- はじめに
- OS(社会)のバージョンアップとアプリ(職業)のアップデート
- 第1章 ICTで変わる学校研究
- なぜICTは研究ベースにのりにくいのか?
- 1 これまでの学校研究
- 2 ICTを研究ベースにのせる
- COLUMN 効率的で効果的な学校研究を
- 第2章 社会科とICT
- 社会科におけるICT活用の意義
- 1 学習指導要領と社会科教育におけるICT
- 2 調べまとめる技能とICT
- 第3章 GIGAスクール構想で変える! 1人1台端末時代のICT環境づくり
- GIGAスクールに合わせて準備したい環境構築
- (1) 実物投影機
- (2) 大型スクリーン
- (3) OAラック
- (4) クラウド共有フォルダ
- (5) デジタル教科書
- (6) 電子黒板ユニット
- (7) 授業支援ソフト
- (8) ホワイトボード
- COLUMN 教室ICTの歴史
- 第4章 子どもと教員が身につけるべきICTスキル
- そもそもどの程度のICTスキルが必要なの?
- 1 情報活用能力の体系
- 2 教師が身につけるべきICT活用指導力
- 第5章 形成的評価と総括的評価
- ICTをつかって満足していませんか?
- 1 形成的評価
- 2 総括的評価
- 第6章 ICTを取り入れた社会科授業づくり
- 1 社会科における授業開き
- ICTをつかって授業開きはいかがでしょう?
- 2 社会科におけるフラッシュ型教材の作成
- 重要語句の定着にはフラッシュ型教材の活用がオススメ!
- 3 ICTを活用した調べ活動
- 今や調べる活動の中心はインターネット!
- 4 社会科におけるデジタル新聞を作成しよう
- 字の汚さはもう気にしない! 内容で勝負! デジタル新聞
- 5 ICTを活用して問いを生む
- 効果的な問いを生むためにもICTは重要です!
- 6 社会科におけるプレゼンテーション活動
- 思考や選択・判断を表現するにはICTプレゼンテーション!
- 7 1人1台端末でつくる社会科授業
- 1人1台で社会科は何をする?
- 8 社会科における動画制作
- 今やYouTuberもお手本です!
- 9 社会科におけるデジタル教科書
- デジタル教科書で効率的な授業をしよう!
- 10 社会科と協働学習
- 学級みんなで書き込み,分類し,考える
- 11 ICTを活用したシンキングツール
- ICTで考える力を育てよう!
- 12 ICTを活用した評価
- 評価もICTで効率的に! 働き方改革!
- 13 社会科とオンライン授業
- オンライン授業に挑戦!
- 14 社会科とオンライン学習
- 家庭学習で活用しよう!
- 15 ICTを活用した遠隔授業
- ICTを活用すれば教室が広がる
- 16 社会科におけるプログラミング
- 社会科でプログラミングに挑戦!
- COLUMN Society5.0と第4次産業革命
- 第7章 すぐできる! ICT活用社会科
- 3年
- わたしのまち みんなのまち
- 地図サイトの画像を配付して,まちの特徴を書き込もう!―提示・協働
- 授業開始の3分! 地図記号はフラッシュで習得させよう!―提示
- 農家の仕事
- 自慢の農作物にポップをつけよう!―スライド作成
- 工場の仕事
- 原料が製品に変わる工程を調べよう―ワークシート配付
- 店ではたらく人
- 買い物調べをしよう!―ワークシート配付・共同編集
- スーパーの工夫を見つけよう―デジタルカメラ・ワークシート配付・共同編集
- 火事からくらしを守る
- 校内の消防施設を見つけよう―デジタルカメラ・ワークシート配付・共同編集
- 消防車の配置を提案しよう!―ワークシート配付・共同編集
- 事故や事件からくらしを守る
- 事故発生! その時,誰がどうするの?―提示・配付
- 4年
- 県の広がり
- 学習者用デジタル教科書―学習者用デジタル教科書
- 水はどこから
- 水はどこからやってくるのかを予想しよう―描画
- 浄水場のしくみをプログラミングで表現しよう!―Scratch
- ごみのしょりと利用
- 原料が製品に変わる工程を調べよう―ワークシート配付
- 地震からくらしを守る
- 防災リュックに何を入れようか?―ワークシート配付・共同編集
- 残したいもの 伝えたいもの
- 地域の歴史をホームページにしよう―Google サイト・共同編集
- 5年
- わたしたちの国土
- いろいろな地図を活用しよう―Google Maps・地理院地図
- 日本の国土 低地と高地
- 低地に住む人達の生活を想像しよう―国土地理院標高図
- 国土の気候の特色
- 日本各地の雨温図を作成しよう―雨温図作成サイト
- 米づくりのさかんな地域
- なぜ,田んぼの形が変わったの?―画像配付
- 水産業のさかんな地域
- カツオの一本釣りって?―動画視聴
- 自動車をつくる工業
- 未来の自動車を考えよう―Scratch・プログラミング
- 情報を生かすわたしたち
- 情報活用宣言しちゃいます!―Google サイト・ホームページ作成
- わたしたちの生活と森林
- 森林クイズをつくろう!―Scratch・プログラミング
- 6年
- わたしたちの暮らしと政治
- コロナ禍で国はどう動いたか?!―Google スライド
- わたしたちの暮らしと政治
- キッズコメントを送ろう!―Google ドキュメント
- 国づくりの歩み
- 銅鐸の絵を解読しよう―Google スライド
- 天皇中心の国づくり
- 古代日本確認テスト―Google Forms
- 武士の政治が始まる
- 元寇の様子を読み取ろう―授業支援ソフト
- 戦国の世から天下統一へ
- 戦国武将の生涯を伝えよう―Google スライド
- 江戸幕府と政治の安定
- 歴史人物レポートを作成しよう―Google ドキュメント
- 明治の国づくりを進めた人々
- 文明開化記述問題をつくろう!―Scratch・プログラミング
- 長く続いた戦争と人々のくらし
- 戦争体験のお話を聞こう―Webサイト
- 世界の中の日本
- SDGsを意識したCM動画を作成しよう―ビデオカメラ・編集ソフト
- おわりに
- 社会科とICT
はじめに
OS(社会)のバージョンアップとアプリ(職業)のアップデート
―教育のマインドセットの改善―
2020年度から小学校で施行された「学習指導要領」は予測困難な社会の変化に主体的に関わり,よりよい社会と幸福な人生の造り手となる力を身につけることが重要視され,それが「資質・能力」とされました。「何を学ぶか」ということだけではなく,「何ができるようになるか」というマインドセットが必要となりました。これまでのような「教科書の知識」だけを教えるのではなく,子どもたちの学び方も改善していく必要がある……これが「アクティブ・ラーニング」という言葉で数年前に世の中を駆け巡りました。
およそ10年に一度改訂される「学習指導要領」は,ICTの発展とともに社会への認知のされ方も大きく変わっています。2017年の改訂は,保護者にも,先生たちにも,子どもたちにも,教育に直接関係ない人にも,施行前に大きく広まった改訂だったと言えます。明治,戦後以来の大きな「教育改革」は「予測困難な社会」への準備でした。
○ 予測困難な社会が同時にやってきた……
しかし,その予測できない社会は改訂版施行と同時にやってきました。2020年,全世界を大混乱に陥れた「新型コロナウイルス」の感染拡大です。1月の感染者の判明から1ヶ月ちょっとで「全国小中高校の臨時休校」,そして4月になってからは「緊急事態宣言」が発令され,「特定警戒都道府県」とされた13都道府県は5月末まで臨時休校となりました。まさに歴史的な出来事となり,2017年版学習指導要領施行と同時にやってきた「予測困難な社会」に多くの学校が太刀打ちできませんでした。
学校に来ることができなくなった子どもたちに学びを届けるには限界がありました。いくつかの学校ではオンライン授業などを行っているところもありました。しかし多くの学校では,担任がプリントをもって各家庭にポストインしたり,靴箱をポスト代わりにして取りに来てもらったりとアナログな対応が中心であったと思います。こんなときに多くの教師が「ICTを活用できたなら」「各家庭に十分なICT環境があったなら」「子どもたちがICTをつかえるスキルを十分にもっていたなら」と思ったことでしょう。世界各国と比べても,わが国の教育におけるICT活用は低い水準を示しています。
この予測困難な社会の到来が,また予測できない未来を引き寄せました。かねてより計画中であった「GIGAスクール構想」による1人1台端末の前倒しです。当初は小学校5,6年生,中学校1年生に配付予定だった端末がすべての学年に配付されることになりました。この本が発売される頃には,すでに全国すべての小中学校に1人1台の端末が揃っていることでしょう。
○ ICTを効果的につかう授業力・授業観
そこで,この本を手に取った先生たちは,ICTを活用し,効果的な授業ができているでしょうか? ICTが教育の現場に入りはじめてから,もう10年以上経ちますが,現場では,まだまだ「黒板を中心とした一斉授業」「いつもチョークアンドトーク(違う意味のICT)」の授業が圧倒的に多いです。多くの先生たちは,そのような授業を受けて育ってきたわけですから,当然と言えば当然です。しかし,いよいよ子どもたち一人ひとりにICT端末が渡りました。鉛筆,ノート,ICT端末という感覚で授業をすることが求められています。
社会というOSが,完全にバージョンアップしました。これにともない多くの行政や企業といったアプリは仕事のやり方をアップデートしています。学校も例外ではありません。われわれ教師のアップデートが求められています。何から何までICTをつかいましょうということではありません。ただ,全くつかいませんというのも問題です。ICTをつかえば効果的だという授業観を増やしていくことが大切です。例えば,子どもたちに資料提示をするには,拡大印刷したものを提示するより,大きな画面に提示した方が必要に応じた拡大などもでき効果的です。子どもたちに資料を配付するときは,何十枚も印刷するよりは端末にデータを送った方が効果的です。子どもたちの考えを,机間巡視しながら評価するより,教師側の端末から覗き込んだり,友達同士でも確認できたりする方が効果的でしょう。
そして何より,ICTをつかうと効率的になります。子どもたちの記録(ログ)を自分の端末からいつも覗くことができ,評価できます。ミニテストの採点も,ふりかえりの記述もすべてICT端末上で評価できます。もう子どもたちのノートを抱えて家に帰る必要はありません。今よりも,だんぜん“楽”になります。「先生の直筆のコメントを書いたほうがあったかい」「目が悪くなる」「まずは鉛筆でしっかりとした字を」などなど,様々な意見があります。新しいものが入ってくると必ず,古いものが過大評価されます。数値では表せない肌感覚を大切にする学校では,できるかぎり先生の声で,字で,子どもたち一人ひとり平等に手をかけながら,手間暇をかけることが美とされてきました。それが愛だとも。
○ ICT活用が働き方改革につながる
これまでの日本の教育を真っ向から否定するつもりはありません。むしろそれは間違いで,これまでの教育のベースの上にICTの活用があるべきです。デジタルかアナログかの二項対立ではなく,ICTを学ぶことがすべての教員に必要になってきます。はじめは抵抗があるかもしれません。苦手意識が強くある先生にとっては大変かもしれません。ただ,最初のハードルを超えたら,これまでよりも快適な授業力が身につくはずです。そしてそれは,働き方改革にもつながります。本書はそうした授業観を広げるために社会科の学習を通して理論や実践をまとめました。まずはICTで社会科を変えましょう。
2021年6月 /朝倉 一民
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- 明治図書
- とても読みやすく参考にさせて頂きました。2023/12/320代・学生
- わかりやすい2023/11/420代・幼保教員
- タブレットが導入され、ICTを活用する場面を考える参考になった。2021/7/2620代・中学校教員
- どのような場面でどのような機能を生かしていくことができるのか、多くの事例から学ぶことができました。2021/7/2240代・小学校教員
- 社会科授業の中でどのようにICTを活用していけばよいかを知ることができた。2021/7/950代・小学校管理職