著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
こんなときこそ、心のクスリである音楽を子どもたちに!
埼玉県戸田市立戸田東小学校小梨 貴弘
2020/10/10 掲載
 今回は小梨貴弘先生に、『こなっしーの音楽授業をステキにする100のアイデア』について伺いました。

小梨 貴弘こなし たかひろ

 1972年東京都出身。東京都立竹早高等学校、武蔵野音楽大学音楽学部器楽科(ホルン専攻)を経て、文教大学教育学部中等教育課程音楽専攻卒業。現在、埼玉県戸田市立戸田東小学校教諭。

―本書では、音楽専科の先生だけでなく学級担任の先生もご活用いただけるような、様々なジャンルにかかわる授業や行事などのアイデアをご紹介いただきました。今回の書籍に込められた想いについてぜひお伺いできればと存じます。

今までにない、音楽教師の「虎の巻」をめざして
 音楽科には教科指導に焦点を当てた本はたくさんありますが、教科運営、教室環境、教科にかかわる人との人間関係づくりなど、音楽に携わる教師にとって必要な基礎的スキルにまで踏み込んだ本は、今まであまり見かけなかったように思います。
 この本は音楽科のすべての業務にかかわる様々なアイデアを網羅する、音楽教師のいわば「虎の巻」のような本になる、と考えています。日々お仕事を進める中で、一つでも参考になるものがあれば嬉しいです。

―本書のアイデアのうち、特にオススメの一項目は何ですか。

Withコロナ、Afterコロナの世界で役立つものをめざして
 オススメと言うべきかわからないですが、この本は今回のコロナ禍をまたいで執筆しており、感染の拡大によって大きな影響を被った音楽の授業を今後どのように進めていくべきか、意識して執筆した項目があります。今後はあらゆる災難に備え、「どこでも受けることができる授業」を意識した、いわゆる「ハイブリッド型学習環境」の整備が進みます。音楽の授業でもICTの積極的な活用など、こうした時代の流れを意識した対応を求められるでしょう。本書で紹介している項目が、そのヒントになればと思っています。

―新しいアイデアを生むためのコツなどありましたら教えてください。

匠の技を自分のものに!
 何もないところから生み出そうとするのではなく、まずは先輩教師の行動を上手に「真似」することから考えてみてはどうでしょうか。繰り返しているうちに、「こうしたら子どもの反応がもっと良くなった」とか「子どもの動きがスムーズになった」と気づくことがあるはずです。そして、常に新しい教育情報にアンテナを張り巡らせ、今まで行ってきた実践に新しく知った教育技術を結びつけることによって、オリジナリティをもつ新たな価値(アイデア)を生み出すことができるのだと思います。

―タブレットPCで楽譜を表示することなども音楽の世界では珍しい景色ではなくなりましたが、これから音楽科では、どのようなICT活用の工夫ができるでしょうか。

音楽の潜在力を引き出す、効果的な使い方を
 ICT機器を上手に活用することで、視覚、聴覚の両方から子どもたちに訴えかけることのできる、魅力的でテンポ感のある授業を展開することができるようになります。また、学校行事などで子どもたちの演奏に花を添えたり、業務の効率化を図って教師の負担軽減を行ったりすることもできるでしょう。
 しかし、音楽科が向かうべき活用法はさらにその先で、ICTをいかに「音楽を感じ取る」道具として活用できるかであると考えています。音楽づくりでは今までにない音をつくり出して演奏することができますし、生の楽器の音色のよさに気づかせるために、あえてデジタル音を引き合いに出す、という使い方も考えられるでしょう。アナログ、デジタル双方の持ち味を活かし、互いの良さを引き出すことができる…そうしたICTの活用を目指したいものです。

―読者の先生方へ向けて、最後にメッセージをお願いいたします。

こんなときこそ、心のクスリである音楽を子どもたちに
 世の中がどんなに変化しようとも、音楽に携わる教師の一番の仕事は「音楽をする愉しさを伝える」ことなのだと思います。私が書いたすべての項目に共通して言えることは、「子どもたちが音楽を心から愉しむために、教師はどのように行動したらよいかを考える」ということです。現在、コロナ禍によって子どもたちの心は疲弊しています。こんなときだからこそ、音楽が「心のクスリ」になることを伝え、子どもたちの目線になって一緒に音楽を愉しみ、学び合いながら、子どもたちの心を癒やしていきましょう。
 皆様が創り出す音楽の授業がよりいっそう「ステキ」なものとなるために、本書が少しでもお役に立てれば幸いです。

(構成:赤木)
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