端末)の機能を、「多様なコンテンツの作成」、「整理・分析」、「共有」といった3つに整理して解釈しています。国語科という、多くの先生方が日々授業する教科を通して、3つの機能がどのような学習場面で有効に働くかをお伝えしたいと思っています。そして、国語科はもちろん、他教科での活用にもつなげていただけたらと思っています。

―「オンライン授業編」では、対面授業とオンライン授業を組み合わせた授業のポイントや事例が紹介されていますが、従来の対面のみの授業と比べたメリットとはどんなところでしょうか。

 ズバリ、「学びを教室に限定しない」ということに、メリットがあると考えています。もちろん、教室で学んだ続きを家庭で行うということは、ICT(1人1台端末)がなくても可能です。一方で、家庭にいながら、教師と子供、子供と子供のつながりを保ち続けることには、難しさがありました。しかしながら、ICT(1人1台端末)を活用することで、端末を介して他者とのつながりを保ち続けながら、教室と家庭で学びをつなげることが可能になります。そうすることで、友達の考えを確認しながら考えたり、調べたことを共同でまとめたりするような学習を、家庭でも継続して進めることができるのです。また、教師にとっても、端末上で子供の学習状況を確認してから、翌日の授業を構想できるということは、大きなメリットになると思います。

―最後に、読者の先生方にぜひ一言、お願いいたします。

 シンキングツールやICT(1人1台端末)は、子供の学びを変える魅力的なツールです。一方で、教科の学びの視点から見ると、あくまでも学びを支える方法と捉えることもできます。これまで私たちが大切にしてきた教科の学び、国語科であれば「言葉の力」をつけること、このことに何ら変わりはありません。これまでの授業を基点として、「どこで使うか」、「どのように使うか」を考えることが大切だと思います。
 本書が、先生方のICT活用、そして「国語授業アップデート」に、少しでもお役に立てば嬉しいです。

(構成:大江)
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