著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
道徳教育の真の実質化へ向けて取り組もう
京都産業大学教授柴原 弘志ほか
2018/7/18 掲載
今回は柴原弘志先生・荊木聡先生に、新刊『中学校 新学習指導要領 道徳の授業づくり』について伺いました。

柴原 弘志しばはら ひろし

京都市立中学校教員を経て,京都市教育委員会学校指導課指導主事(主として道徳・特別活動領域担当)。
平成13年から文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官。その後,京都市立下京中学校校長,京都市教育委員会指導部長等を経て,現在,京都産業大学教授。

荊木 聡いばらき さとし

昭和44年生まれ。大阪教育大学卒業,兵庫教育大学大学院修了。
文科省『中学校道徳読み物資料集』およびNHK道徳番組「オン・マイ・ウェイ!」「ココロ部!」作成協力者。
現在,大阪教育大学附属天王寺中学校指導教諭および研究部長で,大日本図書の教科書『数学の世界』の執筆も務める。

―本書では、中学校の「特別の教科 道徳」全面実施に向けて、押さえておきたい点はもちろん、これからの授業づくりの視点をご解説いただいております。中学校では、来年度からいよいよ全面実施となりますが、この1年間で何を準備しておけばよいでしょうか。

 柴原:「特別の教科 道徳」の授業づくりへの準備に加え、いわゆる「カリキュラム・マネジメント」の意識を学校全体として醸成し、「特別の教科 道徳」を要として学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育を実効性あるものにするための具体的な準備が不可欠です。道徳教育の全体計画やその別葉等の諸計画の策定はもとより、それらの日常的可視化や評価メモの適時記述といった実効的な活用、35時間の授業確保へ向けた「第○○回」の板書等々、道徳教育の真の実質化へ向けた具体的体制づくりを心掛けたいものです。

―1章や2章の中で、評価について、事例をもとに具体的に解説をいただいております。今は、評価に不安を抱えている方が特に多いようですが、押さえておくべき、もっとも重要なポイントをあらためて教えてください。

 柴原:先生方は、これまでも道徳教育に係る評価をされてこられました。それは、生徒の日常でみられる道徳的行為(責任を果たすなど)に対し、認め励ます言葉掛けであり、道徳の時間での発言への受け止めやワークシート等の記述内容への朱書きといったものです。これからもあまり肩肘張ることなく、学習状況や道徳性に係る成長の様子を継続的に把握しつつ、生徒一人一人の人間としての成長を温かく見守り、その努力を認め励まし勇気付けられる評価を大切にされることです。

―ところで、荊木先生は数多くの実践をされており、本書の中でも素晴らしい板書や授業を示していただいておりますが、普段、道徳授業づくりで大切にされていることは何か教えてください。

 荊木:私は、「ねらいは願いである」と考えています。授業のねらいには、生徒一人一人の、学級や学年や学校の、保護者や地域等の願いが反映されているわけですが、何よりもまずもって、生徒の実態をもっとも深く正確に理解している担任の先生が、どのような切実な願いを詰め込んでいるかが大切だろうと思います。生徒の具体的な喜びや悩みを視界に捉えておくことで、授業者の願いも具体性を帯び、焦点化され、一人の人間として心と心を真剣にぶつけ合い、通わせ合うといった授業の実現に向けて、熱意をもって取り組むことができるのだろうと思います。

―最後に、本書を読んで、これから「考え、議論する道徳」をさらに進めていこう!という読者の先生方にメッセージをお願いします。

 荊木:本書では、先生方が柔軟な発想で「考え、議論する道徳」に臨んでいただけるよう、基礎的・基本的側面を重視し強調しました。謂わば、授業づくりの土壌を提供したに過ぎず、どのような花を咲かせるのかは先生方お一人お一人の手に委ねられています。ぜひ、共に考え、語り、歩んでいくという「倶学倶進」を大切にされ、個々の既成観念を突き抜けた見方や考え方が自由に飛び交う学級風土を紡いで、刺激溢れる新しい道徳観や人生観に驚き、感心し、胸熱くするという、道徳授業の魅力と醍醐味を個性的に創造して下さい。

(構成:茅野)
特集 「特別の教科 道徳」
コメントの一覧
2件あります。
    • 1
    • 中学校教員
    • 2018/8/9 10:53:48
    近年の明治図書が出版した道徳書籍としては、異色の内容でした。
    これまで、日々の忙しさから、どちらかと言うと「ハウツー本」を探し、その真似をすることもあった私なのですが、本書は、柴原先生の理論にせよ、荊木先生の実践にせよ、道徳の授業づくりの基本とすべき考え方が全面に滲み出ています。本書の中身をそのまま追試することもできるのですが、むしろ、独自の工夫をそれらに加えて、自分なりの授業を創り出してみたくなる中身となっています。
    今夏、本書の1ページ1ページを、もう一度、腰を据えて読み直し、自分なりにより深く解釈していきたいと思わせる充実の内容です。また、これからの道徳授業で躓いたときには、該当ページを開けば、何らかのヒントが得られそうです。
    これまで私が手に取った明治図書の道徳本としては、最も「硬質」の読み応えある異色のもので、若手からベテランまで、それぞれの立場・経験を踏まえつつ、深く考えていくための切り口が満載だと思います。私も、たまたま見つけた本書との出会いによって、そろそろ「ハウツー本」から卒業する時期なのかも知れない、と思っています。
    • 2
    • 名無しさん
    • 2018/9/12 7:57:48
    これまで、授業の流れや指導案の読み方がフォーマット化されたものもあり、それ以外はダメだという理論もあったかと思います。はじめは使いやすくても、そのようなものはやがて形骸化され、誰が作っても似たようなものしかできないという、教師の思いが生かされない授業ばかりになるのではないかと思っていました。また、教師の多忙化が大きく取り上げられ、最近、どのような教科でもHow to本が多く、じっくり腰を据え授業を練る手助けとなる本があまりありませんでした。そのような中、柴原先生の理論に荊木先生の実践がわかりやすくまとめられたこのような本が出版され、私の中のモヤモヤとした思いもスッキリしました。これからの道徳の授業実践の参考になると同時に、たくさんの先生に読んでもらいたいと思います。
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