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自立した学習者を育てるには、授業が充実しないといけません。
自立した学習者は、自分で問題を設定し解決するという探究を行うことができます。
また、仲間と協働して難しい問題を解決することもできます。
このような力は、単に「チームで課題を解決させる」というような「学習形態」を採用するだけではつけることができません。
大切なのは、授業の「中身」と「方法」両方の充実です。
学習形態は、単なる学習の仕方という「形式」に過ぎません。
つまり、「どう授業をつくり」「どう指導を進めるのか」を知ることこそ大切なのです。
全面実施された学習指導要領の趣旨は、授業の質を高めたうえで、子どもの「資質・能力」を伸ばすことにあります。
本書では、このように授業の質を高めようとしたときに生じる様々な疑問や悩みに、原因(WHY)と方法(HOW)の2つの視点から答えています。授業の質を高めるには、「なぜそうなる(する)のか」という根本的な原因や理由も理解しておく必要があるからです。
本書の冒頭で示したのは「授業方法、授業技術」(第1章)です。そもそも理科の授業をどのように進めればよいのかと、それにかかわる授業技術について解説しています。
次に、「カリキュラムマネジメント、授業構成」(第2章)について解説しています。具体的には、単元計画の立て方、年間指導計画の立て方、言語活動、環境教育、探究型の理科学習の組み立て方などを紹介しています。
続いて、「教材開発、教材研究」(第3章)です。教材開発の視点、探究型の教材開発、モデル図やイメージ図の活用法、ものづくりの進め方、理科を学ぶ有用性の指導法などを紹介しています。
その次が、「観察・実験」(第4章)です。子どもが実験方法を発想したり試行錯誤したりする場面はどうすればつくれるか、といった疑問や悩みに答えています。
他にも、「資質・能力」(第5章)、「話し合い活動」(第6章)、「評価」(第7章)の3章が設けられており、全体を通して理科の授業において重要な視点がすべて網羅されています。
単元の最初に自然体験を用意するだけで、子どもは喜びます。ですが、「調べてみたい」と思わせることで、より自然体験に熱中します。
ポイントは、「調べてみたい」「明らかにしたい」という気持ちを引き起こすことです。
そのやり方の1つとして、「実はわかっていない」ことに気づかせる、という方法があります。
「風でものが動く」ということは、小学3年生でも知っています。でも、風が強くなると、動く距離がどの程度変わるのかと問われると、よくわかりません。
このように、「知っている」と思っていることの中にも、問われてみると「実はわかっていない」ことが隠れているものです。
おもしろいことに、「知っている」と思っている内容が、子どもによってバラバラということもあります。みんな違う理解をしているのです。だからこそ、単元の最初に子どもたちの考えを出し合うことが大切になります。話し合っているうちに、「実はわかっていない」ことがあると気づくのです。
最初の自然体験に興味をもって取り組ませる方法は他にもたくさんあります。本書で、それらをすべて紹介しています。
先述の通り、本書は、理科授業の質を高めようとしたときに生じるであろう様々な疑問や悩みに、原因(WHY)と方法(HOW)の2つの視点から答えた本です。
その中で、「理科授業がうまい人は、どういう考え方で授業を進めているのか」「教材開発が得意な人は、どういう考え方で教材を開発しているのか」といった、これまで“隠し財産”のようになっていた「知恵」をそのまま公開しています。
本書が、類書と決定的に違うのは、「理科授業に困っているのはどういう理由からなのか」の根本的な説明があり、さらに、「具体的にどうすれば理科授業を充実させられるのか」の具体的な解説があることです。このようなわかりやすい本は、今までどこにもありませんでした。
新しい年度に向けて、冬休みに、ぜひ本書を手に取っていただければと思います。