- まえがき
- 第1章 新学習指導要領と「特別の教科 道徳」
- 1 教科化の背景と道徳教育の実質化
- 2 「考え,議論する道徳」で求められていること
- 3 「特別の教科 道徳」の目標に基づく授業
- 4 「主体的・対話的で深い学び」の実現
- 5 道徳科における「問題解決的な学習」
- 6 道徳教育・道徳科における評価
- 第2章 「考え,議論する」道徳の授業づくりの基礎基本
- 1 「道徳の内容」を研究する
- 2 教材を活用する
- 3 発問を考える
- 4 板書を工夫する
- 5 導入や終末にひと手間かける
- 6 評価を適切に行う
- 第3章 多様な指導方法による「考え,議論する」道徳授業づくり
- 1 道徳科の特質と多様な指導方法
- 2 道徳科の特質を生かした学習指導
- 3 多様な考えを生かすための言語活動
- 4 登場人物への自我関与を大切にした指導
- 5 問題解決的な学習を取り入れた指導
- 6 多様な教材を生かした指導
- 7 情報モラルと現代的な課題に関する指導
- 8 家庭や地域との連携,生徒の発達や個に応じた指導
- 第4章 授業構想と実際の授業づくり
- 1 授業づくりへの準備
- 2 学習指導案づくり
- 3 授業の実際と揺らぎ
- 4 よりよい授業を求めて
- あとがき
まえがき
私が校長を務めさせていただいた中学校でのある年,年間反省に綴られていた先生方の言葉です。
「あまり難しいことは分からないのですが,道徳の授業はいつも楽しくさせていただきました。生徒たちと共に考え,語り合って,より深い学びになってもきたと感じています。すぐ結果に,とはいかないかもしれませんが,道徳は面白い」
「育成学級の生徒たちは,頑張って発表しようとする姿が見られるようになってきて,本当によかったと思っています。それぞれ自分なりに考え,発表し,他の人の意見を聞くという姿勢が,それぞれの生徒なりに培われてきました。話を聞いて,しっかり考え,それを(短い)文章にすることができるようになった生徒もいます。(特別支援学級の担任)」
「どの学年もよく頑張って,毎週の道徳の授業を行ったと思います。本校の生徒たちは,この1年間の道徳の授業を通して,色々な道徳的価値について考えることができて,本当によかったなと生徒の姿から実感させていただいています。(まずしっかり時間が確保されているのが良いですね!)」
「毎週,必ず道徳を行う重要性が実感できました。いつも,生徒たちが授業に乗ってきて,深く考え,意見交流を楽しめるような授業案を考えて下さる道徳教育部の係の先生方のおかげだと思います。自分としても,沢山,道徳の授業をすることで力がついてきたような。本当にありがとうございました」
「全学級での『持ち回り道徳』は,生徒,教師共に意義がありました」
「様々な取組や工夫もあってか,生徒たちの中では,道徳(の授業)=じゃまくさい・難しい・面白くないといった印象が変わってきたように思います。生徒たちにとってもそうでしょうが,自分にとっても大変勉強になるので,今後も楽しみながら取り組みたいと思っています」
「個人的な反省としては,学習指導案を見るのが授業直前という時もあり,自分自身の準備不足が多かったことです。準備が十分にできた時は,生徒の反応も良かったので,結果は正直であると感じました」
長々と紹介させていただきましたので,プチ自慢のように受け取られ,気を悪くなさった方がおられましたら,どうかお許しください。この学校での数年に及ぶ年間反省報告書の内容は,私の人生における「宝物」です。その中でも特に道徳教育に関する内容は,時折読み返す中で,生徒たちと先生方による道徳授業の様子が鮮やかによみがえってまいります。それらは,私に懐かしさと共に,「皆でやろうと思えば必ずできるものなのだ」というある種の確信を与えてくれるのです。
昭和33年に「道徳の時間」が特設されて以降,我が国の道徳教育史上最大の改革が進められようとしています。新学習指導要領に基づく道徳教育に関する取組が,小学校において全面実施され,いよいよ中学校です。
新学習指導要領の趣旨・内容を着実に実現していく取組こそが,これまでも変わらず大切にしてきた我が国の道徳教育の基本的な姿を実質化させることにつながるものだと考えています。「皆でやろうと思えば必ずできるもの」なのです! ただし,そこは「できるところから,できることを,できるだけ」といった感じで,一歩一歩着実に取組の歩を進められればよいのではないかと思うのです。
とはいえ,このたび求められている授業づくりや評価の取組に不安やとまどいをお持ちの先生方もおありかと思います。本書は,そうした学校や先生方をしっかりサポートできるものとなるよう,荊木聡先生と共に,基本的事項はもとより多くの具体的実践事例を掲載させていただいています。
本書が,多くの皆様方にご活用いただき,我が国の道徳教育の実質化とさらなる充実に少しでも寄与するものとなることを心より願う次第です。
平成30年5月 /柴原 弘志
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